ルーム・トゥ・リード、米国における子ども達の本の不足と多様性の欠如を調査

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米国は世界で最も裕福な国のひとつですが、学習の機会は平等に与えられていません。実際に米国では、4人に1人の子どもが読み方を学ぶことなく育っています。

ルーム・トゥ・リードは、独自の識字教育のノウハウを米国のどこで、どのように活用すれば、子ども達が生涯にわたって成功するために必要な基礎的な識字能力を身につけることができるのかを理解するために、企業パートナーであるタッチャ社の支援のもと、研究と実現可能性を探る調査を実施しました。「ミッシングアウト:米国の子ども達の教育格差は、本の砂漠や児童文学における多様な表現の欠如によって深まっている(MISSING OUT: Education Inequality for U.S. Children Deepened by Book Deserts and Lack of Diverse Representation in Children’s Literature)」と題されたこの調査では、十分な教育を受けていないコミュニティの子ども達に、本、特に多様な声や経験が反映された本へのアクセスが制限されている環境では、学習の不公平が深まることが明らかにしました。

発見1:社会経済的不平等と「本の砂漠」が、米国における教育成績の低下につながっている

家庭に本があることは、子どもの早期教育の成功に影響する最も重要な要因の一つですが、最も貧しい地域の子ども達は本を手に入れることができず、熟達した読み書き能力を身につけることができません。これは深刻な問題で、低所得者層の60%以上の家庭では、子ども用の本がまったくないのです。ユナイト・フォー・リテラシー団体は、家庭に本がないことを 「本の砂漠(book deserts)」と呼んでいます。本の砂漠は全米に均等に広がっているわけではありませんが、貧しい郡部や黒人・ラテン系の家庭では多く見られます。全米では、公立学校の生徒のうち、小学校4年生程度の読解力に習熟しているか、それ以上のレベルに達しているのは35%に過ぎず、黒人、ラテン系、ネイティブアメリカンの読解力や高度な識字能力は、他の人種グループに比べて著しく低いレベルにあります。

 

発見2:読書率の低い地域の多様な人々のアイデンティティや経験が児童書に反映されていない

調査を通し、米国では児童書における多様性不足が深刻な問題であることが明らかになりました。児童書の83%以上は、白人のキャラクターや動物、物について書かれています。2018年から2019年の間に、子ども向けの本の44%が白人のキャラクターだけについて書かれており、80.4%の本が白人の著者および/またはイラストレーターによるものでした。コーポレティブ チルドレンズ ブックセンター(Cooperative Children’s Book Center)によると、文学における人種的多様性を高める進歩は遅く、2019年から2020年にかけて有色人種の著者が書いた児童書はわずか3%しか増加せず、合計で26.8%に留まりました。

 

発見3:米国の教育制度では十分なサービスを受けられないある一定の地域や人口層がある

この調査では、ルーム・トゥ・リードが、学習に大きな障害となっている貧困や農村部での生活を営む黒人、ラテンアメリカ人、先住民、白人が暮す地域にて、子供の識字能力に焦点を当てる必要があることが明らかになりました。また、児童養護施設にいる子どもたちや、移民・難民の子どもたちも、学習における危機に直面しています。米国の教育システムにおける不公平の要因としては、学校の分離をもたらした体系的な人種差別や、地理的な位置や地域の所得・富のレベルに応じた学校の資金・資源配分の格差などが挙げられます。

行動を起こそう

調査結果に基づき、ルーム・トゥ・リードは、多様な子どもの本を扱う非商業的なグローバル出版社としての専門性を活かし、米国の子ども達に存在する教育上の不公平に取り組んでいきたいと考えています。

ルーム・トゥ・リードは、社会的に受け入れられていないコミュニティの人々の物語や、そのコミュニティのメンバーによって書かれた本を出版してきた世界的な経験を生かし、今回の調査で特定された十分な教育を受けていない人々へのアプローチに重点を置くことを計画しています。以下の方法で、高品質な読み物へのアクセスを大規模に増やします。

  • 疎外されたコミュニティの子ども達の生活に関連するキャラクター、テーマ、ストーリーに関し、彼らのアイデンティティや文化を忠実に反映した専門書を米国で出版・配布 
  • 1,800冊以上のオリジナル絵本と1,400冊以上の翻案本を43言語で収録したグローバルコレクションを活用
  • 恵まれない地域の学校以外の場所で、家族との関わりや読み書き能力の向上を目指す地域団体との連携

米国の子ども達が本を手にし、自分のアイデンティティや経験、人生が物語の中で表現されているのを見て、励まされるよう、その一端を担えることを光栄に思っています。

米国における識字率向上の取り組みについてはこちら(英語)をご覧ください。

(翻訳ボランティア:相澤叶梨)