新学期(日本では二学期)が近づく中、米国の「本の砂漠」や子ども向け書籍の多様性の欠如を示す調査の結果を受け、十分な環境がないコミュニティにおける教育に関する不平等への対応が求められる

サンフランシスコ ー2021年8月25日発表のプレスリリースより
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子どもの識字率向上と女子教育に取り組むグローバルな教育団体であるルーム・トゥ・リードは、調査結果と実行可能性調査の結果を発表しました。これによると、米国では、満足のいく環境に置かれていない子ども達が、子ども用の本、特に子ども達の多様なアイデンティティや経験に沿った本を手に入れることができないような場合、教育の不平等が継続することが明らかになりました。独立機関の研究者によって行われたこの調査は、「ミッシングアウト:米国の子ども達の教育格差は、本の砂漠や児童文学における多様な表現の欠如によって深まっている(MISSING OUT: Education Inequality for U.S. Children Deepened by Book Deserts and Lack of Diverse Representation in Children’s Literature)」と題され、2014年からルーム・トゥ・リードのプログラムに投資している世界的なスキンケアブランドのタッチャ社が調査に資金を提供しました。 

この調査研究では、子どもの識字教育開発と書籍出版に関してルーム・トゥ・リードが持つ独自の専門性を通じて、多様かつリソースを十分に持たないコミュニティのために、教育の平等を実現するための投資が最大の効果を発揮する地理的エリアを明確にしています。

調査結果から、米国は世界で最も裕福な国のひとつであるにもかかわらず、学習機会が平等に与えられていないことが明らかになりました。米国では全体的に人種差別が根強く、その結果、人種に基づいて学校が分かれています。学校の資金は主に地域の固定資産税で賄われているため、生徒一人当たりの支出額は、地理的条件や地域の富や所得のレベルに応じて大きく異なり、制度上の不公平を助長しています。データによると、米国の教育システムで十分なサービスを受けられない人々がいることが確認されており、その中には、黒人、ラテン系、ネイティブアメリカン、白人のコミュニティの子ども達が含まれ、高いレベルの貧困や田舎の環境が学習の大きな障害となっています。里親に引き取られた子どもたちや、移民・難民の子ども達も、教育を受ける機会が少なくなっています。

今回の調査では、最貧地域の子ども達が、読み書きの能力を高め、読書の習慣を身につけ、生涯学習のために必要な本を十分に入手できていないことが明らかになりました。家庭内の本の数は、子どもの読解力の高さに大きく関係していますが、全米の少なくとも半数の家庭には100冊の本が置かれておらず、これらの家庭は「本の砂漠」と言うことができます。「本の砂漠」とは、ユナイト・フォー・リテラシー(Unite for Literacy)という団体が提唱した造語で、子ども達が家庭や地域で読み物を手に入れることが困難な地域を指します。「本の砂漠」は、全米の貧困地域や黒人・ラテン系の家庭で高い割合で見られます。実際、低所得者層の61%の家には子ども用の本がまったくありません。ルーム・トゥ・リードは、収益に関係なく、地元の作家、イラストレーター、出版社、印刷会社と協力して、地域のニーズに合った高品質の本を素早く用意・調達するという専門性を持っているため、低所得者層のコミュニティにおいて、多様で高品質な子ども用の本の不足に取り組むのに最適な組織となっています。

ルーム・トゥ・リードCEOであるギータ・ムラリ博士は、「すべての子どもには、学習と人生の前向きな成果への入り口として、本の恩恵を受ける機会が与えられるべきです」と述べています。「ルーム・トゥ・リードは、3,200冊以上の高品質な児童書を43の言語で提供しており、教育者や家族が教室や家庭でこれらの本を活用できるようにサポートするガイダンスも提供しています。これは子どもたちの読書の習慣を育み、未来のリーダーを育てるための私たちのアプローチの礎となるものです。」

また、調査によると、米国では子どもの本における人種の多様性が著しく欠如しています。黒人、先住民、有色人種(BIPOC/ Black, Indigenous, and People of Color)を題材にした本や、黒人、先住民、有色人種によって作成される本は、子ども用の本全体の中で圧倒的に少数派であり、白人のキャラクターや動物、物を題材にした子どもの本は83.4%、BIPOC以外の人々が出版した子ども用の本は88%にのぼることがわかりました。

ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラム(グローバル)シニアディレクターのクリスタベル・ピントは、「子ども達が自分達の生活が本の内容に反映されていることを見ることは、自分達の経験を確証することであり、また、自分とは異なる人々について書かれている本を読むことは、固定観念に立ち向かうことにつながります」と述べています。「ルーム・トゥ・リードの、書籍出版における広範でグローバルな実績により、何百万人もの子ども達が、本の題材として少ししか登場したり描かれたりしてこなかった多様なキャラクターの物語を読むことができるようになりました」。

今回の調査結果に基づき、ルーム・トゥ・リードは、米国内で最も教育的ニーズの高い地域や人々を対象に、児童書出版における表現の多様性や上がっている意見に重点を置いて活動していきます。ルーム・トゥ・リードは、ルーム・トゥ・リードの専門性が、地域の組織を支援し、システムを強化し、大きなインパクトを与えることができる場所に注力していきます。 

 

ルーム・トゥ・リードとは

ルーム・トゥ・リードは、「子どもの教育が世界を変える」との信念に基づき2000年に設立され、非識字やジェンダー不平等のない世界を目指しています。ルーム・トゥ・リードは、低所得コミュニティの子ども達が識字能力と読書習慣を身につけられるよう、また、少女達が人生の重要な決断を下すためのライフスキルを身につけ、中等教育を修了できるように支援することで、この目標を達成してきています。ルーム・トゥ・リードは、政府やパートナー組織と協力して、大きな規模で子ども達にプラスの成果をもたらしています。ルーム・トゥ・リードはこれまで、20カ国、40,700以上のコミュニティで2,300万人以上の子ども達のために活動をしており、2025年までに4,000万人の子ども達に手を差し伸べることを目指しています。詳細は https://japan.roomtoread.org/ をご覧ください。

(翻訳ボランティア:藤山普美江)