現地報告:スリランカのニメシカのストーリー

Copy with Calloutポロンナルワの新しく開発された町や道路の向こうには、30年間続いた残忍な内戦の痕跡が残る村があります。この地域は極度の貧困に加えて、スリランカで最も乾燥した気候に悩まされています。村に入ると、過酷な生活環境が目の前に広がります。

ルーム・トゥ・リード女子教育プログラムの参加者である13歳のニメシカは、ここを「家」と呼んでいます。乾燥した気候のため、ニメシカの家族は近所の人にお金を払って毎日水をもらい、お風呂に入るためだけに歩いて近くの貯水槽まで行かなければなりません。頻繁に野生の象が暴れまわるこの状況では、裏庭で作物を栽培できません。

貧困がニメシカの教育を妨げていましたが、もうひとつの理由がありました。ニメシカの家族はスリランカの北東部にある先住民族の出身で、方言や生活スタイルは他の地域とは異なります。差別や経済的な問題から、ニメシカは社会やクラスメートから遠ざかっていました。

「誰も話しかけてくれないので、学校に行くのが嫌でした」
ニメシカ(スリランカ女子教育プログラム参加者)
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現地報告:ネパールのベストリーダー賞2020


9月1日の第16回ネパール国立図書館デーを記念して、スギスマ・カデルが、教育科学情報技術省から「ネパールのベストリーダー賞」を受賞しました。スギスマは小学3年生(9歳)で、ネパールのヌワコット地区にあるバルデヴィ・アダルブット小学校に通っていて、ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムに参加しています。彼女が通う学校の図書室はルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムの支援を受けています。

スギスマは、図書室で296冊の本の貸出記録を更新し、今回の受賞に至りました。スギスマは、ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムを通じて、読書能力を高め、強化してきました。学校の図書室には、子ども達の母国語で書かれた質の高い児童書が揃っています。識字教育プログラムのファシリテーターは、生徒達に音読だけでなく、個々の読書に参加することを勧めています。図書室の本を借りて読むことで、スギスマの情熱はさらに深まりました。今では、自分で本を読むだけでなく、両親や弟妹に読み聞かせをすることも楽しんでいます。

ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムについての詳細はこちらをクリックしてください。皆様のご支援により、スギスマのような子ども達が生涯にわたって自立した読書家になるために必要なサポートができます。

【世代的な大惨事】2,400万人の子どもたちがコロナ後に学校に戻ることはないと国連が警告

Room to Read Myanmar
ミャンマー・ヤンゴンの学校ではPPE(個人防護具)を着用した高校生が授業を受けている クレジット: LYNN BO BO/EPA-EFE/SHUTTERSTOCK

[English]

【世代的な大惨事】2,400万人の子どもたちがコロナ後に学校に戻ることはないと国連が警告
~学校閉鎖は、計り知れない人間の潜在能力が失われ、何十年もの進歩が損なわれ、不平等が一段と深刻になりかねない

2020年8月4日
GLOBAL HEALTH SECURITY 記者  Sarah Newey

The Telegraph に掲載された記事を紹介します。

原文はこちらです。
A ‘generational catastrophe’: 24 million children will never return to school post-Covid, UN warns

国連によると、パンデミックは「世代的な大惨事」を引き起こし、今年は約160カ国で10億人以上の子どもたちが学校から遠ざかっていると言う。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による学校閉鎖は、「計り知れない人間の潜在能力が失われ、何十年もの進歩が損なわれ、不平等が一段と深刻になりかねない世代的な大惨事に直面している」と警告した。

コロナ流行以前から、すでに「学習の危機」に直面しており、世界では学校に通えない子どもたちが2億5000万人以上にのぼっており、途上国の中等学校では、「基本的なスキル」を身に着けて卒業をする生徒は4分の1程度にとどまっている状態だった、と補足している。

しかし、現在の危機は、世界の教育システムに歴史上最も深刻な混乱を引き起こしており、約4000万人の子どもたちが就学前教育を受けられていない、とグテーレス氏は述べている。

国連教育機関であるユネスコとパートナー組織によると、この状況は今後も続くという。パンデミックの経済的影響により、180カ国で2,400万人近くの子どもたちが、来年、就学前から大学レベルまでの教育を完全に中途退学する危険にさらされている。

グテーレス氏は、教育危機に取り組むためのユネスコの最新の政策報告書の発表の際のビデオ演説で、「私たちは、世界の子どもたちと若者にとって決定的な瞬間を迎えています」と述べた。

Room to Read India
インド、マハラシュトラ州のダンダル村で、事前に録音された授業と大音量のスピーカーを使って学ぶ生徒たち CREDIT: REUTERS/Prashant Waydande

