本好きの少女、遠くまで届く夢〜ベトナムの少女トゥイ


ベトナム北西部ディエンビエン省トゥアチュア郡の霧深い山奥に、物語に情熱を燃やす小柄な小学5年生、ロー・ディエム・トゥイが住んでいます。物静かで控えめな彼女ですが、その瞳には本を通じて発見し、広げていく一つの世界が宿っています。ルーム・トゥ・リードの識字プログラムのお陰で、トゥイは今やベトナム語と英語の両方で書かれた物語が並ぶ図書室を利用できるようになりました。そこには村の山頂をはるかに超えた、ワクワクするような新たな場所や体験への窓が開かれています。

静かな個人読書時間が一番好きです。ただ私と物語だけの時間ですから」と、今年初めに学校の図書室を訪れた際、彼女は私にそう打ち明けました。

フランスでバゲットを食べている自分を想像したり、ドバイの裕福な通りを歩くベールをまとった少女の一人になったり、タイの黄金寺院を訪れるために自転車をこいだりするんです

トゥイの学校の図書室は、本だけでなく運営のリーダーシップを発揮する機会も提供しています。トゥイは学校の「生徒読書ガイドチーム」の活発なメンバーとして、クラスメートや年下の子どもたちが図書室で新しい本を発見し、借りて家に持ち帰る手助けをしています。

彼女の担任教師であるチャン・ティ・キム・ドゥンは次のように述べています。「トゥイは注意深くて細やかな、優れたガイドです。年少の子どもたちが本を選ぶのを助ける際には、常に優しく思いやりがあり、司書へのサポートも非常に優れています。」

家でトゥイは毎日やることでいっぱいです。最近、母親に新たな赤ちゃんが産まれたため、トゥイは学業に加え、料理や育児の役割もよく担っています。それでも、家事を終えた後でさえ、彼女は必ず本に戻る時間を見つけ、好奇心と想像力を育み続けています。

彼女の夢はシンプルでありながら力強いです。「両親がそんなに働かなくて済むように、私はしっかり勉強したい」と彼女は私に語りました。「母と生まれたばかりの赤ちゃんが健康でいてほしい。そして家族全員がいつも幸せでいてほしい」

トゥイが読む物語の一つひとつが、彼女の読み書きの能力と可能性への感覚を育みます。図書室の本棚には多様な物語が複数の言語で並んでいます。そこでトゥイは想像を膨らませます。——そしていつの日か、故郷と呼ぶ山村をはるかに超えた未来を、自らの手で実現する日が来るのです。

支援者の皆さまのおかげで、トゥイのような世界中の子どもたちが、本を開き、より明るい未来への扉を開くことができるのです。

チャウ・ドアン
コミュニケーションマネージャー
ルーム・トゥ・リード ベトナム


原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/lo-diem-thuy/

翻訳:竹内 裕人

未就学児への教育:最初の授業の前に、学習の強化を

最初の授業の前に、学習の強化を

就学時(正式な学校教育が始まる頃)には、すでに多くの学習格差が存在しています。世界中のあまりにも多くの子どもたち、特に歴史的に低所得または少数民族のコミュニティにいる子どもたちは、質の高い早期学習機会を利用できません。その結果、子どもたちはしばしば、指導する言葉や教室での基本的な期待に慣れないまま学校に入学するのです。

格差は、幼稚園や小学1年生が始まる前に発生

ルーム・トゥ・リードは、基本的な学術的および社会的・情緒的スキルは早期に養う必要があると認識しており、教育を根本から変革することを目指しています。私たちは現在、実証済みの識字教育プログラムを子どもの教育過程のさらに早い段階に拡張し、最も若い学習者が成長するために必要な基盤を構築できるよう支援しています。

ルーム・トゥ・リードは、熟練した教師、本や教材を備えた設備の整った教室、教室での基本的なスキルと不可欠な語彙を習得する機会など、子どもたちが就学前の時間を最大限に活用するために必要なすべてのものにアクセスできるようにしています。また、世界中の政府と協力することで、これらのアプローチを拡大し、すべての子どもたちが学び、成功する準備ができた状態で小学校に入学できるよう支援することができます。

