ライフスキル測定 – インドとネパールの男子生徒を対象に


ディラージ・アナンド
調査・モニタリング・評価担当副部長
ルーム・トゥ・リードジェンダー平等プログラム

最近、私はインドとネパールの思春期男子を対象とした「思春期ライフスキル評価(ALSA)」のパイロット調査(ALSA-Mと呼称)に携わりました。インドのチャッティースガル州とテランガーナ州の準都市部、ならびにネパールのヌワコット県で実施された本調査では、複数学年の男子を対象に、面接やグループディスカッションを含む定量的・定性的分析を行いました。これらの地域には明らかな社会文化的・言語的多様性が存在するにもかかわらず、少年たちの規範的思考パターンに驚くべき類似点が認められました。

この取組みは、私たちの研究・評価活動を支援するために開発し、継続的に使用している女子向けの「思春期ライフスキル評価(ALSA)」に基づいています。ALSAを通じて、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラム参加者が、比較対象校の女子生徒と比べて主要なライフスキルをより速く習得しているかを検証しています。本稿では、男子対象のパイロット調査から得られた、私が特に興味を持った二つの傾向について紹介したいと思います。

感情表現の難しさ

定性的調査から明らかになった観察結果の一つは、思春期の男子が、悲しみ、恥、欲求不満、嫉妬、不安、恐怖など、社会から時に「ネガティブ」と見なされる感情を率直に表現することに、大きな困難を抱えているということです。調査を通じて、少年たちは一貫して躊躇を口にしました。その主な理由は、仲間からの批判や嘲笑を恐れる気持ちからでした。彼らのためらいは、「男性あるいは強い男性がどう振る舞うべきか」という、根深い社会的期待を反映していました。

グループディスカッションにおいて、大半の少年たちは、悲しみや嫉妬を他人とは決して共有しないと考えていました。そうした感情を露わにすれば、「男らしくない」と見なされ、嘲笑の対象になるからです。彼らは自分自身のためにも仲間のためにも、男としてこうした感情について語るものではないと、明確に主張しました。以下のグループディスカッションからの抜粋に、この点がよく表れています。
・質問:どんな感情を他人と共有できますか?
・回答:幸せや喜び、あるいは喧嘩があった時だけ共有できます。ただしこれは友達に限ります。グループ内で反論できるようにするためです。

別のグループディスカッションでは、男子生徒たちが落ち込み(うつ状態)について話すことへのためらいについて語りました
・質問:なぜ、ためらいがあるのですか?
・回答:相手が落ち込んでいるかどうか分からないからです。
・質問:誰かがうつ状態かどうか見分けられますか?
・回答:はい、判断できます。そんな時は、一人で食事をし、一人で座り、一人になると泣きます。誰とも話そうとしません。イライラしやすく、非常に短気になります。
・質問:では、誰かがそんな風に振る舞っているのを見かけた時、その人にどう接しますか?
・回答:ごく親しい友人でない限りは、近づきません。
・質問:なぜ人は落ち込むことがあるのでしょうか?
・回答:恋愛問題、金銭問題、あるいはオンラインゲームでお金を失った場合などです。

親との関係は事態をさらに複雑にしていました。少年たちは、感情的な苦悩を親に打ち明けると、失望されたり、厳しく叱責されたりするため、困難だと頻繁に述べました。例えば、親がその過ちを許してくれないと考えると、罰を受けることを恐れて、自分の気持ちを打ち明けようとはしません。

ヌワコット出身の少年が面接でこう説明しました。「お金をなくしたり友達に貸したりした時、それが自分のせいだと親には言えません。まず殴られて、それから問い詰められるかもしれないからです」

ソーシャルメディアとオンラインゲームへの関わりの増加

2つ目の顕著な傾向は、ソーシャルメディアとオンラインゲームの影響力が、少年たちの生活に急速に拡大していることです。手頃なデータプランに後押しされ、インドとネパール全域でインターネットアクセスが劇的に拡大しています。最近の報告によると、インドの農村部ではインターネット利用が大幅に増加し、4億2500万人以上のユーザーがいます。これは都市部よりも44%多く、青少年が主要な利用者層となっています。[i] 同様にネパールでは、2025年初頭までにインターネット利用率が73.32%に達し、若年層における顕著な増加が見られました。[ii]

