アビームコンサルティング株式会社 矢野陽一朗さん(前編) 「社会課題は簡単に解決できるものではない。一過性の取り組みで終わってはいけない」(Action for Education – 世界を変えるアクションを起こす Vo.1)

アビームコンサルティングCSRユニット長の矢野さんとルーム・トゥ・リード担当の白さん
アビームコンサルティングCSRユニット長の矢野さんとルーム・トゥ・リード担当の白さん

 

ルーム・トゥ・リード・ジャパンでは、来月11月10日から12月25日まで、小学校3校の子どもたちがより良い教育が受けられるよう寄付キャンペーン「Action for Education(アクション フォーエデュケーション)」をスタートします。

「Action for Education」には、より多くの方に、何か自分ができる行動を起こしてもらい、日本から教育を届ける参加型ムーブメントをつくりたいという思いを込めています。

実際に行動を起こしてくださっている方々にインタビューをさせていただき、シリーズでご紹介させていただきます。第一回目は、2008年より日本初の法人パートナーとして、ルーム・トゥ・リードの活動を毎年応援してくださっているアビームコンサルティング株式会社様(以下、アビーム)CSRユニット長の矢野陽一朗さんにお話を伺いました。

 

――アビームの主な業務およびCSR活動の概要について教えてください。

聞き手:ルーム・トゥ・リード・ジャパン事務局長の松丸(左)
聞き手:ルーム・トゥ・リード・ジャパン事務局長の松丸(左)

 

「弊社は、アジアを中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれの国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメントコンサルティングファームです。歴史は古く、今年で35年目です。全従業員数は約4300人、国内従業員数は約2800人です。

弊社のCSR活動は、もともと社員の有志によるボランティア活動として始まりました。その後2013年にCSR方針を策定し、経営の一環として活動を位置づけました。なかでも私たちCSRユニットでは、ビジネスでは解決できない課題の解決に貢献することを目的とし、『社会貢献活動』と『環境保全活動』の2つを軸にして活動しています。」

 

――アビーム様がなぜCSR活動を行っているのかを教えてください。

「弊社ではCSR方針のミッションとして、『私たちは、コンサルティングサービスを通じて、クライアントに新たな成功をもたらし、持続可能な社会の実現に貢献します』と掲げています。

前半部分の『クライアントに新たな成功をもたらし』は、お客様の抱える経営課題を解決し、新たな価値創造や事業成長に貢献するという、私たちの本業を通じて、日々実践しています。しかし後半の「持続可能な社会の実現」、この部分はなかなか本業のビジネスの部分だけでは解決できない部分があります。そこで、CSR活動では本業で培った経験やスキルを活かし、地域社会や地球環境が抱える課題の解決に貢献することで、社会全体の変革につなげようとしています。」

 

――経営活動の一環としてCSR活動を展開されているとのこと、素晴らしいと思います。経営活動の一環として行う以上、どのような基準で、取り組む課題を選んでいらっしゃいますか。

「嬉しいことに、弊社にはとても積極的な社員が多く、日々、たくさんの提案が私のところに来ています。しかし、私はとても慎重に選ぶようにしています。取り組む課題を選ぶ基準は、大きく二つあります。『会社としてやるべき活動か』ということと、『継続的に活動していけるか』ということです。

まず、私たちコンサルティング会社は人が唯一のリソースです。弊社では、そのリソースの一部をCSR活動に充てることが認められていますが、そうしている以上は、会社として取り組んでいるCSR活動について、ステークホルダーにきちんと説明できなくてはいけません。個人でボランティアとしてやればよい活動を、簡単に認めるわけにはいかないのです。本当に『会社としてやるべき活動か』どうかを、見極める必要があります。

次に、社会課題は簡単に解決できるものではないので、一過性の取り組みで終わってはいけないと考えています。これは、私たちがクライアントと長期的な関係を構築し、持続的に企業価値を向上させるという『リアルパートナー』の哲学にも通じるものがあります。そのため、CSR活動についても、私たちが継続的に取り組み、課題の解決に貢献できるかどうかを判断します。」

 

――「会社としてやるべき活動か」という観点で、アビームが私たちルーム・トゥ・リードを長年ご支援してくださる理由をお伺いできますか。

「まず、弊社社長の岩澤は、ルーム・トゥ・リードの創設者であるジョン・ウッド氏と共同創設者兼CEOエリン・ガンジュ氏との個人的な交流を通じて、そのビジョンと活動内容に強く共感し、支援に対してコミットしています。

そして、弊社では、いまアジアを中心としたグローバル展開に力を入れています。このグローバル展開を実現していく上で、世界各地、特にアジアの新興国の経済が発展していくことは、とても重要です。この地域の貧困や教育等の社会課題を解決することは、発展を後押しすることになりますので、長い目で見て弊社や弊社のクライアントにとっても大きな意味があります。例えば、ルーム・トゥ・リードの活動を通じて、教育を受けた学生のみなさんが将来、クライアントになるかも知れませんし、あるいは、弊社の社員になるかも知れません。そういった期待も込めて、弊社はルーム・トゥ・リードの皆さんを継続してサポートさせていただいております。

加えて、ステークホルダーへの説明のしやすさも理由のひとつです。ルーム・トゥ・リードの活動は、目標が明確で、その目標を達成するための手段もとても分かりやすいです。実現プロセス、運営の仕組みが効率的で、透明性がある。報告書についても、お金の流れや成果についても詳細に書いてあり、数字、という目に見える形で報告してくださるので、寄付する側としては安心してサポートすることができます。」

 

――今後についての意気込みをお願いいたします。

「弊社では今まで、毎年の企業寄付をはじめ、プロボノ活動(※)、支援先へのツアーにも参加させていただきました。特に、支援先へのツアーは、寄付したお金がどのように使われているのか体感することができるので、より多くの社員に参加して欲しいですね。そこから活動に共感する人が増え、プロボノ活動などに活かしていければ、と思っております。

これは余談ですが、カンボジアへのツアーに関して経営会議で報告した際に、社長の岩澤が『この場に居るマネジメントは全員、一度は訪問すべきだ』と申しておりました。やはり岩澤も、一度、実際に自分たちが寄付したお金がどのように使われているのか、自分の目で見る必要があると考えているのだと思います。」

※プロボノ活動:自らのスキルや専門知識を活かした社会貢献活動

後後編は、2016年10月にカンボジアにご訪問いただいた際のお話を中心にご紹介いたします。(2017年10月14日(土)18:00配信予定。)

(文・アビームコンサルティング CSRユニット 林 千晶/ 聞き手・ルーム・トゥ・リード・ジャパン 松丸佳穂)

 

▼アビームのカンボジアの支援校訪問の様子はこちらにも掲載されています。

▼アビームのCSR – 途上国への教育支援 については、こちらをご覧ください。

矢野陽一朗

矢野陽一朗
外資系コンサルティング会社、国内コンサルティング会社の取締役を経て2015年にアビームコンサルティングに入社。2016年6月、経営企画グループCSRユニット長に就任。同コーポレート・コミュニケーションユニット長を兼務。