インド「家で本を読もう(India Gets Reading At Home)」キャンペーン

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新型コロナウイルス感染症の発生を受けて、世界中の政策立案者、教育者、保護者、地域社会で「学習機会の損失」の問題が議論されています。今回のパンデミックでは、家庭、学校、地域社会が協力して、基礎的な識字力を学ぶための安定した教育環境を提供することの重要性が明らかになりました。

インドでは、パンデミックが起こる前から、長年、学びの環境に問題があったため、全世代に多大な影響を与えています。全世代の子ども達が、十分な学習を受けられないまま大人になっているのです。パンデミック以前であっても、世界銀行の2017年の推計によると、インドの小学5年生の55%が、本来読めるべき短い文章を、読んで理解することができません。パンデミックはインドの2億5000万人以上の子ども達の学習を妨げ、学びの危機を更に悪化させました。

教室での学習ができないだけでなく、子ども達はこれまで学校で学んできたことを忘れてしまいます。4人に1人が14歳以下という現在のインドは、大きな転換期を迎えています。この先どうなっていくかは、保護者や地域社会を支援して、どこでも学習ができるようになるかどうかにかかっています。

ルーム・トゥ・リードは、2021年8月15日のインドの75回目の独立記念日に、「家で本を読もう(India Gets Reading At Home)」キャンペーンを開始しました。これは、家庭での学習を促進するために工夫された、効果的で簡単なソリューションを提供するとともに、この危機的状況下で子ども達の学習をサポートするために、保護者が果たす役割が高まっていることを認識するためのものです。このキャンペーンは、インドの教育システムや幼い子ども達の生活に深刻な影響を与えているパンデミックの影響を断ち切ることを目的にしています。

ルーム・トゥ・リードは、どんなに忙しかったとしても、すべての保護者が子どもの学習をサポートし、安定した学習環境を作ることができると考えています。ルーム・トゥ・リードは、親が子どもの読み書きの能力の発達をサポートできるよう、ヒンディー語、マラーティー語、テルグ語、カンナダ語の4つの言語で、何千もの識字キットを全国の家庭に配布しました。

キャンペーン期間中、ルーム・トゥ・リードは最新式の移動図書館を作り、9つの州で最も遠隔地にある地域にもアクセスできるようにしました。ラージャスターン州のラクダのカート図書館、チャッティースガル州の牛のカート図書館、ウッタル・プラデーシュ州のボート図書館、マディヤ・プラデーシュ州のバイク図書館、デリーのコミュニティ図書館、そして9つの州の移動図書館を通じ、インド国内の隅々まで学びの場を提供することができるようになりました。

キャンペーン終了時となる9月8日の国際識字デーまでに、ルーム・トゥ・リードは、オフラインでは707,233人、オンラインでは5つのソーシャルメディアを通じて609,705人の人々にメッセージを届けました。子どもたちが両親に読み聞かせをしている様子や、家族全員で本を読んでいる様子を見て、私達は「読書や学習はどこでもできる」という信念を更に強めました。

パンデミックの影響で学校が1年間閉鎖されたままになっています。多くの家庭ではリモートで授業を受ける環境が整っておらず、学習の危機が確実に高まっています。感染防止が何よりも優先されているのは当然ですが、世界中の子ども達の未来を脅かす学習機会の損失を見落としてはなりません。

子ども達に必要なもの、つまり将来のために学校に戻ることができるよう、ルーム・トゥ・リードの「家で本を読もう(India Gets Reading At Home)」キャンペーンは、インドの教育制度を積極的に支援してきました。

このキャンペーンの写真を以下にご紹介します。

ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムの詳細と、生徒が生涯にわたって自立した読者になるためのサポート方法については、こちらをご覧ください。

(翻訳ボランティア:竹内裕人)

インドから現地報告:ロシュニ(女子教育プログラム参加者)