私たちの調査から、青少年におけるデジタル機器の利用が、非常に活発であることが示されました。インドの研究によれば、9歳から17歳の男子青少年の60%がソーシャルメディアやゲームプラットフォームに1日3時間以上費やしています。[iii] この事実は、私がこの話題について少年たちと話し合った経験とも一致しました。ネパールの少年たちも、ソーシャルメディアに少なくとも1日3~5時間を費やしていると回答しました。さらに驚くべきことに、グループディスカッションや面接において、多くの少年が親に気づかれることなく、『Free Fire』や『PUBG』といったゲームを、夜通しプレイしていることを明らかにしました。

オンラインへの過度な関与がもたらす影響について、私たちの対話で取り上げられました。ネパールの参加者は、ゲーム依存による多額の金銭的損失や、深刻なストレスが原因で仲間が自殺を図った事例など、痛ましい経験を共有してくれました。これらの報告は、サイバー犯罪とともにゲーム関連の相談電話が増加したと伝えた様々な報告[iv]と一致しています。

さらに、少年たちはオンライン上の嫌がらせや、いじめ、恐喝について懸念を共有しました。ある参加者は次のように述べました「友人のアカウントがハッキングされ、『Free Fire』をプレイ中に約5万ルピーを失いました。誰にも言えず、最終的に自殺を図ろうとしました」

女の子もオンラインゲームをするかと尋ねると、男の子たちは女の子もオンラインゲームはするが、主にインスタグラムやTikTokで動画を制作するのに時間を費やしていると答えました。その際、ミニドレスを着てメイクを施し、バズることを狙うことが多いといいます。男の子たちも動画をバズらせるためにメイクをするかと尋ねると、彼らは笑いながら「男はメイクなんかしないよ」と返答しました。

もう一つの重要な課題は、こうした少年たちの多くが、デジタル環境で育った第一世代の学習者であり、親には彼らを効果的にオンライン上で保護し導くために必要な、デジタルリテラシーやリソースが不足していることが多い点です。さらに、男性に関する社会的期待が、少年たちが感情的な苦悩を率直に話し合うことを妨げ、孤立感と脆弱性を増大させています。

測定への示唆

これらの知見を踏まえると、思春期の男子における感情的な回復力やジェンダーに関する知識・態度といった生活スキルを、我々の評価がどのように測定しているかを慎重に検討することが極めて重要です。

ルーム・トゥ・リードでは、プログラムの文化的・文脈的妥当性を確保するため、革新的な手法を採用しています。男子のライフスキルを測定する際には、デジタル環境における現実や「ネガティブ」な感情を共有することに関する考え方を含め、調査項目が彼らの日常体験や言語に響くものでなければなりません。ALS-Mツールのパイロット調査では、大衆文化やソーシャルメディアに関連する項目やシナリオベースの質問を含めましたが、ほとんどの男子から好意的に受け入れられました。多くの人が、これらのシナリオベースの質問が深い思考を促し、日常生活に非常に関連性が高いと感じたと述べました。パイロットプロセスは、少年たちの現実世界の経験やデジタル世界の交流に沿って、生活スキルやジェンダー関連の知識・態度を捉えるという我々の取り組みが、正しい方向にあることを実証してくれました。

今後、明らかな性差ではなく、微妙な性差に焦点を当てることの重要性を強調しなければなりません。私たちは、男子が自らの性別役割(特に感情の共有に関して)をどのように認識しているか、そして女子が性別役割と態度をどのように認識しているか、その相互関係について、オフラインとオンラインの両面から詳細に検討します。これにより、現実世界とデジタル世界の両方におけるジェンダーの力学と差異について、より深い理解が得られるはずです。

参照:
[i]
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/rural-india-pips-urban-india-in-internet-usage-with-44-more-users-report/articleshow/98704031.cms?utm_source=chatgpt.com&from=mdr
[ii]
https://www.statista.com/outlook/co/digital-connectivity-indicators/nepal
[iii]
https://www.indiatoday.in/technology/news/story/more-than-half-of-indian-youth-aged-9-17-spend-over-3-hours-daily-on-social-media-gaming-study-2449702-2023-10-16
[iv] https://www.unicef.org/nepal/media/24131/file/Final%20Situation%20paper%20ai.pdf


原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/life-skills-assessment-for-boys/