初等教育前の私たちのアプローチ

ルーム・トゥ・リードの初等教育前のアプローチは、遊びに基づく子ども中心の学習により、基本的な識字能力、計算能力、言語、社会的・情緒的スキルを育成します。

現地のパートナーと協力して、文化に配慮した物語、活動ガイド、教師用リソースなどの資料を開発しています。これらは年齢に応じたものであり、国のカリキュラムに沿い、現地の言語や状況に適応している教材です。また、教員養成大学や専門能力開発ワークショップを通じて、教育者に必要なスキルと知識を提供し、最年少の学習者が成功するための魅力的な環境を作ります。

確固たるエビデンスが示すところでは、最も効果的な就学前プログラムに共通の一連の特徴があります。ルーム・トゥ・リードは、これらのエビデンスに基づく原則を、次のような就学前の取り組み全体に統合しています。

•学習を子どもたちの日常の経験に結びつける、テーマ別の子ども主導の探求
•日常的な教室のルーチンに組み込まれた、構造化された遊びと自由な遊びのバランス
•十分な運動、言語、認知の発達を支援する、実践的で感覚に富んだ活動
•創造性と独立性を促進する、自由な表現のための専用の遊び場とスペース
•早期の識字能力と口頭言語の発達を促進する、印刷物と言語に富んだ環境

例えば、インドにおいて、ルーム・トゥ・リードは政府主導のバルバティカ・プログラム(Balvatika:プレプライマリーを意味する)の初期のパートナーであることを誇りに思っています。バルバティカの教室では、「私の家族」、「果物と野菜」、「コミュニティヘルパー」などの毎週のテーマで、1週間を通して学習をリードしています。それぞれのテーマは、物語、歌、議論、絵、動きを織り交ぜ、子供たちが新しいアイデアを日常生活に結びつけるのを助けます。毎日の活動には、ブロックビルディング、パズル遊び、粘土モデリング、チョーク描画、絵を読むゲームなどがあり、これらは十分な運動技能を強化し、語彙を増やし、年齢に応じた楽しい方法で早期の識字能力を構築します。

この取り組みを支援するために、ルーム・トゥ・リードは専門知識を共有し、ローカライズされた就学前教育コンテンツと指導ガイドをレビューおよび改訂して、これらの最も早い学習スペースの可能性を最大化しています。これには、「ホップ、スキップ、ジャンプ(A Hop, Skip and Jump)」のような文字のない本など、早期学習者向けの既存のリソースの配布や、教育者が就学前教育の子供たちの早期学習スキルを育成する資料を使用して、インタラクティブで楽しい読書セッションを主導する準備ができていることを確認するためのトレーニングの促進が含まれます。

ルーム・トゥ・リードのすべてのプログラムと同様に、私たちはエビデンスに基づいたアプローチに従っています。つまり、試験的に実施し、評価し、規模を拡大することで、私たちの仕事が国の教育システムに適合し、永続的で広範な影響を与えることを保証しています。私たちはパートナーと協力して、何百万人もの子どもたちが成功に向けて準備を整えて学校に入学できるよう支援しています。

初等教育前の取り組みのグローバルな展開

世界中の政府は、私たちのモデルがいかにうまく機能しているかを見てきており、ますますパートナーシップを求めています。世界中で、私たちは教育者の訓練と指導、カリキュラムとコンテンツ開発における専門性を活かし、初等教育前の教育システムを改善しています。以下に、私たちの全体的な影響のごく一部ですが、初等教育前の分野における私たちの最新の取り組み例を示します:

•バングラディシュ:ルーム・トゥ・リードは、全国の初等教育前カリキュラム改訂委員会のメンバーであり、それを通じてカリキュラム開発のための技術的なインプットを提供しています。この作業の一環として、10の項目が全国の初等教育前パッケージに統合され、全国的な早期学習コンテンツの質が強化されました。

ラオス:2023年には、就学前と小学校低学年向けに51冊の童話を出版し、配布しました。最近、ルアンパバーン教員養成大学でルーム・トゥ・リードが設計した図書館コースを試験的に実施した後、政府は、質の高い児童図書館の管理に焦点を当てたカリキュラムとコンテンツを、就学前と初等教育プログラムの両方の教員教育カリキュラムの正式な科目として統合することを承認しました。このコースは、2025年から2026年の年度を通じて、全国のますます多くの教員養成大学に展開される予定です。

