ルーム・トゥ・リード・ジャパンでは、来月11月10日から12月25日まで、小学校3校の子どもたちがより良い教育が受けられるよう寄付キャンペーン「Action for Education(アクション フォーエデュケーション)」をスタートします。
「Action for Education」には、より多くの方に、何か自分ができる行動を起こしてもらい、日本から教育を届ける参加型ムーブメントをつくりたいという思いを込めています。
実際に行動を起こしてくださっている方々にインタビューをさせていただき、シリーズでご紹介させていただきます。第一回目は、2008年より日本初の法人パートナーとして、ルーム・トゥ・リードの活動を毎年応援してくださっているアビームコンサルティング株式会社様(以下、アビーム)CSRユニット長の矢野陽一朗さんにお話を伺いました。
前編はアビームのCSR活動が中心でしたが、後編では、カンボジア現地視察ツアーで感じたこと、矢野さん個人の教育への思いなどについて、お伺いしました。
――アビームの皆様には、実際にご支援をいただいたカンボジアのコンポントム州のプロジェクトを2016年11月にご訪問いただきました。矢野さんが現地への視察ツアーに参加されようと思った理由を教えてください。
「今回の訪問はCSRの責任者として決まったものですが、個人的にも、以前から知っていたルーム・トゥ・リードの活動を実際に自分の目で確かめたいという思いがありました。
現地では、支援をさせていただいた小学校を訪問し、クメール語の授業(識字教育プログラム)に参加しました。また、中等学校での女子教育プログラムのワークショップに参加し、高校生の女子生徒達が、村にいる4歳から6歳の小さな子ども達に読み聞かせボランティアをする様子も見学させていただきました。」
――実際に訪問されて、どのように感じましたか。
「ルーム・トゥ・リードの皆さんが地域コミュニティを巻き込んで活動をしていらっしゃる点が、すごいと感じました。地域の理解、特に親御さんの理解を得られないとなかなか学校に通わせてもらえないでしょうし。
加えて、政府と連携して活動している点など、小さなリソースで大きな成果を挙げるにはどうすればよいか、がよく考えられていますよね。ルーム・トゥ・リードの創設者である、ジョン・ウッドさんの哲学が浸透していると感じました。」
――現地で特に印象に残ったことは何ですか。
「現地視察ツアーの訪問先での体験は、とても素晴らしいものでしたが、事前に見聞きしていたこともあり、想像の範囲内でした。しかし、カンボジアの現地スタッフの皆さんとの交流を通じて、彼らがこの活動にかける想いの強さを知りました。これは本当に想像以上でした。
特に、カンボジアのルーム・トゥ・リードの責任者であるカンボジア人のカール・カーンさんのお話には、強く心を動かされました。彼は内戦でご両親を亡くし、軍事政権下の厳しい環境の中で、奨学生として生き残るために必死に勉強をしたのです。彼ほどの能力があれば、先進国の会社に就職して、豊かな暮らしをすることもできたはずです。しかし、自分の国をよりよくしたいという思いから、あえて非営利団体という厳しい道を選択し、献身的に活動されています。
カンボジアをはじめ、世界の国々には、さまざまな課題があります。そして、その課題を本当に解決できるのは、私たちのような外国人ではなく、その国の人たちだと思います。カールさんのお話を聴いて、自分の国をよりよくしたいという強い思いを持った人を支援することが大事なんだということを、改めて感じました。」
――矢野さん個人の教育に対する思い入れを教えてください。
「私にはいま大学生になる娘と高校生の息子がいますが、彼らが幼い頃から『なぜ、勉強をするのか』という話をしてきました。いい大学やいい会社に入るためではないよ、経済的に自立し、自由で充実した生活を送ることのできる社会人になるためだよ、と。ただし、自分の思う通りの進路を選ぶためには、勉強したほうが良いですね。選択肢が増えるわけですから。あとから『医者になりたい』と思っても、それまであまり勉強してこなかったとしたら、諦めなければいけないのです。
ルーム・トゥ・リードも、学問を通じて子ども達の人生の可能性を広げる活動をされていますよね。『勉強することで、人生の選択肢が増えていく』というのは、まさに皆さんのお考えとも重なります。」
――ルーム・トゥ・リードの活動にちなんで、矢野さんの人生に影響を与えた本を教えてください。
「福沢諭吉の著作から大きな影響を受けました。特に学生時代に読んだ『福翁自伝』からは、学ぶことに対する姿勢の大切さを教えられました。彼は好奇心の塊のような人物で、漢文も、蘭学も、英語も、どんどん学んでいくのですが、自分の可能性を全く疑っていないんですね。
例えば、19歳の頃に蘭学修行で長崎へ発つ際には、自分のお兄さんに向かって『人の読むものなら横文字でも何でも読みましょう』と啖呵を切っている。まだ彼が住んでいた中津藩(大分県)には横文字を見た者すらいなかったといいます。そして、彼はあらゆる手段を尽くして可能性を広げていくんですね。例えば、英語の発音を学びたい一心で漂流者の外国人を訪ね歩いたり、咸臨丸の噂を耳にするやいなや、幕府に志願して遣米使節団の随行員になったりしています。彼のような情熱を持って、一生学び続けたいと思いました。」
――最後に、チャリティ活動に興味がある方、関わりたいと思っている方へ、メッセージをお願いします。
「ルーム・トゥ・リードのことをよく知っていただきたいので、是非、ジョン・ウッドさんの本(1冊目・2冊目)を読んでいただければと思います。
また、ルーム・トゥ・リードのさまざまなイベントに足を運んでいただき、実際に活動している方々と交流していただきたいです。そうすると、よりルーム・トゥ・リードの活動を理解できると思います。活動をしている方々の想いに触れることによって、『自分も何かできるのではないか』と思っていただけたら嬉しいです。」
(文・アビームコンサルティング CSRユニット 林 千晶/ 聞き手・ルーム・トゥ・リード・ジャパン 松丸佳穂)
矢野陽一朗
外資系コンサルティング会社、国内コンサルティング会社の取締役を経て2015年にアビームコンサルティングに入社。2016年6月、経営企画グループCSRユニット長に就任。同コーポレート・コミュニケーションユニット長を兼務。