「学校に行きたい、本を読みたい」と、子どもたちが心から思える場所に!


子どもたちが楽しそうに学校に来て、休み時間になると学校の読書コーナーでお気に入りの本を選んでいるーそんな姿を見ることが、ブアカム先生の喜びです。ブアカム先生は、小学2年生の先生です。ラオ語のほか、モン語やクム語も流暢に話すことができます。先生が働いている学校は、ラオスのルアンパバーン県の急な山の斜面にあり、小学1年生から5年生までのわずか5教室しかない小さな学校です。

ラオ語はラオスの国の公用語ですが、子どもたちに教えるのは簡単ではありません。学校にはモン族、クム族、タイ・ラオ族など、さまざまな民族の子どもたちがおり、それぞれ異なる言語や方言を話しています。また、学校には就学前教育のための教室がないため、ブアカム先生のクラスの子どもたちの多くは就学前教育を受けていません。保護者の多くは低所得の農家で、幼児教育プログラムに子どもを通わせる経済的な余裕がない家庭も少なくありません。そのため、多くの子どもたちは、基礎的なラオ語の力を十分に身につけないまま小学校に入学します。

ブアカム先生は、多言語環境で育つ子どもたち、特に初めてラオ語を学ぶ子どもたちの読み書きの力を伸ばすため、ラオ語の物語を読み聞かせています。

ルーム・トゥ・リードの研修では、読み聞かせの際に地域の言葉をラオ語に置き換えて説明する方法を学びました。これにより、子どもたちは物語の意味をよりよく理解できるようになり、読書や学習への興味も高まります。

ブアカム先生はこう話します。

「以前とは大きく変わりました。以前は、物語の内容を理解するのが難しく、そのため授業を退屈に感じたり、眠くなったりする子どもがたくさんいました。読み書きの力を育てる取り組みが始まってからは、低学年の学習に新たな活気がもたらされました。特に、私の学校の小学1年生と2年生の教室では、大きな変化を感じています。」

ルーム・トゥ・リードの「読書コーナー」が導入されてから、教室の雰囲気は大きく変わりました。読書コーナーは、さまざまなラオ語の本がそろった教室内の小さな図書館で、子どもたちが気軽に本を楽しめる場所です。先生たちは、読書コーナーを活用した活動についても研修を受けています。

先生が表情豊かな声や身ぶりを交えて読み聞かせをし、必要に応じて言葉を訳して説明すると、子どもたちはより楽しそうに、そして積極的に参加するようになり、好奇心が刺激され、教室には楽しそうな声や笑い声が広がるようになりました。

ブアカム先生は、研修で学んだ方法を毎日の授業で実践しています。

「読み聞かせでは、絵に合わせて話し方を変え、子どもたちの注意を引きつけるようにしています。必要なときには言葉を訳して説明します。そうすると、子どもたちはワクワクして、物語の続きをもっと知りたいと思ってくれるのです。」

最も目に見える効果は、読書が少しずつ子どもたちの日常の一部になっていることです。休み時間になると、子どもたちは教室の読書コーナーへ走っていきます。
ブアカム先生は誇らしそうに話します。
「まだ幼くて、すらすら本を読めない子どももいます。それでも、本を開いて絵を眺めたり、自分の好きな本を選んだりするだけでも、とても楽しそうです。」

校長先生のスーキー先生も、子どもたちの成長を喜んでいます。

「ルーム・トゥ・リードが私たちの学校で読書を広めてくれたことを、とてもうれしく思います。子どもたちの読み書きが着実に伸び、多くの子が成績優秀な生徒へと成長しています。その姿は、子どもたちに知識を伝えてきたすべての教員にとって誇りです。」

今、プーサンカム小学校は、ただ授業を受けるだけの場所ではありません。さまざまな民族の子どもたちが、ブアカム先生の言葉どおり、「学校に行きたい、本を読みたい」と心から思える場所になっています。

執筆:シリフォン・シリフォンパン
ルーム・トゥ・リード ラオス
(シニア・コミュニケーション・オフィサー)

 


原文URL:
Students want to come to school and want to read
https://www.roomtoread.org/the-latest/students-want-to-read/

