

ディラージ・アナンド
調査・モニタリング・評価担当副部長
ルーム・トゥ・リードジェンダー平等プログラム
最近、私はインドとネパールの思春期男子を対象とした「思春期ライフスキル評価(ALSA)」のパイロット調査(ALSA-Mと呼称)に携わりました。インドのチャッティースガル州とテランガーナ州の準都市部、ならびにネパールのヌワコット県で実施された本調査では、複数学年の男子を対象に、面接やグループディスカッションを含む定量的・定性的分析を行いました。これらの地域には明らかな社会文化的・言語的多様性が存在するにもかかわらず、少年たちの規範的思考パターンに驚くべき類似点が認められました。
この取組みは、私たちの研究・評価活動を支援するために開発し、継続的に使用している女子向けの「思春期ライフスキル評価(ALSA)」に基づいています。ALSAを通じて、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラム参加者が、比較対象校の女子生徒と比べて主要なライフスキルをより速く習得しているかを検証しています。本稿では、男子対象のパイロット調査から得られた、私が特に興味を持った二つの傾向について紹介したいと思います。
感情表現の難しさ
定性的調査から明らかになった観察結果の一つは、思春期の男子が、悲しみ、恥、欲求不満、嫉妬、不安、恐怖など、社会から時に「ネガティブ」と見なされる感情を率直に表現することに、大きな困難を抱えているということです。調査を通じて、少年たちは一貫して躊躇を口にしました。その主な理由は、仲間からの批判や嘲笑を恐れる気持ちからでした。彼らのためらいは、「男性あるいは強い男性がどう振る舞うべきか」という、根深い社会的期待を反映していました。

グループディスカッションにおいて、大半の少年たちは、悲しみや嫉妬を他人とは決して共有しないと考えていました。そうした感情を露わにすれば、「男らしくない」と見なされ、嘲笑の対象になるからです。彼らは自分自身のためにも仲間のためにも、男としてこうした感情について語るものではないと、明確に主張しました。以下のグループディスカッションからの抜粋に、この点がよく表れています。
・質問:どんな感情を他人と共有できますか?
・回答:幸せや喜び、あるいは喧嘩があった時だけ共有できます。ただしこれは友達に限ります。グループ内で反論できるようにするためです。
別のグループディスカッションでは、男子生徒たちが落ち込み(うつ状態)について話すことへのためらいについて語りました。
・質問:なぜ、ためらいがあるのですか?
・回答:相手が落ち込んでいるかどうか分からないからです。
・質問:誰かがうつ状態かどうか見分けられますか?
・回答:はい、判断できます。そんな時は、一人で食事をし、一人で座り、一人になると泣きます。誰とも話そうとしません。イライラしやすく、非常に短気になります。
・質問:では、誰かがそんな風に振る舞っているのを見かけた時、その人にどう接しますか?
・回答:ごく親しい友人でない限りは、近づきません。
・質問:なぜ人は落ち込むことがあるのでしょうか?
・回答:恋愛問題、金銭問題、あるいはオンラインゲームでお金を失った場合などです。
親との関係は事態をさらに複雑にしていました。少年たちは、感情的な苦悩を親に打ち明けると、失望されたり、厳しく叱責されたりするため、困難だと頻繁に述べました。例えば、親がその過ちを許してくれないと考えると、罰を受けることを恐れて、自分の気持ちを打ち明けようとはしません。
ヌワコット出身の少年が面接でこう説明しました。「お金をなくしたり友達に貸したりした時、それが自分のせいだと親には言えません。まず殴られて、それから問い詰められるかもしれないからです」
ソーシャルメディアとオンラインゲームへの関わりの増加
2つ目の顕著な傾向は、ソーシャルメディアとオンラインゲームの影響力が、少年たちの生活に急速に拡大していることです。手頃なデータプランに後押しされ、インドとネパール全域でインターネットアクセスが劇的に拡大しています。最近の報告によると、インドの農村部ではインターネット利用が大幅に増加し、4億2500万人以上のユーザーがいます。これは都市部よりも44%多く、青少年が主要な利用者層となっています。[i] 同様にネパールでは、2025年初頭までにインターネット利用率が73.32%に達し、若年層における顕著な増加が見られました。[ii]