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ロックダウン中、チャッティースガル州の9年生のロシュニは、家で家族と過ごすことが多くなりました。ある日、母親から村の少女が結婚することを知らされました。その少女はまだ未成年で、クラスメイトの妹でした。ロシュニは思いました。たった15歳の少女と結婚する人がいるのだろうか。彼女に結婚したいか聞いたのだろうか。彼女の両親は、これが法律違反であることを知っていたのだろうか。

どうしたらこの結婚を止めることができるだろうかと考えたロシュニは、少女の姉に相談しました。彼女は、自分には何もできないという無力感を打ち明けました。ロシュニは行動を起こすことにしました。

「ライフスキル教育のおかげで、困難な時にクラスメートを助けることができました。私は村のチェンジメーカー(変革者)になりたいと思っています」

ロシュニは父親と一緒に、村の代表者であるサルパンチさんに会いに行き、子どもの結婚を止めてくれるようお願いしました。しかし、サルパンチさんは言いました。「この村ではよくあることだ。パンデミックによる失業や貧困のため、多くの親が未成年の娘を結婚させている。ロックダウンを悪用して、バレないように行っている」

ロシュニは、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムのメンターであるソーシャルモビライザーに相談しました。ソーシャルモビライザーはロシュニに、チャイルドライン(無料の子ども電話相談)と警察に電話するように勧めました。ただし、自分の身元は秘密にしておくようにと。

警察はすぐに児童福祉委員会に報告しました。警察、チャイルドライン、児童福祉委員会のメンバーは、少女の家に行き、結婚をやめさせないと法的措置をとると両親に伝えました。少女の両親は、未成年の娘の結婚を取りやめることにしました。新郎の家族は、警察の妨害に不服でしたが、何も言いませんでした。警察はロシュニの努力を高く評価し、身元を秘密にしてくれました。ロシュニは、ライフスキル教育を学んだお陰で、未成年の結婚を止めることができたと感激していました。

下記動画でもロシュニが特集されています。字幕設定を日本語にして、15:40~20:14をご覧ください。

ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムについては、こちらをご覧ください。

(翻訳ボランティア:竹内裕人)

 

バーチャルイベント参加レポート!「コロナ禍でジェンダー平等を推進する(Protecting Gender Equality in a COVID-19 World )」

サポーターの明日香です!10/8(金)に、ルーム・トゥ・リードのバーチャルイベント「コロナ禍でジェンダー平等を推進する(Protecting Gender Equality in a COVID-19 World )」が開催されました! 今回は、その様子と、特に印象深かった部分を皆様にお届けしたいと思います。

          ▲ルーム・トゥ・リードCEO ギータ・ムラリ博士

このイベントは、ルーム・トゥ・リードのCEOであるギータ・ムラリ博士を含む世界中のルーム・トゥ・リードのサポーター(主にアジア・パシフィック地域からの参加者)を迎えて実施したものです。新型コロナウィルス感染症の拡大の中、ルーム・トゥ・リードがどのように世界中の若者や子どもの教育を守ろうとしてきたか、またどのように急激な変化に対応しながら困難を乗り越えてきたかを、各国の対応事例や実際にプログラムに参加した子ども達の”今”の様子を紹介しながら伝えられました。

世界の中でも特に感染状況が深刻だったインドでは、残念ながら学校の先生や親御さんが新型コロナウイルス感染症により亡くなってしまうケースがあり、教育の継続に大きな影響をもたらしました。ルーム・トゥ・リードが独自にインドで行ったアンケートでは、特に少女の約半分は経済的な不安をかかえ、二度と学校に戻れないかもしれないと回答しています。そのような中、ルーム・トゥ・リードのプログラム運営者は、一人の少女も取り残さないよう、少女達のセーフティネットとして機能するようにあらゆる手段を使ってアプローチを続けました。特筆すべきはそのアイデアと実行力です。インターネット越しにリモートメンタリングを続ける、家庭を訪問する、なんとラクダを移動図書館にする(!)、ボートで本を運んだりするなどの素晴らしい工夫で、子ども達やより不安定な立場にさらされている少女の教育・サポートを絶やさない努力が続けられました。