翻訳:Arisa Moore


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【オンライン報告会】あの台風から1年。「ベトナムの子どもたちの「今」と「これから」

ベトナムから届く、子どもたちの「今」

ルーム・トゥ・リード・ベトナム カントリーディレクターのヌオン・グエンの来日に合わせ、オンライン報告会を開催いたします。

昨年2025年9月、ベトナムを襲った台風と洪水では、支援地域の学校や図書室も大きな被害を受けました。

被災した図書室。17万戸以上の家屋が損壊・浸水した。

この災害に対し、日本全国から寄せられたご寄付により、1,300冊以上の児童書に相当する支援を届けることができました。

今回のオンライン報告会では、ヌオンが現地の様子を交えながら、以下の内容についてお話します。

・被災した学校・図書室の復旧状況と、子どもたちの今

・読書環境を支える新しい取り組み

・AIを活用した教師研修や点字教材、環境教育など、これからの学び

ベトナムの子どもたちが今どのような環境で学び、どんな未来に向かっているのか、ぜひご参加のうえ、お聞きください。


開催概要
テーマ:ベトナムの子どもたちの「今」と「これから」
日時:
10月2日(金)12:00~12:40
10月3日(土)11:00~11:40
※両日とも同じ内容です。
開催方法:ZOOM (https://zoom.us/j/95891909939)
参加費:無料
参加登録はこちら
*事前登録なしでも上記のZOOMリンクからご参加いただけますが、運営準備のため、登録にご協力をお願いします。


ヌオン・グエン プロフィール
ルーム・トゥ・リード・ベトナム カントリーディレクター。教育・国際開発分野で20年以上の経験を有し、世界銀行、国際機関、NGO等において、戦略立案、パートナーシップ構築、プログラム運営・評価に携わってきました。現在は、ベトナム全域でルーム・トゥ・リードの活動を統括しています。

ヌオン(写真中央)、女子教育プログラムの生徒と共に。

日々のライフスキルが、変化の波を生み出す


物語を伝えることには、単に人を楽しませる以上の力があります。

物語は新しいことを教え、他者への共感を育み、さまざまな力を身につけるきっかけとなり、行動を起こす勇気を与えます。

ルーム・トゥ・リードの映像・マルチメディア・プロジェクト「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」では、「女子教育プログラム」に参加する6人のすばらしい女の子たちの物語を通じて、日常生活に必要なライフスキルを紹介しています。
若者たちは、世界の同世代の子どもたちが教育を受けるうえで直面するさまざまな課題や障壁について学びます。そして、困難に負けず、リーダーシップや創造性を発揮する女の子たちの物語を通して、ライフスキルが変化を生み出す力を持つことを知ります。

今、このライフスキル教育と教材が生み出す成果が、より多くの学びの場で実際に現れ始めています。

ケニアとマラウイでは、ルーム・トゥ・リードのパートナー団体が、「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」の映像、授業案、関連する教育教材を学習活動に取り入れています。ケニアでは「Polycom Girls」、マラウイでは「GAYO」と「CRECCOM」が活動を進めています。
この取り組みが始まった2025年に、参加した若者やファシリテーターへのインタビューとグループディスカッションを行い、活動がどのような成果を生み出しているのかを調べました。
初期の結果では、多くの生徒が教材に積極的に取り組み、意思決定、自信、困難から立ち直る力といったライフスキルの向上が見られました。また、学習への意欲が高まり、クラスメートと協力する力が伸びたほか、お金に関する知識や起業についての理解も深まりました。

こうした意識や行動の変化は、とても大きな意味を持っています。「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」のライフスキル教育と教材は、若者たちが自分自身を信じ、自分が望む人生のために声を上げ、自分の道を自分で切り開いていく力を育んでいるのです。

📷 画像提供:CRECCOM 、 PolyCom Girls

パキスタンでは、女の子たちが重要なコミュニケーション力やリーダーシップをさらに高めています。また、自信を育み、社会の固定観念に挑戦しながら、より安全で支え合える学習環境をともにつくる力も身につけています。
スリランカのデュミニさんの物語に刺激を受けたパキスタンの複数のパートナー校では、生徒たちが立体模型やストーリーボードを作り、気候変動に対してどのように備えるか、また気候変動が家族に与える可能性のある影響にどう対応するかを考えました。