翻訳:竹内 裕人

若者の力を引き出し、意識を変える


アビゲイル・スパングラー
ルーム・トゥ・リード ジェンダー平等プログラム
アソシエイトディレクター

ルーム・トゥ・リードでは、教育とは単に読み書きを学ぶこと以上のものだと考えています。それは、若者たちが人生の困難に立ち向かい、ジェンダー平等を推進し、自分自身と地域社会のより良い未来を創り出すために必要なスキルを身につけることなのです。ルーム・トゥ・リードのジェンダー平等チームは、ジェンダーの障壁を打ち破るには意図的な取り組み、粘り強さ、そして大胆な対話が不可欠であると理解しています。だからこそ、カンボジアにおける「平等のためのライフスキルプロジェクト」でまさにそれを実現しようと取り組んでいるのです。

実施から2年を経て、定量的・定性的両面からの最終評価により、参加者とその家族、教師の生活に変化が生じていることが明らかになりました。この結果は、ルーム・トゥ・リードをはじめ多くの関係者が長年確信してきたこと、すなわちライフスキル教育は単に有益であるだけでなく、若者の考え方や人間関係、社会における役割を形作る上で不可欠であるということを裏付けるものです。ここで得られた知見は以下のとおりです。

若者の考え方の変化:結婚を遅らせ、教育を優先する

評価から得られた最も有望な知見の一つは、結婚と教育に関する学生の考え方の変化でした。プログラム終了時点で、以下の変化を確認できました。
・女子は理想の結婚年齢を25.57歳、男子は26.05歳と答え、開始時点のデータ(女子が24.6歳、男子が24.7歳)から上昇していました。
・女子の73.78%、男子の61.01%が大学進学を望むようになり、特に女子の間では職業教育も魅力的な選択肢と見なされるようになりました。
・女子はビジネスや医療分野でのキャリアに関心を強め、彼女たちを家庭的な役割へと導く伝統的なジェンダー規範に疑問を投げかけました。

こうした変化は、若者に自らの未来について批判的に考えるための余地と手段を与えると、彼らがより大きな夢を抱くようになることを示しています。彼らは社会が課した限界を乗り越え、可能性に満ちた人生を思い描けるようになるのです。安全な環境があってこそ、若者たちは成長することができます。有害な性別役割やジェンダー規範を乗り越えることを許される環境こそが、革新的で批判的思考力を備え、明日の課題に自信を持って立ち向かえる次世代を育むのです。

精神的な回復力とジェンダー意識の構築

別の重要な影響、精神的な成長についても明らかになりました。男女ともに、感情をコントロールし、対立を解決し、仲間を支える能力が向上したと報告されています。
・男子生徒は特に怒りのコントロール能力が向上し、多くの生徒が「問題解決に攻撃性を使うことから離れ、代わりにコミュニケーションや交渉を活用するようになった」と述べました。
・女子生徒は、意見を表明すること、教師に質問すること、仲間との議論をリードすることへの自信が高まったと語りました。
・男女ともに、性別による固定観念を強要するのではなく、互いを支え合うことを学んだと語りました。これは不平等の連鎖を断ち切るための重要な一歩です。

これらの知見は、ライフスキル教育の内容とカリキュラムが、単なるスキル構築や個人の成長を超えた効果を持つことを示す証拠です。ライフスキル教育の内容とカリキュラムには、長年根付いてきた性別役割に関する信念や規範、期待を変える力があります。

家庭や地域社会におけるジェンダー規範の変化

ジェンダー平等に向けたライフスキルプロジェクトは、生徒たちを変えただけでなく、家族、ひいては地域社会全体にも恩恵をもたらしました。保護者からは、息子たちがより責任感を持ち、礼儀正しく、家事を進んで手伝うようになったとの報告がありました。中には、自分自身のジェンダーに関する考え方にも変化があったと語る保護者もいました!