       ▲女子教育プログラム参加者のロシュニ(インド)

パンデミックのことを考えると、事態はあまりにも深刻なのではないか?歩みが止まってしまったのではないか?という思いがよぎりますが、当事者の子ども達はずっと力強く、そのような考えを飛び越えていくことに気づかされます。インドの若いロールモデル、ロシュニはその一例です。自分の村で児童婚が行われそうになった時、「それはおかしい」と思ったロシュニさんは、「NO」の声をあげます。村の大人に声をあげ、周りのコミュニティに声をあげ、自らイニシアティブをとって法執行機関を動かそうと行動し、結果的にその結婚を止めることに成功しました。今もロシュニは、他の少女の人生を守るべく、地域の家庭や大人達、少女達に自ら働きかけています。

        ▲ロシュニが児童婚を止めたことは現地でも報道されました。

バングラデシュでルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムに参加した卒業生のハワ(2019年に来日しています!)も、自らの手で人生を切り開いている一人です。家から15キロ離れた高校に通わせ続けるのに抵抗があった家族の事情もあり、初めは成績や出席率も良くなかった彼女ですが、プログラムに参加して勉強が好きになり、夢をもつようになります。知識が自分だけでなく家族や周りの人を救うものだと気づいたハワは、サポオートを受けながら勉強を続け、大学へ進学することができました。パンデミックで学業を一時中断せざるを得ず、現在は地元で教師をしていますが、将来的には政府で働き政策策定にかかわることを夢見て努力を続けています。

       ▲女子教育プログラム卒業生のハワ(バングラデシュ)

心に刺さったのは、少女達は決して、”か弱い立場のか弱い存在”ではないことです。知識という新しい視点さえ得られれば、自分で考え、進み、家族や周りのために地域や世界を動かす大きな力を発揮し続けることができるということを、ロシュニやハワは体現していました。

CEOのギータ・ムラリ博士からの言葉は、予断を許さない状況を再認識させながらも、「絶対に教育を止めない」という確固たる意志とエネルギーに満ちていました。こちらに一部をご紹介します。

「世界的なパンデミックという未曽有の状況の中、まるまる一つの世代が学校に戻れないかもしれないリスクをかかえています。

少女は特にもろい立場にあり、コロナ禍々で経済的に困窮した家庭の幼い少女はしばしば家族から重荷に思われ、学校をやめて結婚したり、働いたり、下のきょうだいの面倒を見たりするようにさせられています。

このような中、”適切で、誰でも利用ができる”教育基盤を広げ、より多くの子ども達をサポートできるよう、私達は尽力してきました。そして、このような環境にもかかわらず、子ども達がチャンスを最大限に活用しようと努力しています。なんと2020年、ルーム・トゥ・リードは新たに490万人の子どもをサポートすることができました(なんと2019年の2倍です!)。」

パンデミックのいち早い収束を願いながら、これからも、世界中の子ども達が平等に学びの機会を得られるようにもう一度考えさせられる機会となりました。

記:宮澤明日香

 

10月29日まで、The Byron Girls Fundが皆様からのご寄付に対し て同額をマッチングしてくれることになりました!  1000円ご寄付をいただくと、同額の1000円マッチングしてくださり、2000円となって2倍のインパクトになって届きます。
女子教育プログラムをひとりが受けるための費用は月に換算すると3000円、1年間で36000円です。少女達の未来を守っていただけると嬉しいです。

ご寄付はこちらから▶  少女が中退しないよう支援する(寄付が2倍に!)

学校で学んでおきたかった10のライフスキル(10月29日まで寄付がマッチングになります!)