これまで、Punjab Education FoundationやPakistan Girl Guides Associationを含むパートナーネットワークと協力し、101校で若者を対象とした活動を行ってきました。現地での調整と支援は、実施パートナーであるIdara-e-Taleem-o-Aagahi(ITA)が担っています。2026年には、さらに40校へ活動を広げます。
私たちは連携して、より多くの若者が、自分の望む尊厳ある人生を自ら選び、歩んでいくために必要な力を身につけ、磨き、実際に使えるよう支援していきます。そして、より明るい未来をつくる変革の担い手となれるよう後押ししていきます。

📷 画像提供:AKhuwat, ILMpact, Pakistan Literacy Project 、Sindh Education Foundation

ナイジェリアでも2026年から同様のパートナーシップを開始し、パートナー団体のプログラムを通じて、性別を問わず約1万人の若者に活動を届ける予定です。
現在、カノ州政府と協力してこの活動を実施する現地パートナーの選定が最終段階に入っています。ケニア、マラウイ、パキスタンで成果を上げているモデルを参考に、「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」のライフスキル教育と教材を地域の文化や状況に合わせて活用できるよう、パートナー団体や主要な関係者を支援します。また、学校教育と学校外教育の両方でプログラムを実施できるよう、現地の力を高める研修も行います。

タンザニアとベトナムでは、「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」が女子教育プログラムのライフスキル教材として活用され、すでに行われていた授業に実際の女の子たちの物語を加えることで、学びをより生き生きとしたものにしています。
さらに、このシリーズは女子教育プログラムに参加していない若者にも広がっています。タンザニアでは、ほかの現地団体と連携することで、「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」を届ける若者の数をこれまでの2倍以上に増やすことを目指しています。ルーム・トゥ・リードが直接プログラムを実施するだけの場合よりも、はるかに速いペースで多くの生徒のライフスキルを強化することができます。

タンザニアの女子教育プログラム参加校で教えるボケ先生は、こう話します。
「この動画を見て、女の子たちの視野が広がりました。以前より自信を持って話し、自分の考えや気持ちを表現できるようになっています。質問したり、自分の気持ちを伝えたりすることを、もう怖がらなくなりました。」

国や地域が違っても、変わらないことがあります。それは、物語を継続的かつ効果的に伝えることが若者のライフスキルを育み、そのライフスキルには人生を大きく変える力があるということです。

ルーム・トゥ・リードと世界中のパートナーは、これからも「少女達が未来を変えていく(She Creates Change)」の物語を通じて、新たな変化と行動が生まれていくことを楽しみにしています。

ライフスキルは、ただ教えられるだけのものではありません。その価値を認め、称え、物語を通じて「こんな未来も実現できる」と示された時、若者たちの可能性はさらに大きく広がっていきます。


原文URL: Everyday life skills create waves of change

翻訳:Arisa Moore


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プログラム修了生グエンからのメッセージ


私はよく自問します。
「もし、私と同じように、すべての子どもたちがルーム・トゥ・リードの2つのプログラムの両方を体験する機会を得られたら、どうなるだろうか?」と

グエン・ティ・イ・ミン
ホーチミン市工業大学在学中
ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラム修了生、識字プログラム修了生

(ベトナム語原文からチャウ・ドアンが翻訳)

小学生の頃、学校の図書室はまるで魔法の世界へと続く秘密の扉のように感じられました。色鮮やかな絵本のページを、最初はぎこちなくめくっていたあの瞬間から、私は魅惑的なおとぎ話の世界へと引き込まれていきました。どの本も紙のかすかな香りを漂わせており、休み時間ごとに、その香りに包まれながら、果てしない冒険へと旅立っていたのです。

読書への愛が深まるにつれ、他の子どもたちもその情熱を絶やさないよう、手助けしたいと思うようになりました。そこで、司書の補助をするボランティアとして登録し、本の分類や整理を手伝いました。クラスメートたちが必要な本を見つけた時の喜びに満ちた表情を見て、人と人とのつながりや物語を分かち合うことの真の価値を実感しました。