ある親は「息子は家業を手伝い始め、家事も分担するようになりました。以前より母親への愛情も示し、勉強にも一生懸命取り組んでいます」と語っています(アナナ&ガンダラ、2023年)

このようなフィードバックを聞くことは、非常に感動的です。私たちは、体系的な変化が教室だけで起こるわけではないことを知っています。それは家庭で、夕食時の会話の中で、そして子どもたちが自分自身やお互いを違った視点で見られる日常の小さな瞬間に起こるのです。

ジェンダーの課題:多様な学びの場

最終評価では、男女混合の学習環境の課題も明らかになりました。男女共学のセッションは男女双方が互いから学ぶ貴重な機会を提供しましたが、月経や心の傷つきやすさといった特定の話題は、同じ性別だけのグループの方が話しやすいという意見がありました。
・男子は、男子限定で実施した場で、男らしさや時間管理といったテーマを自由に議論できると語りました。
・女子は、感情のコントロールやリーダーシップに関するセッションが特に自信につながったと報告しました。
・男女混合のセッションでは、男子がより真剣に授業に取り組む傾向があった一方、男子だけの場合では時に冗談や遊びが混じることも観察されました。

これらの知見は、あらゆる性別の子どもたちが共に学べる教育の場を創り出す私たちの取り組みにとって極めて重要です。思春期の少女だけでなく全ての思春期の子どもたちに有益な教育となるよう、若者が安全かつ尊重される環境で自身のジェンダー特有の経験を話し合い、互いに耳を傾け学び合う場をいかに創出するかが必要なのです。

ジェンダー平等に向けて男の子たちを巻き込む必要性

ジェンダー平等を実現するためには、単に女子と女性を力づけるだけでは不十分です。長きにわたり、多くのプログラムや取り組みではこれが主眼とされてきました。持続的な変化を促すためには、ジェンダーに関する対話にすべての人を巻き込む必要があります。

ジェンダー規範は少女たちを制限するだけでなく、少年たちにも有害な期待を押し付け、硬直した男らしさの概念を強化します。ジェンダー平等のためのライフスキルプロジェクトにおける私たちの取り組みは、男子をジェンダーに焦点を当てた対話に含めることで、彼らが支援者となり、ジェンダーの固定観念に異議を唱え、自分自身とのより健全な関係を築くことができることを示しています。

すべての青少年に、性別規範や期待がもたらす有害な影響を理解する手段を提供し、本音を安全に表現できる場を設けています。その結果、この取り組みは、ジェンダー平等を認識し、自らの生活や家族、地域社会において変化を創り出すために積極的に行動する世代の育成に貢献しています。

子どもたちが制限的な規範から解放される世界こそ、誰もが輝ける世界なのです。


原文URL:
https://www.roomtoread.org/the-latest/empowering-youth-transforming-mindsets/

翻訳:竹内 裕人

パートナーたちと共に前進する


子どもの学ぶ権利を支えるには、地域全体の協力が必要です。だからこそルーム・トゥ・リードは、現地組織・コミュニティ・政府と連携し、各国の最も深刻な学習格差を解消するためのリソースと解決策を構築しています。その結果、教育に注力する政府・現地組織・投資家から、信頼される重要なパートナーとして選ばれています。

より多くの子どもたちに、より迅速に恩恵をもたらし、教育支援活動の長期的な持続可能性を確保するため、ルーム・トゥ・リードは信頼できる現地組織と連携しています。これにより、非識字とジェンダー不平等のない世界という私たちのビジョンを現実のものとしています。私たちは彼らを「実行パートナー」と呼んでいます。ルーム・トゥ・リードと協力し、比類のない献身、品質、専門性をもって私たちのプログラムを提供し加速させてくれる組織です。

カナダのパートナー First Book Canada

実行パートナーは単なる協力者以上の存在です。多くの国々において、彼らは私たちの使命を支える生命線であり、深い現地知識と人脈を活用して、より多くの子どもたちに効果的にプログラムを提供することを可能にしています。私たちは現地の学校コミュニティと共に、持続可能で影響力があり変革をもたらす解決策を構築しています。

ルーム・トゥ・リードは創立25周年を迎えており、この機会に、こうしたパートナーたちへの感謝を捧げます。彼らの信頼と専門性のお陰で、ルーム・トゥ・リードは教育と機会を最も必要とする人々に、確実に届けることができるのです。

強力な実行パートナーをどう見出すか?