私たちの調査から、青少年におけるデジタル機器の利用が、非常に活発であることが示されました。インドの研究によれば、9歳から17歳の男子青少年の60%がソーシャルメディアやゲームプラットフォームに1日3時間以上費やしています。[iii] この事実は、私がこの話題について少年たちと話し合った経験とも一致しました。ネパールの少年たちも、ソーシャルメディアに少なくとも1日3~5時間を費やしていると回答しました。さらに驚くべきことに、グループディスカッションや面接において、多くの少年が親に気づかれることなく、『Free Fire』や『PUBG』といったゲームを、夜通しプレイしていることを明らかにしました。
オンラインへの過度な関与がもたらす影響について、私たちの対話で取り上げられました。ネパールの参加者は、ゲーム依存による多額の金銭的損失や、深刻なストレスが原因で仲間が自殺を図った事例など、痛ましい経験を共有してくれました。これらの報告は、サイバー犯罪とともにゲーム関連の相談電話が増加したと伝えた様々な報告[iv]と一致しています。
さらに、少年たちはオンライン上の嫌がらせや、いじめ、恐喝について懸念を共有しました。ある参加者は次のように述べました「友人のアカウントがハッキングされ、『Free Fire』をプレイ中に約5万ルピーを失いました。誰にも言えず、最終的に自殺を図ろうとしました」
女の子もオンラインゲームをするかと尋ねると、男の子たちは女の子もオンラインゲームはするが、主にインスタグラムやTikTokで動画を制作するのに時間を費やしていると答えました。その際、ミニドレスを着てメイクを施し、バズることを狙うことが多いといいます。男の子たちも動画をバズらせるためにメイクをするかと尋ねると、彼らは笑いながら「男はメイクなんかしないよ」と返答しました。
もう一つの重要な課題は、こうした少年たちの多くが、デジタル環境で育った第一世代の学習者であり、親には彼らを効果的にオンライン上で保護し導くために必要な、デジタルリテラシーやリソースが不足していることが多い点です。さらに、男性に関する社会的期待が、少年たちが感情的な苦悩を率直に話し合うことを妨げ、孤立感と脆弱性を増大させています。
測定への示唆
これらの知見を踏まえると、思春期の男子における感情的な回復力やジェンダーに関する知識・態度といった生活スキルを、我々の評価がどのように測定しているかを慎重に検討することが極めて重要です。
ルーム・トゥ・リードでは、プログラムの文化的・文脈的妥当性を確保するため、革新的な手法を採用しています。男子のライフスキルを測定する際には、デジタル環境における現実や「ネガティブ」な感情を共有することに関する考え方を含め、調査項目が彼らの日常体験や言語に響くものでなければなりません。ALS-Mツールのパイロット調査では、大衆文化やソーシャルメディアに関連する項目やシナリオベースの質問を含めましたが、ほとんどの男子から好意的に受け入れられました。多くの人が、これらのシナリオベースの質問が深い思考を促し、日常生活に非常に関連性が高いと感じたと述べました。パイロットプロセスは、少年たちの現実世界の経験やデジタル世界の交流に沿って、生活スキルやジェンダー関連の知識・態度を捉えるという我々の取り組みが、正しい方向にあることを実証してくれました。
今後、明らかな性差ではなく、微妙な性差に焦点を当てることの重要性を強調しなければなりません。私たちは、男子が自らの性別役割(特に感情の共有に関して)をどのように認識しているか、そして女子が性別役割と態度をどのように認識しているか、その相互関係について、オフラインとオンラインの両面から詳細に検討します。これにより、現実世界とデジタル世界の両方におけるジェンダーの力学と差異について、より深い理解が得られるはずです。

参照:
[i]
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/rural-india-pips-urban-india-in-internet-usage-with-44-more-users-report/articleshow/98704031.cms?utm_source=chatgpt.com&from=mdr
[ii]
https://www.statista.com/outlook/co/digital-connectivity-indicators/nepal
[iii]
https://www.indiatoday.in/technology/news/story/more-than-half-of-indian-youth-aged-9-17-spend-over-3-hours-daily-on-social-media-gaming-study-2449702-2023-10-16
[iv] https://www.unicef.org/nepal/media/24131/file/Final%20Situation%20paper%20ai.pdf
原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/life-skills-assessment-for-boys/
翻訳:竹内 裕人
























