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すべての声を聞くための道を作る
識字教育プログラム シニアディレクター クリスタベル・ピント
2020年6月12日
(原文はこちらです:https://www.roomtoread.org/the-latest/making-way-for-all-voices-to-be-heard/)
カリフォルニア州オークランドにある私のアパートから毎日聞こえてくるヘリコプター、サイレン、ドラム、何かの大きな音は、人々が声を上げていることを示しています。
長い間、アメリカで生きることについての物語は特権階級によって語られてきました。そのため、何百万人もの人々は、一般的なアメリカの物語に彼らの生きてきた経験が全く反映されていないため、声が届いていないと感じています。世界中の抑圧され、疎外されたコミュニティが、自分達の声を届けるための運動に参加しており、こうした声の反響は世界的に広がっています。
ナイジェリアの作家Chimamanda Ngozi Adichieは、TED Talkで、シングルストーリーの危険性について次のように述べています。
「シングルストーリーは固定観念を生み出します。ステレオタイプの問題は、忠実でないということではなく、不完全だということです。ある話を唯一の話に変えてしまうのです」。地域社会の様々な物語に触れることで、彼らの人生が鏡のように映し出されている人々の姿を見ることができます。そして、共通の人間性を見出し、すべての人が成長できる公平な社会を築くことができます。
ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムは、世界的な非識字の終焉を追求することで、恵まれない人々の声を聞くための道筋を作ります。読み書きができるようになることで、自己表現が容易になり、アドボカシー活動のための知識習得が可能になります。
さらに、ルーム・トゥ・リードは世界中の作家やイラストレーターの研修をして、児童書を出版しています。世界中の本の制作者が自分達の物語に力を持たせ、地域社会の子ども達の生きた経験を反映した物語に発展できるようにしています。
文学は人々が物語を語る方法の一つであり、世界42カ国語1600冊のルーム・トゥ・リードの児童書コレクションには、物語の語り手と同じくらい多様な物語が含まれています。
幼い子ども達が多様な本を読むことで、シングルストーリーは打ち砕かれ、子ども達は世界が多様化する社会の中で、相互理解を育む広い視野を学んでいきます。
Nila Tanzil 著、Nabila Adani挿絵によるインドネシアの絵本『エピの新しい友達』の中では、インドネシアの女の子がアフガニスタンからの難民である新しい隣人と一緒に遊びたいと思っています。話す言葉は違っても、遊びという普遍的なコミュニケーションによって、すぐにつながることでできるのです。やがてこの二家族は、インドネシアとアフガニスタンの伝統食を食べるという新しい経験をしながら、断食をするという共通習慣を共有します。
このような物語は、家族の大切さや食事の儀式などに共通点があることは、出身地や話す言語など、私たちを区別するものよりも強力なものになり得ることを教えてくれます。
Tamara Zeidat著、Salah Rahal挿絵によるヨルダンの絵本『メカジキ』では、メカジキの尖ったツノのせいで、クジラやサメと遊んでいる時に、知らず知らずのうちに多くのトラブルを引き起こしてしまいます。ボールを破裂させたり、誤ってクジラを刺してしまったり、遊園地で知らず知らずのうちに騒動を起こしてしまったり。みんなは、もうメカジキとは遊びたくないと思ってしまいます。
ある日、穴にはまったクジラに出くわしたメカジキは、鋭いツノを使って穴を大きくして、クジラを助けてあげました。クジラと他の仲間達はとても感謝して、メカジキをパーティに招待します。メカジキはツノで他の人を傷つけることを心配して、参加をためらっていましたが、仲間達はある教訓を得て、メカジキを安心させてくれたのです。海の仲間達は、誰しも欠点があり、メカジキのツノのように一見不完全に見えるものが、ほかの人に役立つことを理解したのです。
絵本のようなシンプルな話を読むことで、人間とは何か、共感や寛容さ、正義感を持って人と接することは何か、を学ぶことができます。世界中で、人々が人種差別に反対する声を上げている今、これらの教訓は切実に必要とされています。
ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムは、多様な声を取り入れ、人間の経験をより包括的に見ることができるように、相互理解を促進し、最終的にはより平等な世界を創造する役割を果たすことを目指しています。