私たちの実行パートナーはルーム・トゥ・リードの使命に賛同し、明確な実績と影響力、拡大を支える強固なシステムと効率性を有しています。彼らは私たちの価値観を共有し、透明性、誠実さ、相互尊重を重視しています。これらの組織は人間中心のアプローチでプログラムを展開し、地域社会の文化や視点を深く尊重しています。

ルーム・トゥ・リードは、世界各国の教育プログラム実施における豊富な経験を活かし、調査、提案書審査、面接、現地視察を含む厳格な評価プロセスを通じて実行パートナーを選定します。

インドネシアのパートナー Heka Leka

パートナーは、どのように、プログラムを「提供(deliver)」し、「加速(accelerate)」するのか

ルーム・トゥ・リードは、実行パートナーとの協力のもと、主に「提供(deliver)」モデルと「加速(accelerate)」モデルの2形態を用いて活動を展開します。

私たちの「提供(deliver)」モデルでは、ルーム・トゥ・リードが直接、あるいはパートナーと協力して、地域コミュニティと共同でプログラムを実施します。このモデルは、プログラムの改善と変革を継続的に検証・評価する重要な機会を提供すると同時に、政府やその他の潜在的なパートナーに対して、私たちの学習支援の有効性を示す役割も果たします。最終的な目標は、成功事例を公立学校システム全体に統合し、より多くの子どもたちに届けることです。

ヨルダンのラーニア王妃教育開発財団(QRF)は、アラビア語の識字率向上に取り組む戦略的パートナーの有力な事例です。2020年、QRFはルーム・トゥ・リードと提携し、私たちの図書館モデルをヨルダンの公立学校向けに適応・導入しました。このモデルは現代標準アラビア語教育に特化して調整されています。この提携により、活気に満ちた、子どもに優しい図書館が50館も創設され、数千人の生徒が魅力的なアラビア語の本や読書スペースを利用できるようになりました。また、アラビア語圏の他の学校のモデルにもなっています。

ルーム・トゥ・リード中東プロジェクト・マネージャーのディナ・エラブド氏(中央)とラーニア王妃教育開発財団(QRF)とレバノン研究研修機構(LOST)のパートナーたち 《ルーム・トゥ・リードとQRFが支援するヨルダンの図書館にて》
図書館で作家のタグリード・アル・ナジャール氏の訪問を楽しんでいる子どもたち

加速(accelerate)」モデルは、学校ごとのアプローチよりも、多くの子どもたちに、より迅速に恩恵をもたらすことにフォーカスしています。ルーム・トゥ・リードと実行パートナーは、政府やその他のパートナーが、自身のプログラムの実施に関連する政策・カリキュラム・教育提供メカニズム・実践を改善する際に、技術的ガイダンスや教育コンテンツを提供します。

例えば2024年には、アフリカで新たに3つの実行パートナーと提携しました。マラウイの「コミュニティ動員のための創造的センター」ケニアの「少女活動家青年組織」および「ポリコム・ガールズ」です。これにより「She Creates Change」の教材とカリキュラムの普及を加速させ、より多くの思春期の少女がジェンダー平等を促進するライフスキルを習得できるよう支援しています。こうした信頼できる現地組織との連携により、より多くの子どもたち、より多くのコミュニティに対して、より迅速に、より良い学習成果をもたらすことが可能となります。

ルーム・トゥ・リードのアフリカにおける男女平等ポートフォリオのディレクター、ザマラディ・サイード・イスラヒ氏(左から2人目)と、ケニアの実行パートナーのPolycom Girlsのメンバーたち

私たちのパートナー

ルーム・トゥ・リードが25年にわたる活動の中で、非識字とジェンダーの不平等のない世界を実現するために協力してきた数多くのパートナー(実行パートナーなど)を、一部ですが地域ごとに紹介します。

アフリカ
Teaching at the Right Level
Empower Learning Africa
Polycom Girls(ケニア)
Girls Activist Youth Organization(マラウイ)
Creative Centre for Community Mobilization(マラウイ)
国際児童図書評議会 南アフリカ支部
南アフリカ識字協会
Nal’ibali, South(南アフリカ)
PILO(南アフリカ)
プク児童文学財団(南アフリカ)
ユニセフ(南アフリカ)
ヨハネスブルグ大学(南アフリカ)
プレトリア大学(南アフリカ)
ゼネックス財団(南アフリカ)
ケルカート財団(タンザニア)
コログウェ地区評議会(タンザニア)
ムクランガ地区評議会(タンザニア)
テメケ地区評議会(タンザニア)
ウガンダ読書協会

南アジア
Robotsoft Inc.(インド)
Rural Development & Empowerment(ネパール)
Suryoda Club(ネパール)
ネパール児童文学協会(ネパール)
Padhnako Lagi Kotha(ネパール)
ダリット開発協会(ネパール)
教育啓発機構(パキスタン)

