

アビゲイル・スパングラー
ルーム・トゥ・リード ジェンダー平等プログラム
アソシエイトディレクター
ルーム・トゥ・リードでは、教育とは単に読み書きを学ぶこと以上のものだと考えています。それは、若者たちが人生の困難に立ち向かい、ジェンダー平等を推進し、自分自身と地域社会のより良い未来を創り出すために必要なスキルを身につけることなのです。ルーム・トゥ・リードのジェンダー平等チームは、ジェンダーの障壁を打ち破るには意図的な取り組み、粘り強さ、そして大胆な対話が不可欠であると理解しています。だからこそ、カンボジアにおける「平等のためのライフスキルプロジェクト」でまさにそれを実現しようと取り組んでいるのです。
実施から2年を経て、定量的・定性的両面からの最終評価により、参加者とその家族、教師の生活に変化が生じていることが明らかになりました。この結果は、ルーム・トゥ・リードをはじめ多くの関係者が長年確信してきたこと、すなわちライフスキル教育は単に有益であるだけでなく、若者の考え方や人間関係、社会における役割を形作る上で不可欠であるということを裏付けるものです。ここで得られた知見は以下のとおりです。
若者の考え方の変化:結婚を遅らせ、教育を優先する
評価から得られた最も有望な知見の一つは、結婚と教育に関する学生の考え方の変化でした。プログラム終了時点で、以下の変化を確認できました。
・女子は理想の結婚年齢を25.57歳、男子は26.05歳と答え、開始時点のデータ(女子が24.6歳、男子が24.7歳)から上昇していました。
・女子の73.78%、男子の61.01%が大学進学を望むようになり、特に女子の間では職業教育も魅力的な選択肢と見なされるようになりました。
・女子はビジネスや医療分野でのキャリアに関心を強め、彼女たちを家庭的な役割へと導く伝統的なジェンダー規範に疑問を投げかけました。

こうした変化は、若者に自らの未来について批判的に考えるための余地と手段を与えると、彼らがより大きな夢を抱くようになることを示しています。彼らは社会が課した限界を乗り越え、可能性に満ちた人生を思い描けるようになるのです。安全な環境があってこそ、若者たちは成長することができます。有害な性別役割やジェンダー規範を乗り越えることを許される環境こそが、革新的で批判的思考力を備え、明日の課題に自信を持って立ち向かえる次世代を育むのです。
精神的な回復力とジェンダー意識の構築
別の重要な影響、精神的な成長についても明らかになりました。男女ともに、感情をコントロールし、対立を解決し、仲間を支える能力が向上したと報告されています。
・男子生徒は特に怒りのコントロール能力が向上し、多くの生徒が「問題解決に攻撃性を使うことから離れ、代わりにコミュニケーションや交渉を活用するようになった」と述べました。
・女子生徒は、意見を表明すること、教師に質問すること、仲間との議論をリードすることへの自信が高まったと語りました。
・男女ともに、性別による固定観念を強要するのではなく、互いを支え合うことを学んだと語りました。これは不平等の連鎖を断ち切るための重要な一歩です。
これらの知見は、ライフスキル教育の内容とカリキュラムが、単なるスキル構築や個人の成長を超えた効果を持つことを示す証拠です。ライフスキル教育の内容とカリキュラムには、長年根付いてきた性別役割に関する信念や規範、期待を変える力があります。
家庭や地域社会におけるジェンダー規範の変化
ジェンダー平等に向けたライフスキルプロジェクトは、生徒たちを変えただけでなく、家族、ひいては地域社会全体にも恩恵をもたらしました。保護者からは、息子たちがより責任感を持ち、礼儀正しく、家事を進んで手伝うようになったとの報告がありました。中には、自分自身のジェンダーに関する考え方にも変化があったと語る保護者もいました!
ある親は「息子は家業を手伝い始め、家事も分担するようになりました。以前より母親への愛情も示し、勉強にも一生懸命取り組んでいます」と語っています(アナナ&ガンダラ、2023年)
このようなフィードバックを聞くことは、非常に感動的です。私たちは、体系的な変化が教室だけで起こるわけではないことを知っています。それは家庭で、夕食時の会話の中で、そして子どもたちが自分自身やお互いを違った視点で見られる日常の小さな瞬間に起こるのです。
ジェンダーの課題:多様な学びの場
最終評価では、男女混合の学習環境の課題も明らかになりました。男女共学のセッションは男女双方が互いから学ぶ貴重な機会を提供しましたが、月経や心の傷つきやすさといった特定の話題は、同じ性別だけのグループの方が話しやすいという意見がありました。
・男子は、男子限定で実施した場で、男らしさや時間管理といったテーマを自由に議論できると語りました。
・女子は、感情のコントロールやリーダーシップに関するセッションが特に自信につながったと報告しました。
・男女混合のセッションでは、男子がより真剣に授業に取り組む傾向があった一方、男子だけの場合では時に冗談や遊びが混じることも観察されました。

これらの知見は、あらゆる性別の子どもたちが共に学べる教育の場を創り出す私たちの取り組みにとって極めて重要です。思春期の少女だけでなく全ての思春期の子どもたちに有益な教育となるよう、若者が安全かつ尊重される環境で自身のジェンダー特有の経験を話し合い、互いに耳を傾け学び合う場をいかに創出するかが必要なのです。
ジェンダー平等に向けて男の子たちを巻き込む必要性
ジェンダー平等を実現するためには、単に女子と女性を力づけるだけでは不十分です。長きにわたり、多くのプログラムや取り組みではこれが主眼とされてきました。持続的な変化を促すためには、ジェンダーに関する対話にすべての人を巻き込む必要があります。
ジェンダー規範は少女たちを制限するだけでなく、少年たちにも有害な期待を押し付け、硬直した男らしさの概念を強化します。ジェンダー平等のためのライフスキルプロジェクトにおける私たちの取り組みは、男子をジェンダーに焦点を当てた対話に含めることで、彼らが支援者となり、ジェンダーの固定観念に異議を唱え、自分自身とのより健全な関係を築くことができることを示しています。

すべての青少年に、性別規範や期待がもたらす有害な影響を理解する手段を提供し、本音を安全に表現できる場を設けています。その結果、この取り組みは、ジェンダー平等を認識し、自らの生活や家族、地域社会において変化を創り出すために積極的に行動する世代の育成に貢献しています。
子どもたちが制限的な規範から解放される世界こそ、誰もが輝ける世界なのです。
原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/empowering-youth-transforming-mindsets/
翻訳:竹内 裕人





















▲女子教育プログラム(カンボジア)。