小学5年生の時、100冊目の本を読み終えたことで、ルーム・トゥ・リードの識字プログラムにおいて「リーディング・スター」の称号を獲得しました。私の数ある宝物の中でも、トー・ホアイ著『コオロギの日記』は、私にとってかけがえのない存在となりました。傲慢さから成熟へと至るコオロギの旅路は、私に深い感銘を与え、心を育んでくれました。そして、人生のあらゆる段階と同じように、1ページ1ページがかけがえのない旅路であることを教えてくれたのです。

中学・高校に進学した時、私は、続けて、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムへ参加しました。私にとって、これは極めて重要な転機でした。ルーム・トゥ・リードの識字プログラムが、読書への愛着と習慣を育み、将来のあらゆる知識の基礎を築いてくれたとすれば、女子教育プログラムは、その知識を活かして自分自身を理解し、自分の権利を主張する方法を教えてくれるものでした。ただ黙って本を読むだけだった少女だった私が、自分の意見をはっきり述べ、自分の考えを表現し、集団の中で自信を持って自分の価値を主張することを学びました。本を読む人から学ぶ人へ、そして自分の意見を主張できる人へと成長したこと―それが、ルーム・トゥ・リードでの活動を通じて得た最も大きな成果でした。

子どもの頃、私は外交官になることを夢見ていました。しかし、成長するにつれて、科学の本や魅力的な実験が次第に私の想像力をかき立てました。化学反応の世界や健康科学の不思議に惹かれていったのです。その好奇心が、私を新たな道―食品工学―へと導きました。今では、外交官を目指すのではなく、化学式や微生物と向き合い、科学的知識を活かして地域社会の健康を守ることに取り組んでいます。

私はよく自問します。「もし、私と同じように、すべての子どもたちがルーム・トゥ・リードの2つのプログラムの両方を体験する機会を得られたら、どうなるだろうか?」と。

それは成長のための理想的なエコシステムを築くことになると、私は確信しています。図書館は子どもたちに新しい世界を開き、つながりと発見の場を提供します。女子教育プログラムは、彼女たちの内なる力を引き出し、自らの声を育みます。リテラシーとライフスキルの両方を基盤とすることで、専門的な能力を備えるだけでなく、自信に満ち、強靭で、課題に立ち向かい、変化を起こす事ができる世代が育ちます。

現在、大学1年生となった私は、ルーム・トゥ・リードのプログラムで12年間にわたって身につけた基礎的なスキルのおかげで、学校で自信を持って様々な役割を担っています。私は学生自治会の執行委員であり、広報クラブの中心メンバーであり、また大学全体のスポーツフェスティバルの主催者でもあります。

ルーム・トゥ・リードとの長い道のりを振り返ると、小学校時代の内気だった頃から、学生生活の最終章、そして未来への第一歩を踏み出す今に至るまで、私の心は深い感謝の気持ちで満たされています。


原文URL: A note of gratitude

翻訳:竹内 裕人


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データが実際の教室と出会うとき


執筆:ジャフェス・オゴル
ルーム・トゥ・リード 識字教育部門マネージャー
(調査・モニタリング・評価担当)

 
優れたデータ戦略は、オフィスで設計され、教室で磨き上げられる。
タンザニアとウガンダでルーム・トゥ・リードが実施した評価者研修を通じて私が学んだのは、評価設計と現場の実態との間にあるギャップについて、そして、調査・モニタリング・評価担当者が、実際に学びが行われている現場に立ち会うことがなぜ重要なのかということです。

評価ツールの設計から見えてきた大切なこと

2024年10月、タンザニアのウブンゴで、ルーム・トゥ・リードの識字プログラムに関する評価者研修を行っていたときのことです。この研修は、子どもたちの学習状況を評価するためのデータ収集を担う評価者を養成するためのものでした。そこで、一見するとささいな行き違いが、私たちの動きを止めました。

6歳の女の子が、「あなたと一緒に住んでいる家族の人数」という質問に答える際、自分自身もその人数に含めていたのです。ひと言説明を加えると、子どもはすぐに答えを修正しました。