東南アジア
Yayasan Literasi Anak(インドネシア)
ProVisi(インドネシア)
Taman Bacaan Pelangi (Rainbow Reading Gardens) (インドネシア)
FTBM(インドネシア)
Heka Leka(インドネシア)
Mutiara Rindang(インドネシア)
Sipar(カンボジア)

アメリカ大陸+ヨーロッパ
カナダ児童読書室
First Book Canada
カナダ児童図書銀行
イタリア金融教育・貯蓄財団
Fondazione Mondo Digitale ETS(イタリア)
グレース・プレイス・フォー・チルドレン&ファミリーズ(米国)
クラウドエリジェント(米国)
セクアッチー・バレー・ヘッドスタート(米国)

中東
ラーニア王妃教育開発財団(QRF)(ヨルダン)
レバノン研究研修機構(LOST)(レバノン)
セセメ・ワークショップ

図書館の準備をしているインドネシアのパートナーのMutiara Rindangのメンバーたち。若い読者が自分の興味のある本を選ぶのに最適な高さの、カラフルな本棚を設置しました。

原文URL:https://www.roomtoread.org/the-latest/partners-in-progress/

翻訳:竹内 裕人

大学生が届ける想い:スリランカ・スタディツアー訪問記 by STUDY FOR TWO


ルーム・トゥ・リードを継続的に支援してくださっている学生団体 STUDY FOR TWO のメンバーが、この夏スリランカの小学校を訪問し、現地の様子を報告してくれました!

STUDY FOR TWOは、大学生が使い終えた教科書を回収・再販売し、その収益でアジア・アフリカの子どもたちの教育を支援する団体です。コロナ禍を経て数年ぶりのスタディーツアーでは、授業の見学や子どもたちとの交流を通して、教育支援の意義を改めて学ぶ機会となりました。

STUDY FOR TWOから届いた『スリランカスタディツアー訪問記』を、原文のまま掲載させていただきます。


スリランカスタディツアー訪問記
NPO法人 STUDY FOR TWO
参加メンバー 一同


2025年8月24日(日)~26日(火)の日程で、私たち NPO法人 STUDY FOR TWOのメンバー5名は、ルーム・トゥ・リード様が支援プログラムを行っているスリランカの現地小学校を訪問させていただきました。この訪問記は、メンバー自身が今回のスタディツアーで感じ、学んだことをまとめたものになります。現地でのメンバーの学び、活動の様子を感じていただけますと幸いです。

私たちが訪れた学校は、スリランカ中心部の都市キャンディから車で1時間ほど山道を進んだ先にありました。学校への道のりは、空港からコロンボへ向かう高速道路とは対照的に、揺れながら進む道のりで車酔いをしたのが思い出です。到着すると、子どもたちと先生方が伝統的な挨拶とダンスで温かく迎え入れてくれました。

1-2年生の授業見学

1年生のシンハラ語の授業では、音から文字を学んでいました。先生はまず、子どもたちに音を聞かせてリピートさせます。次に、絵の描かれたカードを使い、特定の音が聞こえたらその音を使う絵の描かれたカードを手に取るというゲーム感覚の授業を行っていました。最終的にルーム・トゥ・リードが出版した書き取りノートで文字を書き順通りに書く練習へと進んでいました。授業の雰囲気は、活気に満ちている印象を受けました。先生は絶えず子どもたちに問いかけ、子どもたちはその問いに答えようと、勢いよく手を挙げていたのが印象に残っています。

図書室見学

この図書室には現在1,664冊の本が所蔵されており、子どもたちが常に新しい本と出会えるよう、定期的に蔵書を入れ替える仕組みが整えられています。
図書室に入った第一印象は、教室と同様にカラフルな壁や本棚でした。図書室に入る前には手を洗い、靴を脱ぐというルールがあり、子どもたちが本を大切に扱っていることが伝わってきました。本の貸し出しや管理は図書室の先生と図書委員の保護者が行っていました。3〜4ヶ月に一度、図書委員の保護者が集まり、本の管理方法や今後の計画について話し合いを行っているとのことでした。これにより、図書室が持続的に運営されていることを知りました。