(原文はこちら

ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムでは、少女達が学校に長く通い、中等教育修了に向けて前進し、自分の人生について十分な情報を得た上で選択し、自分の可能性を実現するために必要なスキルと主体性を身につけることを支援しています。

ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムでは、4つの重要な要素の1つは、教室の中でも外でも役立つ重要なライフスキルの開発です。ルーム・トゥ・リードのライフスキル教育フレームワークは、自己認識、自己効力感、社会認識という3つの重要な領域に分類される10のライフスキルに焦点を当てています。

上記のフレームワークで紹介されている10のライフスキルは、少女達が学校に留まり、責任ある決断を下し、健全な人間関係を築き、目標を達成するのに役立ちます。以下、それぞれのスキルについてご紹介します。

自己認識
「私は価値がある」

1. 自信:自信を持つということは、自分には価値があることを理解し、大きな成功を収める価値があると信じることを意味します。少女が自信を持てば、学校や人間関係について健全な判断を下すことができます。トピックスとしては、自己認識とアイデンティティの構築、強み、価値観、信念を見極め評価することの学習、リーダーシップスキルとロールモデルとなること、いじめに立ち向かうことなどが含まれます。

2. 感情の表現と管理:感情を表現することは、自分の感情を他人と共有できることを意味します。感情を表現すると、自分の感情を識別し、それが自分の考えや行動にどのように影響するかを理解することができます。感情を表現し、管理することができる少女は、挑戦的で困難な経験を健全な方法で処理することができます。トピックスとしては、他人の立場に立って考えること、異なる視点を理解することなどが含まれます。

3. 共感:共感とは、他人が経験する感情を認識する能力です。共感すると、相手が経験していることを想像することができるので、思いやりのある聞き手になることができます。共感力のある少女は、誰かを悲しませたくないので、他人に不親切な行動をとることが少なくなります。トピックスには、家族に共感を示すことなどが含まれます。

自己効力感
「私にはできる」

4. 自制心:自制心を持つということは、学校でも家庭でも、あらゆる場面で自分の感情をコントロールし、適切な行動をとることができることを意味します。健全な方法で自分の行動をコントロールできるようになれば、それは自制心を実践していることになります。トピックスとしては、断るスキルやピアプレッシャーへの対処法などが含まれます。

5. 批判的思考:批判的思考スキルを使うことで、情報を評価したり、問題を多面的に見たりすることができます。批判的に考える少女は、論理的に問題を解決し、学校の新しい科目を理解し、自分の人生について健全な決定を下すことができます。また、友達や先生、家族の意見や気持ちをよりよく理解できるようになります。トピックには、お金の貯め方、ニーズとウォンツの見極め、高等教育の資金調達などが含まれます。

6. 意思決定:優れた意思決定スキルを身につけるということは、意思決定の際に起こりうるすべての結果について慎重に考えることを意味します。少女が優れた意思決定スキルを持っていれば、学校、友達、仕事について、成功をもたらすような賢い決断をすることができます。

7. 忍耐力:忍耐力があるということは、何かをしようとする時に、それが困難であったり、すぐには成功しなかったりしても、やり続けるということです。忍耐力のある少女は、目標を達成したり、新しいことを学んだり、学校や人生での困難な時期を乗り越えようとします。トピックスとしては、問題解決と目標設定、障害の克服、セルフケアとストレスの管理などが含まれます。

社会認識
「私たちはできる」

8. コミュニケーション:良いコミュニケーションとは、他人と効果的に話したり聞いたりすることを意味します。個人間の効果的なコミュニケーションは人間関係を改善します。上手にコミュニケーションをとったり、話を聞いたりすることは、少女が前向きに問題を解決したり、友人関係を改善したり、学校や仕事で成功するのに役立ちます。トピックスには、チームビルディングと他者との協力が含まれます。

9. 創造的な問題解決:創造的な問題解決とは、問題がある時に、解決策を見つけることを意味します。少女は、学校で、友達と、そして家庭で問題を経験する時に、創造的な問題解決のスキルを使うことができます。トピックスには、気候とジェンダーの正義が含まれます。

