『平等のためのライフ・スキル・プロジェクト』


報告者:フェルナンダ・ガンダーラ
(ルーム・トゥ・リード女子教育プログラムの調査・監視・報告ディレクター)

 

2022年に初めて実施されたルーム・トゥ・リードの「平等のためのライフ・スキル・プロジェクト(LSEP)」は、カンボジアにおける2年間のパイロット・プログラムです。このプログラムでは、少年たちが学校や生活で成功し、男女平等のために共に戦ってくれるよう、気持ちの強さや協調性といったライフ・スキルやジェンダー教育を提供しています。有害なジェンダー規範はすべての人に影響を及ぼし、こうした規範を解消し再定義するには、あらゆる性別の人々の関与が必要であるため、少年たちとの協力は極めて重要です。

プログラムの実施と規模拡大を支援するため、ルーム・トゥ・リー ドの調査・モニタリング・評価(RME)チームは、多段階・複数手法によるプログラム評価を実施しました。これまでのところ、評価の結果、LSEPの参加者がジェンダーに関連する概念、特に思春期、性と健康、ジェンダーに基づく暴力、役割、男らしさの概念をめぐる狭い考えについての認識を高めたことが示されています。さらに、参加者が女子とどのような交流をすればいいのか意識するようになり、ライフ・スキルを身につけていることなどが、評価によって示されています[1]。私たちは現在、LSEPプログラムの最終評価を実施しており、この評価によって、これらの知見の確からしさや、さまざまな状況(学校、家庭、地域社会など)における参加者の行動の変化について明らかになるはずです。

[1] LSEPの評価結果については、https://www.roomtoread.org/impact-and-reach/を参照(英語)

LSEPの調査、モニタリング、評価の取り組みは、主に以下を理解することに重点を置いています。
(a) 変化の理論が適切かどうか
(b) LSEPの実施において、より有望な特徴は何か
(c) 参加者の間で認識され、観察された変化は何か

この課題の中心にあるのは、プログラムが参加者の成果や行動を改善できるかどうか、またどのように改善できるかを理解することです。しかし、LSEPのユニークな特徴により、ルーム・トゥ・リードのRMEチームは、ジェンダーの知識と態度における別の課題も探求することができました。LSEPのセッションの一部は、男女混合の教育現場で行われ、その中にはルーム・トゥ・リードの旗艦プログラムである女子教育プログラム(GEP)に参加している生徒もいます。そのため、チームは女子の成果や経験に関するデータも収集することができました。そうすることで、RMEチームは、異なる性別の生徒間におけるジェンダーの知識や態度の構造的な違いについて、適切な洞察を得ることができました[2]

[2] LSEPとGEPは、生徒の性別を特定するために学校データに依存しています。多くの場合、このデータは「女子」と「男子」の二者択一を提供しています。私たちは、あらゆる性別の子供たちがGEPとLSEPのプログラムに参加していることを認識しています。

RMEのスタッフは、2種類の手法で、男子と女子のジェンダーに関する知識と態度に関するデータを収集しました。心理測定技術[3]は、男子が女子の教育や人生の成果を達成する能力について、女子自身よりも高い期待を抱いている可能性があることを明らかにしています。男子は「女子はエンジニアや科学者になれる」といった意見を、同程度のジェンダー知識を持つ女子よりも高い割合で支持する傾向があります。このような結果は、女子の内面にあるネガティブな固定観念の存在を示唆している可能性があります。

一方、心理分析によれば、男子は男女平等に対してポジティブな態度を持っていますが、伝統的に自分たちに与えられてきた特権を手放そうとは必ずしもしていません。例えば「娘は息子と同じように財産を相続する権利を持つべきだ」というような意見に、他の条件が一定であれば、男子は女子に比べて低い割合で支持する傾向があります。このことは、男子は社会的に望ましい規範を支持することはあっても、その行動において男女平等を完全に受け入れる準備ができていない可能性があることを示唆しています[4]

[3]因子分析や差分項目機能など

[4] 男女平等に関する最近のプロファイル分析については、ロペス-ホルニッケル、サンドバル-ヘルナンデス (2023) – “ラテンアメリカの青少年における男女平等に対する態度の分析結果”を参照。LSEPの結果は、プログラムに参加している男子は、やや “規範的平等主義者 “であることを示唆しています。

LSEPの最終評価と、ルーム・トゥ・リードが今後実施する男子のインクルージョンの取り組みに関する評価は、こうした考えをより深く検討するまたとない機会となります。私たちは、このような傾向をより深く厳密に検証するために、評価ツールを拡張しました。LSEP評価の最終的なデータ分析により、こうした傾向が変わり始めるかどうか、変わるとすればどのような方向かについて検証することができます。最終的な分析はまた、ライフ・スキルとジェンダーに関する知識や態度の変化との長期的な関係を調べる機会にもなります。このような構造的な違いが、ライフスキル・プログラムに触れた後にどの程度存在し、持続するのかを理解したいと考えています。そうすることで、私たちのチームは、プログラムの適切な量と順序について考えることができるでしょう。また私たちは今後、評価報告書やブログ、学術出版物の形で、女子教育プログラムから得られた結果をさらに共有していきます。

ご期待ください!

原文URL:https://www.roomtoread.org/the-latest/measurement-insights-from-the-life-skills-for-equality-project/
翻訳:竹内 裕人