
アビゲイル・スパングラー
ルーム・トゥ・リード女子教育プログラム グローバルアソシエイトディレクター
ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブ
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気候変動が世界中の地域社会に影響を及ぼす中、気候リテラシーとジェンダー公正について若者を教育することは、これまで以上に重要になってきています。この必要性を踏まえ、ルーム・トゥ・リードでは、青少年が地域社会の気候変動危機に対処するための知識とスキルを身につけるために、「気候正義クラブ」と呼ばれる革新的で実践的なプログラムを開発しました。このクラブがどのように変化をもたらしているのか、詳しく見ていきましょう。
気候正義クラブとは?
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ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブは、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムのライフスキル・カリキュラムの延長線として、気候変動、気候正義、ジェンダー平等に関するトピックを探究する生徒のために特別にデザインされました。このセッションは、生徒たちに気候変動のさまざまな要因についてリサーチさせる他、気候災害の影響を最も受けやすい地域社会が、気候関連の課題を解決するためにどのような行動を取ることができるかを学習する手助けをします。

クラブは主に次の3つの成果を上げることに力を入れています:
1. 気候に関する知識の向上: 気候変動、気候正義、そしてそれらがジェンダーとどのように関連しているかを理解する。
2. 意思決定力: 気候変動対策において、情報に基づいた選択をするスキルを身につける。
3. コミュニティへの貢献: 生徒が学んだことを、仲間や家族、地域社会にも広めていくことを促す。
2023年、ルーム・トゥ・リードは、気候変動の影響を大きく受けている国、ネパールとベトナムで、思春期の子どもたちが気候変動対策に参画できるよう、2つの気候正義クラブを試験的に立ち上げました。
ネパールとベトナムでのパイロット・プログラム
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ネパール🇳🇵:
ネパールのバンケ地区では、ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブが現在12校で実施されており、7年生と8年生の女子生徒約620人が参加しています。クラブは希望者を対象に放課後に行われ、2年間で26回のセッションが開催されています。これらのセッションは訓練を受けたファシリテーターが中心となり、気候正義の概念(注1 文末に記載)や、批判的思考、リーダーシップといった実践的なライフスキルを学びます。さらに、参加者は現地訪問にも参加し、地域の意思決定者と現地の気候変動対策計画について意見交換を行い、政策をレビューすることで、学習を実践的かつ有益なものにしています。

ベトナム🇻🇳:
ベトナムのヴィンロン省の2つの学校ではルーム・トゥ・リードの気候正義クラブが必修科目となっており、学校の授業として行われています。ここでは男女の枠を超えて約269人の生徒が参加し、生物学と地理の教師がプログラムのファシリテーターを務めています。
気候正義クラブでのセッションに加え、生徒たちは気候変動に関する行動計画を作成する少人数のグループ活動にも参加し、多くの生徒が、自身が学んだことを活かして地域キャンペーンを企画しています。
1年目で学んだこと
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気候正義クラブの活動から学ぶために、ルーム・トゥ・リードの調査、モニタリング、評価のチームは、プログラムの実施状況についてのデータを収集し、参加者に見られた変化を記録するなど、包括的な活動を実施しました。
以下は、ルーム・トゥ・リードの報告書(Room to Read’s Climate Justice Clubs: Key Insights After One Year of Pilot Implementation)からの抜粋です。
● どちらの国でも出席率が高く、教師たちはカリキュラムを実施する準備が整っていることを感じていました。しかし、特定の分野、特にジェンダー関連のトピックを取り上げる際には、教師たちはさらなるサポートを必要としていました。また、予想以上に時間がかかった活動もあり、準備期間を増やすことがファシリテーターにとって有益であることが示唆されました。
● セッションの頻度としては期待通りであったが、ファシリテーターによっては、より長いセッションの方が、内容に深く関わる時間を多く確保できると感じている者もいました。場合によっては、時間の制約のために教師がカリキュラムの一部を駆け足で進めたり、割愛しなければならないこともありました。
● 生徒と教師の双方が、ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブを非常に魅力的で有意義なものであると評価しました。グループ・ディスカッション、ロールプレイング、ラボ活動など、インタラクティブで実践的なアプローチにより、気候変動とジェンダー正義についての学習が有意義なものとなりました。しかし、このようなプロジェクトベースの学習に慣れていない生徒が苦戦することもあり、生徒主体の活動に段階的に適応していく必要があることがうかがえます。
● 生徒や教師および地域社会は、このプログラムに非常に協力的で した。保護者の関与が非常に大きかったことも、クラブの全体的な成功に貢献しました。今後の改善点としては、コンセプトをより身近なものにすること、魅力的な活動を維持するためにクラブの規模を管理することなどが考えられます。
● ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブは、人間を中心とした気候変動対策に重点を置いていることが特徴です。単に気候科学を教えるだけでなく、生徒たちが気候やジェンダーの問題が自分たちの生活とどのように関わっているかを理解する手助けをします。教師やファシリテーターは、クラブのインタラクティブな手法を称賛し、従来の教室での学習との違いを評価しています。
● 教師たちは、多くの生徒が家庭で木を植えたりプラスチックの使用量を削減する等の小さなプロジェクトを始めるのを見て、生徒たちが環境に対する意識を高めていることを確認しました。多くの家族がこうした取り組みに参加したことからも、このクラブが人々の行動を変える重要なきっかけとなることが示されました。さらに、参加者は特にリーダーシップと批判的思考において、より優れたライフスキルを見せてくれました。
● クラブが長期的に続くためには、さらなるリソースと研修が必要不可欠です。特にベトナムの教師たちは、通常の業務と並行してプログラムを行うにあたり、サポートがより必要であると語りました。ネパールの関係者は、プログラムに女子生徒と男子生徒の両方を参加させることで、その影響力と持続可能性を高めることができると提案しました。

今後の課題
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今後、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムチームは、ネパールとベトナムそれぞれのチームと綿密に協力しながら、気候正義クラブのパイロット初年度から得られたすべてのデータを慎重に精査し、得られた知見に基づいてプログラムを継続的に進化させていく予定です。現地の関係者と協力し、教師、ファシリテーター、生徒、地域社会からのフィードバックを取り入れることで、ファシリテーターのトレーニングやカリキュラムの提供、リソースの割り当てを優先的に見直し、それぞれの実施状況特有のニーズに沿った対応をしていきます。このアプローチを通して、ルーム・トゥ・リードではプログラムの取り組みと持続可能性の深化を図り、最終的には生徒が気候変動に対するリテラシーと公平性を身につけ、地域社会に有意義な貢献ができるようになることを支援します。
さらに、ルー ム・トゥ・リードでは、政府や市民社会のパートナーとの協力の下、学校や地区が気候正義クラブを実施する際に技術的支援を提供することで、プログラムの持続可能性を高める機会を模索していきます。成果の向上を促進し、ルーム・トゥ・リードの気候正義クラブの影響力を、今後より広範囲に拡大するための強固な基盤を確立していくことを期待しています。
(注1) 気候正義とは、気候変動がさまざまなコミュニティに与える不平等な影響に対処する原則であり、社会的弱者や社会から疎外されたグループが最も苦しむことが多いことを認識し、公平な待遇を重んじる考え方です。気候正義はこうした不平等を是正し、すべての人々、特に気候変動の影響を最も受ける人々が、解決に向けて発言できるようにするための行動を呼びかけています。
原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/one-year-in-insights-from-room-to-read-climate-justice-clubs/
翻訳:藤田 由弥子