10. 人間関係の構築:人間関係の構築スキルがあれば、既存の人間関係を維持し、前向きで健康的な新しい友情を築くことができます。少女が健全な人間関係の構築を学ぶことは、自分や新しい友達を大切にし、尊重する方法を学び、コミュニケーションスキルを練習し、共感と自信を築くことになります。トピックスとしては、健全な境界線や信頼関係の構築などが含まれます。

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学校を卒業すると、少女達は次のような多くの重要な質問に直面します。

・大学に行くべきか、専門学校に行くべきか?どのようにして教育を受ける余裕があるのか?
・どんな職業に就くべきか?ビジネスを始めるべきか?
・結婚するべきか?いつ、誰と?子どもは何人欲しいか?
・苦しい時期のために、どうやって予算を立ててお金を貯めるか?
・自分のコミュニティで他の人を助けるにはどうしたらいいか?

ライフスキルを身につけることは、少女がこれらの質問やその他の質問に答える準備をし、自分の選択肢やそれぞれの結果を慎重に検討し、自分の目標を達成するための計画を立てるのに役立ちます。

皆さんも、学生時代にこれらのライフスキルを学んでおけばよかったと思いませんか?

10月29日まで、The Byron Girls Fundが皆様からのご寄付に対し て同額をマッチングしてくれることになりました!  1000円ご寄付をいただくと、同額の1000円マッチングしてくださり、2000円となって2倍のインパクトになって届きます。
女子教育プログラムをひとりが受けるための費用は月に換算すると3000円、1年間で36000円です。少女達の未来を守っていただけると嬉しいです。

ご寄付はこちらから▶  少女が中退しないよう支援する(寄付が2倍に!)

(翻訳ボランティア:ゆうた)

新学期(日本では二学期)が近づく中、米国の「本の砂漠」や子ども向け書籍の多様性の欠如を示す調査の結果を受け、十分な環境がないコミュニティにおける教育に関する不平等への対応が求められる

サンフランシスコ ー2021年8月25日発表のプレスリリースより
(原文はこちら

子どもの識字率向上と女子教育に取り組むグローバルな教育団体であるルーム・トゥ・リードは、調査結果と実行可能性調査の結果を発表しました。これによると、米国では、満足のいく環境に置かれていない子ども達が、子ども用の本、特に子ども達の多様なアイデンティティや経験に沿った本を手に入れることができないような場合、教育の不平等が継続することが明らかになりました。独立機関の研究者によって行われたこの調査は、「ミッシングアウト:米国の子ども達の教育格差は、本の砂漠や児童文学における多様な表現の欠如によって深まっている(MISSING OUT: Education Inequality for U.S. Children Deepened by Book Deserts and Lack of Diverse Representation in Children’s Literature)」と題され、2014年からルーム・トゥ・リードのプログラムに投資している世界的なスキンケアブランドのタッチャ社が調査に資金を提供しました。 

この調査研究では、子どもの識字教育開発と書籍出版に関してルーム・トゥ・リードが持つ独自の専門性を通じて、多様かつリソースを十分に持たないコミュニティのために、教育の平等を実現するための投資が最大の効果を発揮する地理的エリアを明確にしています。

調査結果から、米国は世界で最も裕福な国のひとつであるにもかかわらず、学習機会が平等に与えられていないことが明らかになりました。米国では全体的に人種差別が根強く、その結果、人種に基づいて学校が分かれています。学校の資金は主に地域の固定資産税で賄われているため、生徒一人当たりの支出額は、地理的条件や地域の富や所得のレベルに応じて大きく異なり、制度上の不公平を助長しています。データによると、米国の教育システムで十分なサービスを受けられない人々がいることが確認されており、その中には、黒人、ラテン系、ネイティブアメリカン、白人のコミュニティの子ども達が含まれ、高いレベルの貧困や田舎の環境が学習の大きな障害となっています。里親に引き取られた子どもたちや、移民・難民の子ども達も、教育を受ける機会が少なくなっています。

