私にとって教育とは、「新しい人生」です。ルンニーの物語(ラオス女子教育プログラム卒業生)

 

ルーム・トゥ・リードは、女子教育プログラムを通じて、女子生徒が中等教育を修了し、日々の困難をうまく乗り越え、自分と家族の明るい未来を築くために必要なライフスキルを習得できるよう支援しています。

ラオス女子教育プログラム卒業生で、日本語教師を目指し2022年8月~2023年2月まで日本に留学を果たしたルンニー・スリチャンのスピーチを通して、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムがどのように少女の人生を変えたのか、お読みください。


私にとって教育とは、「新しい人生」です。

皆様、こんにちは。ラオスから参りましたルンニーと申します。
日本語教師になるための研修に参加するために日本に来ました。

今日は皆様とお話したいことがあります。
皆様にとって、教育とは何ですか?
私にとって教育とは、「新しい人生」です。

私は4兄弟の末っ子です。私が幼い頃から、一番上の兄と姉が精神疾患を患っていて、病気がちな家族がいる環境で育ちました。そのことが時々苦しくて、ほかの家族や兄弟をうらやましく思うこともありましたが、いくら比較しても何も変わらないので、これが私の運命だと思うことにしました。

兄弟4人で撮った唯一の写真。左端がルンニーさん。

ルーム・トゥ・リードとの出会い
でも、2009年にルーム・トゥ・リードに出会ったのです。小学5年生から高校卒業まで、女子教育プログラムを通じてサポートをしていただきました。成績が良かったので、県の奨学金をもらうことができ、ラオス国立大学で日本語の勉強を始めました。

小学校5年生、ライフスキルプログラムに入りたての時期。意思の強い目が印象的。
自室は自分だけの本棚がある特別な場所。

ルーム・トゥ・リードで学んだことはたくさんありますが、ひとつは、本を読むのが大好きになり、読書習慣が身についたことです。また、女子教育プログラムのライフスキルの授業では、子どもの権利、リーダーシップ、男女平等など多くのことを学びました。なかでも、私が一番好きだったテーマは「私の夢」、です。16歳の時に書いた夢は「教師になること」。
この夢が、今、まさに叶おうとしています。

16歳の時のライフスキル授業で書いた夢は「教師になること」


「私は文字が読めません。あなたは素晴らしいチャンスをもらったのだから、頑張って勉強しなさいね」ー母の言葉は、いつも私の心にあります。

ここで、私の母のことを話したいと思います。母は、学校に通ったことがありません。でも、ルーム・トゥ・リードの職員たちとの交流や保護者会を通して、教育の大切さを認識し、いつも私を応援してくれました。残念ながら、私の大学卒業の姿を見ることなく、病気で亡くなりました。卒業間近の時で、母のことが心配で、卒業論文に集中できないときもありましたが、先生と相談し卒業することができました。

ルンニーさんのお母さん。自分は文字が読めなかったため、いつも娘の教育を全力で応援。

母の言葉は、いつも私の心にあります。

「母はね、文字が読めないんです。だから、文字をいくら大きく書いてもらっても、読みたくても読めないんです。あなたは素晴らしいチャンスをもらったのだから、頑張って勉強しなさいね」とよく言われました。

ラオス国立大学を全額奨学金で卒業。優秀な成績が認められ、その後の日本留学へとつながった。

ルーム・トゥ・リードのサポートのおかげで私の人生は大きく変わりました。
私だけではなく、私の家族も、教育の大切さを学ぶことができました。いくら私が勉強を続けたいと思っていたとしても、家族から反対されれば、自分の意志だけで続けることは難しかったと思います。一緒に歩んでくださった皆様に、心より感謝いたします。

最後に皆様。どうか、これからも子ども達が勉強を続けられるようサポートいただければ、私もすごく嬉しく思います。人間は、生まれる場所を選ぶことはできませんが、教育を受けることで、やりたいことや夢を自分自身の手で選べる、と私は強く信じています。

皆様はどう思いますか。
今日はどうもありがとうございました。


ルンニーへ寄せられた質問

Q:世界的なパンデミックで苦労したこの3年間と、あなたの個人的な話を振り返ったとき、ルーム・トゥ・リードのプログラムがあなたに与えてくれた最も重要なスキルは何だと思いますか?

私にとって、この3年間は、自分がコントロールできないことについては我慢するしかない、ということを学びました。なので、マスクをしたり、距離を保つなど、感染に気を付けながら、自分ができることをやってきました。
ただ、「この状況はずっと続くものではない」とも思っていました。世の中は、良いことであっても、悪いことであっても、永遠に続くことはなくて、いつか過ぎ去るものだと信じています。
そして、命の大切さを常に意識して、自分がやりたいことはできるだけ早くやることが大事だと思います。

やらない理由、できない理由はたくさんあります。私も夢だった留学がコロナの影響で中止になった時は、とても悲しい気持ちになりました。でも、愚痴を言ってあきらめるのではなく、いつでもチャレンジするんだ、という気持ちを持って、そのための準備をすることの大事さをルーム・トゥ・リードのプログラムで学んできました。

留学が中止になった時も、オンラインで日本語の勉強を続けてきました。なので、今回、日本語教師の研修生に選ばれて、日本に来られることになった時は、とても嬉しかったです。今年は世界30カ国から44人選ばれ、ラオスからは、私を含めて2名選ばれて、日本に来ています。

Q:日本に来てからはどのような経験をしましたか? 驚いたことや学んだことなど、ぜひ教えてください!

研修センターが埼玉県川越市にあるので、普段は、川越に住んでいるのですが、これまで、東京、大宮、鎌倉、仙台など、色々な場所に行って、日本文化を体験しています。でも、まだ雪を見たことがないので、北海道にも行ってみたいです。そして、つい最近は、和光市にある日本の高校に訪問し、授業や部活の見学をしてきました。ラオスでは、部活というものがないので、部活動が興味深く、吹奏楽部の生徒達が演奏を聴かせてくれたことがとても嬉しかったです。

Q:ラオスや世界の少女たちに、エールをお願いします!

女性と男性に能力の違いはありません!なので、男性ができることは、女性もできると思います。
私が教師になりたいと思ったきっかけは、ルーム・トゥ・リードの職員の皆さんと出会ったからです。職員の皆さんは、ライフスキルだけではなく、日ごろから私の悩みを聞いて相談にのり、常に励まし続けてくれました。次第に、自分自身もそのような存在になりたい、教師になりたい、と思うようになりました。これまでいつも何かを与えてもらう側にいたので、自分がいただいた知識や経験を、ほかの人にも役立ててもらいたい、自分ができることをしたい、と思うようになりました。
なので、皆さんも自分に自信を持って、しっかりアピールして、一緒に頑張っていきましょう!

※このスピーチは2022年12月17日に開催されたオンラインイベント「Action for Education2022~エデュケーション・イコール」の録画資料でもご覧いただけます。


ルンニー・スリチャン

ルーム・トゥ・リード・ラオス女子教育プログラム卒業生。ウドムサイ県の少数民族出身。小学校5年生から女子教育プログラムに参加。野口英世の伝記に感銘を受け、女性の大学進学率がわずか15%のラオスにおいてラオス国立大学文学部日本語学科へ進学。日本語教師を志し東京外国語大学の留学枠を勝ち取るも2020年コロナ禍で渡航停止、その後も最愛の家族を亡くすなど多くの試練が。それでも諦めることなく勉強を続け2022年国際交流基金が提供する海外日本語教師基礎研修生に合格、2022年9月から翌年2月まで念願の日本留学を果たした。