•スリランカ:ルーム・トゥ・リードは最近、教育省と協力して、40の幼稚園で就学前の取り組みを試験的に実施しました。政府のトレーナーと協力して、ルーム・トゥ・リードはタミル語とシンハラ語の文脈で90人以上の就学前教師と能力構築研修を実施し、推定600人以上の子どもたちに恩恵をもたらしました。

•インド:ルーム・トゥ・リードは、政府主導のバルバティカ(Balvatika)・イニシアティブの初期のパートナーとして、20人の教育者を訓練する2025年のパイロットを支援し、ウッタル・プラデーシュ州の約200人の就学前学習者に利益をもたらし、将来の大規模な展開への道を開きました。

•ベトナム:ルーム・トゥ・リードは最近、ベトナム教育訓練省と提携し、少数民族コミュニティの就学前の子どもたちを支援するサマープログラムを試験的に実施し、1年生に向けてベトナム語の基礎スキルを強化しました。

就学前教育が生涯にわたる学びへ

就学前教育は、私たちが行うことのできる最も影響力のある投資の1つであり、後の学年で拡大する前に学習格差を埋めます。私たちのパートナーシップ主導のアプローチは、質の高い就学前教育プログラムが、多様な国や状況にわたっても、より多くの子どもたちに、より迅速に利益をもたらすことができることを意味します。

子どもたちが学ぶ準備ができ、自分の能力に自信を持ち、本や言語に精通し、基本的なスキルを備えた状態で学校に入学すれば、彼らは自身の教育の旅を最初から形作ることができます。彼らは、遅れを取り戻す学生としてではなく、明るく無限の未来を持って成功する準備をした学習者として学校に入学するのです。


原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/pre-primary-years/

翻訳:kochi

【ご報告と御礼】ベトナム台風被害からの学びの再開

2025年9月末、ベトナムに上陸した台風ブアロイをはじめとする大型台風により、17万戸以上の家屋が損壊・浸水、2万5,000ヘクタールを超える農地が被害を受け、経済損失は約6億米ドル(約950億円)に上ると報告されました。ルーム・トゥ・リードが活動するベトナムの図書室も甚大な被害をうけ、緊急支援の呼びかけをさせていただきました。

皆さまのご協力により、児童書約1,133冊分の支援が実現し、
被災した地域の学校では、子どもたちのもとへ読書と学びの場が戻りつつあります。多大なるご支援に、心より感謝申し上げます。

日本の支援者の皆様へ、ルーム・トゥ・リードのベトナム現地チームより、ご支援のお礼と取組み状況等の報告が届きましたので、紹介させていただきます。

日本の支援者の皆様へ

9月から10月にかけて、ベトナムでは数週間のあいだに、3つもの強力な熱帯暴風雨が相次いで襲来し、ルーム・トゥ・リードが活動する多くの地域で深刻な洪水被害が発生しました。家族が避難を余儀なくされたり、地域の中心である学校が壊れてしまったりと、子どもたちの暮らしにも大きな影響が出ました。

この度の災害支援に対し、日本の皆様からたくさんのご支援を賜り、心より御礼を申し上げます。現地のスタッフは一日でも早く子どもたちの学びを取り戻そうと、全力で対応を続けています。

書籍の配布の完了

北部の21校に新しい書籍を届けました。対象となった省は以下の通りです。
oゲアン省(Nghệ An):18校
oタイグエン省(Thái Nguyên):2校
oランソン省(Lạng Sơn):1校

合計支援予算:6億480万VND (ベトナムドン)

各校ではすでに本の仕分けや図書館への配置も終わり、すでに利用できる状態になっています。

復旧作業の進捗

図書館が再開:ルーム・トゥ・リードの支援校すべてで図書館が再開し、子どもたちが安心して過ごせる学びの空間が戻ってきました。

学習教材の補充:物語の本や学習に必要な教材がそろい、先生たちは授業を中断することなく進めています。

コミュニティの回復力:書籍や学びの場が戻ることで、嵐の影響を受けた子どもたちも学びを続け、少しずつ日常を取り戻しつつあります。

皆様のご支援のおかげで、迅速に日常に戻りつつあります。
この度のご支援に心より感謝を申し上げるとともに、引き続き子どもの教育に想いを傾けていただけますと幸いです。