「政府やパートナーが今下す決断は、何億人もの若者、そしてこれから何十年も先の国々の発展の見通しに永続的な影響を与えることになるでしょう」

4つの主要分野での行動を呼びかけた26ページの政策文書は、約100カ国が学校の再開日がまだ決まっていないことに言及している。グテーレス氏は、これは世界中の政府にとって「最優先事項」であるべきだと訴えた。

世界的な教育機関ルーム・トゥ・リードのチーフ・プログラム・オフィサーであるヘザー・シンプソン氏は、新しい政策文書についてコメントし、この報告書は「低所得層のコミュニティへの教育への投資に対する緊急の呼びかけでなければならない」と述べている。

「パンデミックは必然的に低所得層のコミュニティに最も大きな影響を与えます。私たちは、子どもたちの教育への希望が、家庭でのデジタルリソースや書籍へのアクセスの欠如、さらには社会的不平等や耐え難い経済的圧力との戦いによって打ち砕かれているのを目の当たりにしています」

アフリカとアジアの低所得コミュニティに住む、ルーム・トゥ・リードが支援する少女の半数が、二度と学校に戻らないリスクを抱えていることを示唆する数字がある。

これには前例がある。シエラレオネの2014年から2016年のエボラ出血熱流行の間、学校は感染の広がりを止めるために9ヶ月間閉鎖された。

この間、子どもたちが学校を離れ、搾取されやすい状況にあったため、10代の妊娠は60%以上増加し、それまで学校に通っていた1万1,000人の少女が妊娠した。エボラ出血熱よりも多くの人が出産の合併症で死亡し、生き残った人の多くは学校に戻ることができなかったことが研究で明らかになった。

ユネスコの教育担当事務局長補佐のステファニア・ジャンニーニ氏はまた、「学校閉鎖期間が長期化すればするほど、最も貧しく、最も弱い立場にある子どもたちへの影響はより悲惨なものになる」と懸念を示した。ジャンニーニ氏は、危機は教育へのアクセスにおけるデジタル、社会的、ジェンダーの不平等を増幅させていると述べた。

ジャンニーニ氏は、ユネスコは、教育をパンデミックからの復興課題の最前線に据えるために、世界の指導者や国際社会からのコミットメントを確保するために、秋にハイレベルの仮想会議を開催する予定であると付け加えた。

グテーレス氏によると、パンデミックの前にも、低・中所得国は年間1.5兆ドルの教育資金のギャップに直面しており、コロナ危機のために世界的に30%増加する可能性があるとのこと。

彼は、政府がポストコロナの時代に資金を配分するように、教育のための資金調達を増やすことが優先されなければならない、と訴えた。

【少女たちが学校に戻らないリスク】「すでに結婚した少女も」コロナ危機の中、アフリカとアジアでは少女たちが学校に戻らないリスクにさらされています

Room to Read INDEPENDENT
24,000人の少女を対象に実施した調査では、家族は娘を早く嫁がせたり、学校が安全に再開できる状況になっても学校に戻るよりも仕事をさせることを優先するだろうと警告しています (ルーム・トゥ・リード)

[English]

2020年7月9日
インディペンデント紙  マヤ・オッペンハイム特派員

インディペンデント紙に掲載された記事を紹介します。原文はこちらです。
‘Some girls have already married early’: Young women at risk of never going back to school in Africa and Asia amid coronavirus crisis

新型コロナウイルス感染症(以下:COVID-19)拡大による緊急事態をきっかけに、アフリカとアジアでは、少女の半分が学校に戻らないリスクにさらされているという厄介な報告がされています。

24,000人の少女を対象に実施したこの調査は、学校が安全に再開できたら、家族は娘の教育よりも、結婚や児童労働を優先するだろうと警告しています。

低所得国の子どもたちの識字教育をサポートしているルーム・トゥ・リードは、10代の少女たちがCOVID-19危機の間にすでに学校を中退しており、これは経済的苦難の直接的な結果である可能性が高いと述べています。

インデペンデント紙は、今回の研究について独占的に取材を行いました。COVID-19危機によって経済的に不安定な状況は、お金を稼がねばならないというプレッシャーを増大させ、少女たちは児童結婚や性的搾取、その他の搾取の犠牲となり得ます。

経済的なプレッシャーは、少女が学校に行く代わりに料理、掃除、親戚の世話をするために家にいるように仕向けられることもある、と研究者たちは述べています。

少女のほぼ半数が、今回の公衆衛生上の緊急事態によって収入を失ったと答え、10人に1人の少女が、危機の間に学校が閉鎖されてから勉強をしなくなったと答え、学校に戻れないことに不安を感じている、と答えています。

