ジェンダー平等の実現は、少年とその育て方にかかっている

Ms.への掲載記事を翻訳しています。Ms.は、女性の権利に焦点を当てた、ジェンダー平等分野における主要なニュースサイトです。(原文はこちら

執筆:ギータ・ムラリ博士(ルーム・トゥ・リードCEO)、ゲイリー・バーカー博士(CEO and co-founder of Promundo-US)

真に公平な世界を築くためには、ジェンダー平等は少年や男性を含むすべての人のためのものであり、すべての人に必要であることを理解せねばならない

▲調査によると、少年が友達と複雑な感情を共有する際に最も恐れているのは、それが自分に対して利用されることだそうです。それでも、多くの少年は、関わり合い、尊重し合い、感情的に表現する方法を見つけたいと思っています。(Allison Shelley / The Verbatim Agency for EDUimages)

国際女性デーは、世界がジェンダー平等の達成をお祝いする特別な機会です。少女や女性にとって大きな進歩が見られる一方で、まだまだ道のりは長いです。

真に公平な世界を築くためには、ジェンダーの平等は少年や男性を含むすべての人のためのものであり、すべての人に必要であることを理解する必要があります。有害なジェンダー規範に対抗することは、他者のためだけではなく、自分自身の利益のためでもあるという理解を持って育てば、少年達は自分らしさを発揮できるように成長することでしょう。そして、少年や男性が平等のために立ち上がるために必要な役割を理解できれば、すべての人が自由に自分の可能性を追求できる世界を作るために貢献できるでしょう。

ジェンダー平等は少年期から

ジェンダー規範とは、ある社会で女性や男性が準拠することを期待される基準のことで、服装から行動まであらゆることが規定されています。調査によると、少年は少女よりもこの規範に厳格に従うことが分かっています。家族、学校、スポーツ、テレビ、社会からの影響を受け、少年は幼稚園に入る前から「男の子らしく」あるようプレッシャーをかけられています。

米国プロムンド社の最新調査によると、少年が複雑な感情を友人と共有する際に最も恐れていることは、それが自分に対して利用されることです。10代の少年の5人に2人は、 社会は彼らが怒ると暴力的になることを期待していると言い、5人に3人は、強くなければならないというプレッシャーを感じていると言っています。世界的に見ても、思春期の少年の殺人率は思春期の少女の4倍、有害なアルコール摂取の可能性は3倍と、少年の健康はこうした要因によって危険にさらされています。

ステレオタイプで有害なジェンダー規範を順守することは、少年少女の両方に害を及ぼします。6歳の少年は、仲間に勧められると教室で少女を困らせることが見られました。年長のグループでは、62%の少年が、他の少年が少なくとも週に一度、少女について性的なコメントやジョークを言うのを聞いたと報告しています。

少年期は、破壊的で自滅的な行動を防ぐための重要な時期です。少年が固定観念から抜け出し、文化的期待を制限することができれば、自分の社会的、感情的、精神的健康に投資し、より強い自己意識を育み、今度は他人を思いやる可能性が高くなるのです。

多くの少年達がこうした有害な規範に抵抗し、積極的に関わり、尊重し、感情的に表現する方法を見つけたいと思っています。実際、少年達に「男であることの意味」を尋ねると、ほとんどの場合、思いやりがある、尊敬できる、他人のために立ち上がる、といった肯定的な答えが返ってきます。このことから、健全な男らしさという社会の共通の目標に少年達を参加させるための私達の活動は、少年達が自分達の望む本物の人間、つながりを持った人間になれるよう支援することであるということを示しています。

成功のためのスキル

今こそ、子ども達が成功し、充実した人生を送るために必要なスキルを提供する時です。少年に関しては、男らしさのポジティブな特徴を受け入れ、有害なものを分解する勇気を持つためのツールと自信を持たせることが重要なのです。変化を見るために、変化を起こさなければなりません。それは、すべての子ども達が幼い頃からこの問題に関わることから始まります。

ルーム・トゥ・リードと米国プロムンド社は、このほど共同で、少年のためのライフスキルを中心としたカリキュラムをデザインしました。このプログラムは、公立学校の生徒に提供され、教師の支援を受けながら、少年達が男らしさについての有害な考えについて話し合い、理解し、疑問を持つ機会を促進し、その代わりに前向きな習慣を身につけることを目的としています。

このプログラムでは、「ジェンダーと社会的期待」、「自分の感情の理解」、「暴力の種類」、「権力」などについて毎週セッションを行い、学校現場でも新しいカリキュラムが組まれています。生徒達は、家事の責任を公平に果たすための実行可能な解決策を考え、怒った時のポジティブな反応方法を説明し、困った時に相談できる人を特定し、性差別やジェンダー不平等を助長する規範や行動に挑戦するよう求められています。

カンボジアのルーム・トゥ・リードのファシリテーターは、指導を始めてわずか数週間で、10代の少年がよりオープンで積極的なコミュニケーションをとり、クラスメートにより敬意を払い、少女とより頻繁に共有するようになったことを観察しました。

スリランカでは、思春期、セクシュアリティ、健康についてのグループセッションで、6年生の少年がクラスメートの少女に言葉や性的な嫌がらせをしていることを告白しました。ルーム・トゥ・リードのファシリテーターとの会話やメンタリングを通じて、その少年は、性的な表現を頻繁に目にし、それが他人に対する感情や行動に悪影響を及ぼしていることを認めました。この認識を得てから、この少年は有害なコンテンツの消費を控え、教育に投資し、周囲の人々を尊重することを約束するようになりました。

ジェンダー平等とライフスキルは学ぶことができます。ルーム・トゥ・リードは、過去22年間で320万人以上の思春期の少女を支援する中で、それを身をもって体験してきました。調査によると、ルーム・トゥ・リードのライフスキルとジェンダー平等のカリキュラムによって、インドの10代の少女達は、わずか2年の間に、誰といつ結婚するかを決める能力が40%、目標を明確にする能力が20%、親と効果的にコミュニケーションする能力が35%向上したことが分かっています。すべての若者が同じ機会を得られるようにしたいと考えています。

未来への希望

パンデミックは、ジェンダー平等に向けて進んできた数十年の進歩を覆す恐れがあり、特に女性や少女が早婚、人身売買、男性からの暴力、日常的な差別といった新たなリスクに直面し、その生活に影響を及ぼしています。彼女達は一人でこれらの課題に直面するべきではありません。

今年の国際女性デーでは、両親、保護者、教育者、学校制度に対し、子ども達への教え方や接し方を見直すことで、ジェンダー平等を優先させるよう呼びかけたいと思います。これからの世代が自分達の未来を切り開き、男らしさ、女らしさを含む制限された社会規範を破ることを恐れないようにすることは、私達の共通の責任です。彼らにふさわしいスキルと機会が提供されれば、若者達は世界を変えていくことでしょう。

(翻訳ボランティア:YUTA)