2025年12月
ルーム・トゥ・リード
ベトナムチーム一同

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【緊急支援】ベトナムが甚大な被害に見舞われています。ご支援をお願いします。

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「寄付」を通じて教育の種まきを 〜スリランカ現地訪問レポート


いつもあたたかいご支援をいただきありがとうございます。
今回は、スリランカ現地での学びの様子、そして一人の少女との出会いを、共同理事長の正直ゆりよりお届けします。教育が子どもたちの成長をいかに支えているか、ぜひご覧ください。


スリランカで育つ教育の「種」

いつもあたたかいご支援をいただきありがとうございます。ルーム・トゥ・リード・ジャパン共同理事長の正直ゆりです。
私は10代を東南アジアで過ごし、教育格差の現実を目の当たりにした経験を持ちます。

「子どもの教育が未来を変える」この信念に賛同し、ルーム・トゥ・リードを理事としてサポートさせて頂き8年になります。
5月に訪問したスリランカの教育現場を、皆さまに直接お伝えしたいと思います。

■識字教育の確かな成果

スリランカ中心部から車で5時間。訪問先の小学校の図書室に入った瞬間、色とりどりの本棚と、夢中で本を読む子どもたちが目に飛び込んできました。
ルーム・トゥ・リードのプログラムにより、読書は生活の一部として根付いています。

• 子どもたちは毎週4冊の本を借り、読み終えると絵に描いて表現しています。
• 子どもたちの読む速さは2〜3倍に向上し、理解度は87%に達しています。
• 現地のイラストレーターや作家を育成し、母国語で児童書を出版する仕組みは、地域の経済エコシステムの構築にも繋がっています。

■少女たちが語る「自分の未来」


女子教育プログラムでは、少女たちが輪になり、「医師になりたい」「先生になりたい」と、自信と希望に満ちた声で未来の夢を語っていました。
ライフスキルを学ぶことで、少女たちは判断力、問題解決力、自己肯定感といった 「生きる力」 を着実に身につけています。

■13歳で家族を救った少女、デュミニ

今回の訪問で、私がどうしても会いたかったのは、少女デュミニです。干ばつにより家族は困窮し、両親から働くよう迫られる状況でしたが、彼女は教育を諦めませんでした
学校で学んだ知識とメンターの支えを生かし、貯水池の水量調整の仕組みを自ら考案し、農園を改善。わずか13歳で家族を救ったのです


「まずは自分から行動を起こしました」と語る彼女の姿は、教育が「生きる力」「未来を選び取る選択肢」を与えている何よりの証拠でした。

■教育の種まきを、これからも

教育は、その子だけでなく、家族や地域、社会全体を変える力を持っています。
この年末、皆様のアクションを通じて教育という「種」をまき、学びの輪をさらに広げられたら嬉しく思います!

ぜひ、Action for Education 2025にご参加ください。
👉 ご支援はこちらから

心からの感謝を込めて。

ルーム・トゥ・リード・ジャパン
共同理事長 正直ゆり


✅年末キャンペーン「Action for Education2025」開催中!

ルーム・トゥ・リード25周年を記念し、特典をご用意しました!
ご支援特典:
📤 全員に感謝のメッセージ & ご報告メール
🎁 3万円以上:カードセットをお届け
📚 15万円以上:デジタル絵本にお名前掲載
🏫 50万円以上:図書室のプレートにお名前掲載(南アフリカ)

更に、12月のご寄付は、2倍の効果を発揮します!
キャンペーン概要はこちら

・銀行振込をご希望の方はこちらからお選びください。


映像・メディア掲載

■デュミ二の物語
レポートで触れたデュミ二の物語を、より鮮明に感じていただけます。ぜひご覧ください。


▲映像作品「She Creates Change」(邦題:少女達が世界を変えていく)より

25ans (ヴァンサンカン)2026年 1月号に掲載!
スリランカで15年前に設立された図書室の「今」が紹介されています。支援終了後も、子どもたちの学びを支え続けています。

©ハースト婦人画報社 / 「25ans (ヴァンサンカン)」2026年1月号

お見舞い:スリランカ・インドネシアで発生したサイクロンにより被災された方々へ、心よりお見舞い申し上げます。ルーム・トゥ・リードは現地の状況を注視し、子どもたちが学び続けられるよう教育を届けてまいります。年末キャンペーンを通したご支援はこちら

