今、パキスタンでは、多くの子どもたちが、質の高い教育を受ける機会を逃しています。ユニセフによると、2022年にパンジャブ州で小学校を修了した子どもは、わずか66%に過ぎません。全国的な識字率は58%程度にとどまり、9年生まで学校に在籍している女子はわずか13%で、何世代にもわたって不公平な状況が続いています。
ルーム・トゥ・リードは、パキスタン特有の教育的課題を特定し、2020年にパキスタンで複数年にわたる識字率向上プロジェクトを立ち上げ、大成功を収めた識字率向上プログラムのコンポーネントを、現地の子どもたちのニーズに合わせて適応させました。 ルーム・トゥ・リードの識字支援では、小学校図書館の設立や現地語の児童図書の開発・配布を通じて、生徒の識字能力と基礎的な学習能力を高めるために不可欠な教材へのアクセスを増やしています。
ルーム・トゥ・リードの編集で現地語児童書のニーズに応える
歴史的に恵まれない地域社会の子どもたちの多くは、自分で読書ができるようになるために不可欠な教材である、文化的に適切な現地語の児童書を、ほとんど、あるいは全く入手できません。ルーム・トゥ・リードは、非営利の出版社としての独自の役割を活かして、質の高い児童書を出版・配布し、児童がわくわくするような読書教材に触れる機会を増やすことで、読書に対する習慣と愛情を育んでいます。
これまでパキスタンでは、ルーム・トゥ・リードがウルドゥー語、ダリー語、パシュトゥー語、シンドゥー語の児童書を編集・翻訳し、子どもたちが理解できる本に接する機会を広げるお手伝いをしてきました。現在までに、655,000冊以上の現地語の本を、ルーム・トゥ・リードが支援する全国の学校図書館やパートナー・プログラムに配布しました。
ルーム・トゥ・リードのオリジナル・ウルドゥー語文庫の編集
過去に出版された児童書タイトルを翻訳・編集してきましたが、この度、ルーム・トゥ・リード初のオリジナル・ウルドゥー語児童書文庫がパキスタンで出版・配布されることになりました。ルーム・トゥ・リードの作家・イラストレーターたちが、ワークショップを通じて、文庫を編集しました。30人の地元の作家、芸術家、クリエーターの多様な創造的才能を結集し、さまざまな物語を伝える15タイトルを収録しています。
ほんの一部をご紹介します。
ファラ・シャー作、アベール・カシリ絵の 「魔法の糸:ホーワとシャライの物語」は、ホーワと子羊のシャライの物語です。好奇心旺盛なホーワは、シャライの毛に興味を持ち、毛を心地よいコートに変える魔法を学びます。冬が来ると、彼女は自慢げにお気に入りの毛糸の上着を身につけ、シャライと一緒に季節を楽しみます。
オビエン・マヨ作、マリアム・シェザディ絵の「チュツキ」は、果物の木でいっぱいの庭を持っている、サルのチュツキの物語です。たくさんの果物があるにもかかわらず、チュツキはバナナしか食べません。ある日、バナナの木からバナナが飛び出すという不思議なことが起きます!バナナは庭を跳ね回り、追いかけてくるチュツキをからかいます。ついにお腹が空き、大好きなバナナを食べられなくなったチュツキは、しぶしぶ庭の他の果物を食べてみます。
モナ・アズハル作、ワジハ・ラファイ絵の「泥棒があらわれた」では、ある家族が庭にマンゴーの木がある新しい家に引っ越してきます。家に慣れた頃、リボンや靴下など、次々と物がなくなっていく事に気がつきます。自分たちの持ち物に何が起こったのか、誰が持ち去ったのか、想像もつきません。そしてついに、彼らは思いがけない泥棒を発見します。マンゴーの木にいたカラスが、リボンや靴下などで遊び半分に自分の家を飾っていたのでした。
National Book Foundation、Alif Laila Book Bus Society、Maqbool Booksの3つの地元書籍出版社との提携により発行されたルーム・トゥ・リードのウルドゥー語の新刊9万冊は、パンジャブ州ラホールとバハワルプール地区にある34のルーム・トゥ・リードの学校図書館や教室の本棚、およびパキスタン全土の提携団体に配布される予定です。これらのオリジナル・ストーリーは、子どもたちが理解できる言語と、自分たちの生活体験や文化を反映した内容の両方を提供し、子どもたちが読書という行為に夢中になり、生涯にわたって学習への興味を持つきっかけとなります。
ルーム・トゥ・リードは、あらゆる言語を通して子どもたちが学び、成功するために必要な場所を用意します。ぜひ、ご支援ください。
原文URL:https://www.roomtoread.org/the-latest/room-to-read-publishes-new-urdu-language-books-in-pakistan/
翻訳:竹内 裕人