読み聞かせの授業見学

図書室では、読み聞かせの様子を見学しました。読み聞かせの後には、物語についてディスカッションをするなど、本を通じて子どもたちの創造力を育む教育が印象に残りました。
図書室の見学のあとは、屋外でアクティビティを行いました。私たちは、子どもたちと一緒にドラえもん音頭を踊りました。その後、スリランカの伝統的な昼食をいただき、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。

保護者との意見交換


スタディーツアーの中でも、子どもたちの保護者の方々との意見交換をした時間が特に印象に残っています。ルーム・トゥ・リードの支援がもたらす価値と、現地の人々が直面する困難の両方を知ることができました。ある保護者は、「本が、子どもたちと過ごす時間を増やしてくれる。」と語ってくれました。子どもたちは、放課後、図書室で借りてきた本を読み、家族と語ります。物語の続きを想像し、絵に描いてみる課題もあるとのことで、一冊の本が、家族との時間を生むという事実は、識字教育がもつ可能性を感じさせられました。 一方で、子育てにおける最大の関心を尋ねた際、返ってきたのは予想外の答えでした。それは「移動」です。この地域の子どもたちの中には、小学校に通うために、片道3km以上の未舗装の坂道を歩いている子もいます。保護者にとって、この通学の困難が、子どもを学校に通わせる上での心配事であるようでした。

STUDY FOR TWO 学生代表 津田より

私たちは普段日本国内で活動を行っており、実際の教育支援の場を目にする機会はありません。今回、実際の支援の現場を知ることができ、文字や写真で知るよりもはるかに学びのある時間を過ごすことができました。そして、想像していたよりも活動は地道で現地の方に寄り添っていたものだということが実感でき、1年、2年という短期的な時間軸ではなく長期的に活動ができるよう日本国内から微力ながら継続してサポートさせていただきたいと思います。

スタディツアー参加メンバーより


心に残ったのは、保護者の方から伺った「本が子どもと過ごす時間を増やしてくれる」という言葉です。これは、本が教育の機会だけでなく、親子の絆を深めるきっかけにもなっているということです。日本では、デジタルデバイスが親子のコミュニケーションを減らしているのかもしれない。ということに気が付き、支援する側の私たちが学ぶことも多いのかも?と考えるきっかけになりました。(C.K.)

子どもたちの様子を見ていると、日本の無邪気な子どもたちと何も変わらないように思いました。ただ生まれた環境が異なるだけ。ルーム・トゥ・リードさんの支援で楽しく学んでいる子どもたちを見てきました。図書館で本を読むことを楽しみに学校に来る子も多くいるそうです。(T.N.)

今回のスタツアでは、学校図書館を実際に自分の目で見ることができたのが、特に印象に残っています。日本との違いを感じられたことに加え、現地の方から直接お話を伺うことができ、とても学びの多い時間となりました。学校や学校図書館は、観光では訪問が難しい場所でもあるため、とても貴重な経験となりました。(M.S.)

今回のスタツアでは、現地の小学校での支援の様子を実際に見ることができました。楽しそうに授業を受ける子どもたちの姿が印象的でした。(K.O.)


日本での活動は、直接子どもたちとの交流も無く、寄付を募る活動が中心となってしまい、その寄付がどう活用され、どう子どもたちの未来を輝かせる支援となっているかの実感が乏しいのが現実かと思います。
ルーム・トゥ・リードとしても、これからも、支援して頂いている子どもたちの様子をお伝えすべく努めて参ります。

🔗STUDY FOR TWOの活動の詳細はこちらをご覧ください。


ルーム・トゥ・リードより、感謝を込めて:
STUDY FOR TWO様からは、毎年の教科書販売を通したご寄付に加え、今年はクラウドファンディングを通じて、50名分の子ども1年間の識字教育に相当するご支援をお預かりしました。日本中の大学生の熱意、そしてその想いを支えてくださる皆さまのお力添えに、心より感謝申し上げます。


たくさんの企業や団体、学校がルーム・トゥ・リードの活動を様々なかたちでサポートしています。お問合せやご質問は下記までお寄せ下さい:

ルーム・トゥ・リード・ジャパン事務局

📤 japan@roomtoread.org

喪失から「読む力」へ: ハーフィズの物語と、レバノンで広がる「読書コーナー」

Nivrita Durgvanshi

報告者:ニヴリタ・ダルグヴァンシ
ルーム・トゥ・リード「リテラシー・ポートフォリオ」アソシエイトディレクター

シリア内戦で母と兄を亡くし、レバノンに難民としてたどり着いた12歳の少年、ハーフィズ(仮名)。当時の彼は、ただ生きることに必死で、教育を受けることなど考えもしませんでした。しかし、ある日、若いボランティアの青年との出会いが彼の運命を変えます。その青年から、レバノン東部バールベック地区にある、ルーム・トゥ・リードが支援する地域コミュニティ組織「ヘルワ・ヤ・バラディ(Helwa Ya Baladi)」が運営する図書館の存在を知らされたのです。

最初はためらいながらも、ハーフィズは図書館を訪れました。シャイで引っ込み思案な彼は、最初のうちは誰にも話しかけることができませんでしたが、時間が経つにつれて、徐々に心を開いていきました。表情は豊かになり、他の子どもたちと仲良く、様々な活動にも積極的に参加するようになったのです。そして今、彼は小学3年生として、読書への強い意欲を見せ、単語の読み方や文字の発音を着実に学んでいます。

僕はここが大好きで、とても心地いいんだ。この図書館にある本は全部読みたいよ!」

とハーフィズは私たちに話してくれました。彼のお気に入りの本は『ライオンとネズミ』だそうです。


「読書コーナー」の広がり:小さなアイデアが大きなムーブメントに

ルーム・トゥ・リードがレバノンで図書館プロジェクトを開始した当初、私たちには2つの大きな目的がありました。一つは、15の非公式教育センター(Non-formal Education Centres (NFE))に子どもにやさしい読書コーナー型図書館を作ること。もう一つは、100タイトルの児童書を様々なセンターに配布することでした。

最初の15のモデル図書館が完成し、地域でのイベントも開催された後、思いがけない素敵な出来事が起こりました。なんと、新たに5つの非公式教育センター(NFE)が私たちのチームに連絡をくださり、「自分たちも読書コーナーを作りたい」と申し出てくれたのです。これらのセンターは、子どもが安心して過ごせる読書スペースの設置に意欲的に取り組んでおり、書籍や研修に対する支援を求めてきました。


特筆すべきは、各センターが限られた予算の中で素晴らしい工夫を凝らしたことです。段ボールで作った本棚、タイヤから作ったスツール(椅子)、廃布から作ったクッションなど、低コストの材料を活用し、それぞれが独自の魅力にあふれた読書コーナーを創り出しました。これらの読書スペースは、子どもたちが毎日アクセスできるよう、先生たちの指導のもと運営されています。

このような想像を超える熱意に後押しされ、私たちは戦略を見直すことにしました。これまでの「ただの書籍配布」にとどまらず、非公式教育センター(NFE)における読書コーナーの創設を積極的に支援する方向へと舵を切ったのです。これにより、プロジェクトの目標により深く連動する形となりました。


低コストで持続可能なモデルの確立

私たちは、最小限の資源で低コストな読書コーナーを設置するためのシンプルな手順書を作成しました。この手順書には、日常の素材を使って本棚やクッション、スツール(椅子)を自作するDIYのアイデアも盛り込まれています。

この手順書に沿って、ルーム・トゥ・リードは2つの動画を制作しました。一つは、子どもに優しい図書館を視覚的に紹介するバーチャルツアーを提供するもの。もう一つは、教育者たちを支援する読書活動の実演動画です。これらの動画教材は、書籍とともに各センターに提供され、定期的に実施支援のためのフォローアップも行われています。

その反応は驚くほど前向きなものでした。全140の非公式教育センター(NFE)のうち、約125のセンターが自らの読書コーナーを設置したのです。子どもたちの喜びあふれる写真が、次々と私たちのもとに届きました。さらに各センターからの要望を受けて、私たちは図書館運営に関する公式研修を2度実施しました。

現在、これらの読書コーナーは、レバノン全土で69,000人を超える子どもたちに届いています。わずか15のモデル図書館から始まったこの取り組みは、すべての子どもの手の届く場所に、本と喜び、そして学びを届ける、強力で低コストなモデルとして、レバノン国内中に読書愛を育むムーブメントへと発展しています。


原文URL:https://www.roomtoread.org/the-latest/from-loss-to-literacy/
翻訳:榎本 晋作


📚9月は国際識字月間!ご寄付の効果が2倍になって子どもたちに届きます!