今回の調査では、最貧地域の子ども達が、読み書きの能力を高め、読書の習慣を身につけ、生涯学習のために必要な本を十分に入手できていないことが明らかになりました。家庭内の本の数は、子どもの読解力の高さに大きく関係していますが、全米の少なくとも半数の家庭には100冊の本が置かれておらず、これらの家庭は「本の砂漠」と言うことができます。「本の砂漠」とは、ユナイト・フォー・リテラシー(Unite for Literacy)という団体が提唱した造語で、子ども達が家庭や地域で読み物を手に入れることが困難な地域を指します。「本の砂漠」は、全米の貧困地域や黒人・ラテン系の家庭で高い割合で見られます。実際、低所得者層の61%の家には子ども用の本がまったくありません。ルーム・トゥ・リードは、収益に関係なく、地元の作家、イラストレーター、出版社、印刷会社と協力して、地域のニーズに合った高品質の本を素早く用意・調達するという専門性を持っているため、低所得者層のコミュニティにおいて、多様で高品質な子ども用の本の不足に取り組むのに最適な組織となっています。

ルーム・トゥ・リードCEOであるギータ・ムラリ博士は、「すべての子どもには、学習と人生の前向きな成果への入り口として、本の恩恵を受ける機会が与えられるべきです」と述べています。「ルーム・トゥ・リードは、3,200冊以上の高品質な児童書を43の言語で提供しており、教育者や家族が教室や家庭でこれらの本を活用できるようにサポートするガイダンスも提供しています。これは子どもたちの読書の習慣を育み、未来のリーダーを育てるための私たちのアプローチの礎となるものです。」

また、調査によると、米国では子どもの本における人種の多様性が著しく欠如しています。黒人、先住民、有色人種(BIPOC/ Black, Indigenous, and People of Color)を題材にした本や、黒人、先住民、有色人種によって作成される本は、子ども用の本全体の中で圧倒的に少数派であり、白人のキャラクターや動物、物を題材にした子どもの本は83.4%、BIPOC以外の人々が出版した子ども用の本は88%にのぼることがわかりました。

ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラム(グローバル)シニアディレクターのクリスタベル・ピントは、「子ども達が自分達の生活が本の内容に反映されていることを見ることは、自分達の経験を確証することであり、また、自分とは異なる人々について書かれている本を読むことは、固定観念に立ち向かうことにつながります」と述べています。「ルーム・トゥ・リードの、書籍出版における広範でグローバルな実績により、何百万人もの子ども達が、本の題材として少ししか登場したり描かれたりしてこなかった多様なキャラクターの物語を読むことができるようになりました」。

今回の調査結果に基づき、ルーム・トゥ・リードは、米国内で最も教育的ニーズの高い地域や人々を対象に、児童書出版における表現の多様性や上がっている意見に重点を置いて活動していきます。ルーム・トゥ・リードは、ルーム・トゥ・リードの専門性が、地域の組織を支援し、システムを強化し、大きなインパクトを与えることができる場所に注力していきます。 

 

ルーム・トゥ・リードとは

ルーム・トゥ・リードは、「子どもの教育が世界を変える」との信念に基づき2000年に設立され、非識字やジェンダー不平等のない世界を目指しています。ルーム・トゥ・リードは、低所得コミュニティの子ども達が識字能力と読書習慣を身につけられるよう、また、少女達が人生の重要な決断を下すためのライフスキルを身につけ、中等教育を修了できるように支援することで、この目標を達成してきています。ルーム・トゥ・リードは、政府やパートナー組織と協力して、大きな規模で子ども達にプラスの成果をもたらしています。ルーム・トゥ・リードはこれまで、20カ国、40,700以上のコミュニティで2,300万人以上の子ども達のために活動をしており、2025年までに4,000万人の子ども達に手を差し伸べることを目指しています。詳細は https://japan.roomtoread.org/ をご覧ください。

(翻訳ボランティア:藤山普美江)