ライフスキル測定 – インドとネパールの男子生徒を対象に


ディラージ・アナンド
調査・モニタリング・評価担当副部長
ルーム・トゥ・リードジェンダー平等プログラム

最近、私はインドとネパールの思春期男子を対象とした「思春期ライフスキル評価(ALSA)」のパイロット調査(ALSA-Mと呼称)に携わりました。インドのチャッティースガル州とテランガーナ州の準都市部、ならびにネパールのヌワコット県で実施された本調査では、複数学年の男子を対象に、面接やグループディスカッションを含む定量的・定性的分析を行いました。これらの地域には明らかな社会文化的・言語的多様性が存在するにもかかわらず、少年たちの規範的思考パターンに驚くべき類似点が認められました。

この取組みは、私たちの研究・評価活動を支援するために開発し、継続的に使用している女子向けの「思春期ライフスキル評価(ALSA)」に基づいています。ALSAを通じて、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラム参加者が、比較対象校の女子生徒と比べて主要なライフスキルをより速く習得しているかを検証しています。本稿では、男子対象のパイロット調査から得られた、私が特に興味を持った二つの傾向について紹介したいと思います。

感情表現の難しさ

定性的調査から明らかになった観察結果の一つは、思春期の男子が、悲しみ、恥、欲求不満、嫉妬、不安、恐怖など、社会から時に「ネガティブ」と見なされる感情を率直に表現することに、大きな困難を抱えているということです。調査を通じて、少年たちは一貫して躊躇を口にしました。その主な理由は、仲間からの批判や嘲笑を恐れる気持ちからでした。彼らのためらいは、「男性あるいは強い男性がどう振る舞うべきか」という、根深い社会的期待を反映していました。

グループディスカッションにおいて、大半の少年たちは、悲しみや嫉妬を他人とは決して共有しないと考えていました。そうした感情を露わにすれば、「男らしくない」と見なされ、嘲笑の対象になるからです。彼らは自分自身のためにも仲間のためにも、男としてこうした感情について語るものではないと、明確に主張しました。以下のグループディスカッションからの抜粋に、この点がよく表れています。
・質問:どんな感情を他人と共有できますか?
・回答:幸せや喜び、あるいは喧嘩があった時だけ共有できます。ただしこれは友達に限ります。グループ内で反論できるようにするためです。

別のグループディスカッションでは、男子生徒たちが落ち込み(うつ状態)について話すことへのためらいについて語りました
・質問:なぜ、ためらいがあるのですか?
・回答:相手が落ち込んでいるかどうか分からないからです。
・質問:誰かがうつ状態かどうか見分けられますか?
・回答:はい、判断できます。そんな時は、一人で食事をし、一人で座り、一人になると泣きます。誰とも話そうとしません。イライラしやすく、非常に短気になります。
・質問:では、誰かがそんな風に振る舞っているのを見かけた時、その人にどう接しますか?
・回答:ごく親しい友人でない限りは、近づきません。
・質問:なぜ人は落ち込むことがあるのでしょうか?
・回答:恋愛問題、金銭問題、あるいはオンラインゲームでお金を失った場合などです。

親との関係は事態をさらに複雑にしていました。少年たちは、感情的な苦悩を親に打ち明けると、失望されたり、厳しく叱責されたりするため、困難だと頻繁に述べました。例えば、親がその過ちを許してくれないと考えると、罰を受けることを恐れて、自分の気持ちを打ち明けようとはしません。

ヌワコット出身の少年が面接でこう説明しました。「お金をなくしたり友達に貸したりした時、それが自分のせいだと親には言えません。まず殴られて、それから問い詰められるかもしれないからです」

ソーシャルメディアとオンラインゲームへの関わりの増加

2つ目の顕著な傾向は、ソーシャルメディアとオンラインゲームの影響力が、少年たちの生活に急速に拡大していることです。手頃なデータプランに後押しされ、インドとネパール全域でインターネットアクセスが劇的に拡大しています。最近の報告によると、インドの農村部ではインターネット利用が大幅に増加し、4億2500万人以上のユーザーがいます。これは都市部よりも44%多く、青少年が主要な利用者層となっています。[i] 同様にネパールでは、2025年初頭までにインターネット利用率が73.32%に達し、若年層における顕著な増加が見られました。[ii]