しかし、この出来事から重要なことが見えてきました。評価に使うツールは、単に言葉として分かりやすいだけでは十分ではありません。その地域で暮らす人々の生活や物事の捉え方にも適したものでなければならないのです。
たとえば最初から、「あなた以外に、家で一緒に暮らしている人は何人いますか?」と尋ねたり、「お母さん、お父さん、きょうだいなどを思い浮かべてください。そのうち何人が一緒に住んでいますか?」と補足したりすれば、子どもは答えを修正するよう求められなくても、自然に考えることができたはずです。
子どもの生活や理解の仕方に即した質問にすることで、評価者がその都度解釈したり、説明を加えたりする必要が減り、最終的には、より信頼性の高いデータを得ることができます。

この問題は、資料を机上で確認するだけでは見つけられませんでした。実際に現場にいたからこそ気づけたのです。

そして2026年2月、タンザニアのキロサで、ルーム・トゥ・リード史上最大規模となる子どもの学習評価を実施しました。89人の評価者が研修を受け、そのうち81人が実際のデータ収集を担当しました。評価者間信頼性、つまり複数の評価者が同じ子どもをどの程度一貫して評価できるかを示す指標は、平均99%に達しました。10日間で90校を対象に調査を行いました。
規模が大きくなれば、求められる責任も大きくなります。そして現場から得られる学びも増えました。一つひとつの気づきを、今後の取り組みの改善につなげています。

手順書だけでは学べないこと

2025年9月、ルーム・トゥ・リードはパートナー団体「ウガンダ読書協会」の評価者研修を行いました。実際に子どもたちと向き合う評価者からは、研修マニュアルだけでは想定できなかった質問が次々と出てきました。

「子どもが質問を理解できない場合、自分なりの言葉で説明してもよいのでしょうか?」

「子どもから『もう一度言ってください』と言われたら、どうすればよいのでしょうか?」

これらは、単なる細かな手続き上の問題ではありません。信頼できるデータと、ばらつきの大きいデータを分ける重要なポイントなのです。

同じ質問でも、評価者によって説明の仕方が異なれば、同じ子どもから異なる答えが返ってくる可能性があります。そうなれば、データがその子どもの本当の理解度を正確に反映できなくなり、学校や地域を越えて結果を比較することも難しくなります。

キロサでは、言語と読み書きのトレーナーが、歌を使って文字と音の理解を深める指導をしていました。子どもたちは言語的な背景によって文字や音の発音が異なることがあります。評価者が正しい発音の幅を十分に理解していなければ、正しい答えを誤答と判断してしまう恐れがあります。
歌を使う方法は、評価者が紙の上に示された文字と音の対応だけでなく、その音がどのように生み出されるのか、また発音にどのような違いがあるのかまで理解し、実際の子どもの声を正確に聞き取れるようにするための工夫でした。

また、新しい評価者が、実際に担当する前に経験豊富な評価者の様子を見ながら学ぶ姿も目にしました。
まず基本的な考え方を理解し、次にツールの使い方を学び、その後で中心となる評価活動へ進む。こうした段階的な進め方によって、習得が早まり、研修中の不安も軽減されていました。
こうした実践は、計画書に書いてあるだけでは分かりません。ルーム・トゥ・リードの調査・モニタリング・評価チームが現場にいるからこそ、こうした気づきを得て、記録し、次の取り組みに生かしていくことができるのです。

学校を訪れて初めて見えるパターン

キロサで行った1日目のデータ品質保証(DQA)では、評価者間の一致率は平均99%で、非常に良いスタートを切ることができました。一方、音読と読解の評価では3人の評価者が基準値の95%を下回りました。また、文章を聞いて書き取る「文の書き取り」では、チーム全体で最も評価のばらつきが見られました。

これは失敗を示すものではありません。改善のための大切なフィードバックです。
そこで私たちは、対象を絞った復習研修と、より丁寧な監督を行うことを提案しました。その日のデータをもとに夜10時に方針を決め、翌朝には実行に移しました。現場にいるからこそ可能になる対応です。