私たちの調査から、青少年におけるデジタル機器の利用が、非常に活発であることが示されました。インドの研究によれば、9歳から17歳の男子青少年の60%がソーシャルメディアやゲームプラットフォームに1日3時間以上費やしています。[iii] この事実は、私がこの話題について少年たちと話し合った経験とも一致しました。ネパールの少年たちも、ソーシャルメディアに少なくとも1日3~5時間を費やしていると回答しました。さらに驚くべきことに、グループディスカッションや面接において、多くの少年が親に気づかれることなく、『Free Fire』や『PUBG』といったゲームを、夜通しプレイしていることを明らかにしました。

オンラインへの過度な関与がもたらす影響について、私たちの対話で取り上げられました。ネパールの参加者は、ゲーム依存による多額の金銭的損失や、深刻なストレスが原因で仲間が自殺を図った事例など、痛ましい経験を共有してくれました。これらの報告は、サイバー犯罪とともにゲーム関連の相談電話が増加したと伝えた様々な報告[iv]と一致しています。

さらに、少年たちはオンライン上の嫌がらせや、いじめ、恐喝について懸念を共有しました。ある参加者は次のように述べました「友人のアカウントがハッキングされ、『Free Fire』をプレイ中に約5万ルピーを失いました。誰にも言えず、最終的に自殺を図ろうとしました」

女の子もオンラインゲームをするかと尋ねると、男の子たちは女の子もオンラインゲームはするが、主にインスタグラムやTikTokで動画を制作するのに時間を費やしていると答えました。その際、ミニドレスを着てメイクを施し、バズることを狙うことが多いといいます。男の子たちも動画をバズらせるためにメイクをするかと尋ねると、彼らは笑いながら「男はメイクなんかしないよ」と返答しました。

もう一つの重要な課題は、こうした少年たちの多くが、デジタル環境で育った第一世代の学習者であり、親には彼らを効果的にオンライン上で保護し導くために必要な、デジタルリテラシーやリソースが不足していることが多い点です。さらに、男性に関する社会的期待が、少年たちが感情的な苦悩を率直に話し合うことを妨げ、孤立感と脆弱性を増大させています。

測定への示唆

これらの知見を踏まえると、思春期の男子における感情的な回復力やジェンダーに関する知識・態度といった生活スキルを、我々の評価がどのように測定しているかを慎重に検討することが極めて重要です。

ルーム・トゥ・リードでは、プログラムの文化的・文脈的妥当性を確保するため、革新的な手法を採用しています。男子のライフスキルを測定する際には、デジタル環境における現実や「ネガティブ」な感情を共有することに関する考え方を含め、調査項目が彼らの日常体験や言語に響くものでなければなりません。ALS-Mツールのパイロット調査では、大衆文化やソーシャルメディアに関連する項目やシナリオベースの質問を含めましたが、ほとんどの男子から好意的に受け入れられました。多くの人が、これらのシナリオベースの質問が深い思考を促し、日常生活に非常に関連性が高いと感じたと述べました。パイロットプロセスは、少年たちの現実世界の経験やデジタル世界の交流に沿って、生活スキルやジェンダー関連の知識・態度を捉えるという我々の取り組みが、正しい方向にあることを実証してくれました。

今後、明らかな性差ではなく、微妙な性差に焦点を当てることの重要性を強調しなければなりません。私たちは、男子が自らの性別役割(特に感情の共有に関して)をどのように認識しているか、そして女子が性別役割と態度をどのように認識しているか、その相互関係について、オフラインとオンラインの両面から詳細に検討します。これにより、現実世界とデジタル世界の両方におけるジェンダーの力学と差異について、より深い理解が得られるはずです。

参照:
[i]
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/rural-india-pips-urban-india-in-internet-usage-with-44-more-users-report/articleshow/98704031.cms?utm_source=chatgpt.com&from=mdr
[ii]
https://www.statista.com/outlook/co/digital-connectivity-indicators/nepal
[iii]
https://www.indiatoday.in/technology/news/story/more-than-half-of-indian-youth-aged-9-17-spend-over-3-hours-daily-on-social-media-gaming-study-2449702-2023-10-16
[iv] https://www.unicef.org/nepal/media/24131/file/Final%20Situation%20paper%20ai.pdf


原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/life-skills-assessment-for-boys/

翻訳:竹内 裕人