1. 必要人数より多めに評価者を研修しておく
葬儀、病気、予定外の政府関係者の訪問などにより、参加できなくなる人は実際に出ます。あらかじめ余裕を持った人数を確保する必要があります。
2. 一度きりの研修ではなく、繰り返し練習し、その場ですぐにフィードバックする
繰り返し練習し、リアルタイムで修正を受けることで、評価者間信頼性は33%から95%以上にまで向上しました。一度だけ研修を受けた人よりも、繰り返し練習した人のほうが、子どもたちを一貫した基準で評価できます。
3. 「文の書き取り」には、特に多くの研修時間を充てる
さまざまな現場で、この項目は一貫して難しいことが分かっています。研修計画の中で、明確に重点項目として扱う必要があります。
4. 疲労がデータの質に影響することを考慮する
1日目に最も遠い場所まで移動した評価者には、2日目は移動距離の短いルートを担当してもらうなどの配慮が必要です。
5. 予定外の出来事を前提に計画する
大雨、学校の予定変更、政府関係者の訪問などは、例外的な出来事ではありません。現場では実際に起こることです。だからこそ、最初からそうした事態を想定して計画を立てる必要があります。

ベースライン調査が、いつも答えになるとは限らない

2026年にダルエスサラームで行った会議の中で、特に重要だったのが「ベースライン調査」についての議論です。
ベースラインとは、プロジェクトを始める前の状況を把握するために、活動開始時点で行う調査です。後で変化を比較するための「出発点」となります。
国際協力の分野では、新しいプロジェクトを始めるとき、慣習的に「まずベースライン調査を」と考える傾向があります。この考え方は理解できますが、必ずしも適切とは限りません。

ベースライン調査だけで、プログラムの有効性を証明することはできません。プログラムをどのように実施するのかを示す実施マニュアル、何を達成しようとしているのかを整理した成果の枠組み、そして効果を測る具体的な指標が整っていなければ、成果やインパクトに関する問いには答えられません。
こうした準備がないまま調査をしても、集めたデータを何の意思決定に使うのかが不明確になり、調査は「学ぶための道具」ではなく、単に説明責任を果たすための負担になってしまいます。

まず問うべきなのは、「この調査によって、何を判断したいのか」です。
その答えによって、開始時と終了時を比較する複数年のインパクト評価が必要なのか、一度だけ成果を確認するアウトカム評価なのか、プログラムを詳しく検討するレビューなのか、ある時点の状況を捉える横断調査なのかが決まります。
調査の設計は、何を判断するためにデータを使うのかによって決めるべきです。単なる慣習や、政府からの要請、支援者側の期限に合わせて決めるものではありません。

現場にいることの大切さ

調査・モニタリング・評価のスタッフは、監査をする人でも、間違いを探す人でもありません。活動から学び、より良いものにしていくための仕組みをつくる人たちです。そして学ぶためには、実際に学びが起きている場所にいる必要があります。

キロサでは、研修を担当するコンサルタントチームが、専門技術、運営、ロジスティクスなど、それぞれ明確な役割を担っていました。ルーム・トゥ・リードの調査・モニタリング・評価チームと、読み書き教育を担当するシニア・ファシリテーターが連携する姿も、現場で高く評価されていました。
政府のパートナーとも十分に協力できていたため、学校を試行の場として使用した際にも、実践練習をスムーズに進めることができました。このような質の高い連携は、遠隔で指示を出すだけでは生まれません。何日も同じ現場でともに活動する中で築かれていくものです。

タンザニアからウガンダまで、現場を訪れるたびに、ダッシュボードや要約報告書、共有された進捗管理表だけでは決して分からないことを学びました。
実際の子どもが席に座り、実際の評価者がタブレットを開き、実際のデータ収集が始まる――。その瞬間に何が起きるのかは、現場にいなければ分かりません。

「データ収集から実際の成果へ至る道のりは、一本のパイプラインのような一方通行ではありません。それは対話です。オフィスで始まったその対話は、子どもたちがいる現場、本当の学びが起きている場所、そして私たちのツールが本来の目的と出会う場所で、続いていかなければなりません。


原文URL:When data meets real classrooms
翻訳:Arisa Moore


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