調査対象となったコミュニティの家族の収入は1日1米ドル(約100円)未満であるため、収入の減少は壊滅的な影響を及ぼす可能性があります。

ルーム・トゥ・リードのヘザー・シンプソン氏はこう述べています。
「経済的苦難は、長い間、少女が教育を受けられない一番の理由でした。すでに何人かの少女が結婚していると聞いています。経済的困難は、家族が娘の早期結婚を選択する主な原因であるため、これらの結果は、緊急の行動が必要であることを国際社会に警告する信号として役立つはずです。私たちは、教育の力によって自分自身と地域社会のためにより良い生活を送ることを夢見ている世界で最も貧しい地域の少女たちを見捨てることはできません」
シンプソン氏は、近年、低所得コミュニティにおける少女の支援には実質的な進展が見られているものの、ジェンダー平等の達成に向けた進展は、世界的な公衆衛生危機によって「数十年後戻りする可能性がある」と述べました。

ルーム・トゥ・リードが支援を行っているスリランカの15歳の少女ヴァルニは、アルコール依存症の父親が暴力を振るっており、安全とは言えない家庭環境で生活していたため、ロックダウン中に叔母の家に引っ越さなければなりませんでした。10代の少女は今では勉強を再開しており、ロックダウンが緩和されると学校に戻る可能性が高いと言われています。

ネパールに住んでいる少女ウルミラは、ロックダウンが始まって以来、家族が彼女に学校を中退するよう迫ったと言いました。オンライン授業を受けるために、家族が持っている唯一のスマートフォンを使用していましたが、母親と弟は、教育をあきらめるべきと言ったのです。

世界中で、ほとんどの子どもたちの学ぶ機会は中断されています。研究者たちは、低所得層 のコミュニティにいる何百万人もの子どもたちにとって、COVID-19拡大の影響による学校閉鎖は、中断ではなく「消失」 を意味すると指摘しています。

「読書の消失、学びの消失、そして自らの人生や所属するコミ ュニティに明るい変化をもたらすという夢の消失」と補足しています。

この報告書は、世界的なパンデミックの間に女子教育に関する最大規模の調査です。インタビューを受けた少女たちの年齢は15歳から19歳で、インドからネパール、スリランカ、ベトナム、ラオス、カンボジア、タンザニア、バングラデシュまでの8カ国にまたがる低所得コミュニティに住んでいます。

報告書によると、「家族がかつてないレベルのストレスに直面すると、家庭内の対立や 性的差別による暴力のリスクも高まり、少女の自信や幸福感、人生の重要な決断を交渉する能力に悪影響を及ぼす」とのことです。

国連人口基金(UNFPA)が4月末に実施した研究では、コロナウイルスの発生は、子どもの結婚の慣行を抑制するための措置を停滞させる可能性があり、次の10年間で1300万人の子どもの結婚が増える可能性があると警告しています。毎日2万人 以上の未成年の少女が結婚していることも2017 年Save the Childrenの調査で判明しています。

ケイヤのストーリー -バングラデシュ    コックスバザールの女子教育プログラム生

Room to Read Keya
[English]

ケイヤのストーリー -バングラデシュ コックスバザールの
女子教育プログラム生

2020年5月18日
(原文はこちらです:https://www.roomtoread.org/the-latest/comic-relief-supporting-room-to-read-in-bangladesh/

 

ケイヤは、バングラデシュ南部の沿岸地域コックスバザールに住む少女で、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムの参加者です。2017年、この地域は大規模な難民流入があり、ミャンマーから100万人近くのロヒンギャ難民を受け入れました。人口の急増は経済的、社会的緊張をもたらしていますが、コックスバザールの貧困と差別は、それ以前から長く続いているものです。教育はキャパシティを超え、経済的に困窮している家庭が多く、男女差別が深刻化しています。

その結果、この地域では社会や家族からの圧力により、児童婚や早期妊娠が多発しており、少女達は学校に通えなくなっています。ケイヤにとって、男女差別から逃れることはほぼ不可能でした。小学7年生のケイヤは、長年にわたって嫌がらせを受けていたのです。男性達からは、頻繁に路上で威嚇され、暴言を吐かれてきました。状況は、ある夜、彼女の部屋の窓を壊し、物理的に嫌がらせをするまでエスカレートしました。彼女の安全が脅かされただけでなく、次世代の少女達を助けるために政治家になる、という夢を実現するための教育が中断されてしまったのです。ルーム・トゥ・リードのライフスキルの授業を学ぶことは、ケイヤや他の少女達にとってとても重要です。ケイヤが直面した課題はこれだけではありません。 生理不順に悩まされていたのですが、学校に行かないよう圧力をかけられてしまいました。バングラデシュの特定のコミュニティでは、月経はタブーであり、その時期は少女達は家から出ることが許されていません。ある時、彼女のコミュニティは、医学を信じるのではなく、彼女を助けてくれる「地元の魔法」を求めました。ありがたいことに、コミックリリーフの「レッドノーズデー(*)」のサポートのおかげで、ケイヤは今、政治家になって地域社会をより良く変えたいという夢を叶えようとしています。
*「レッズノーズデー(赤鼻の日)」とは、コミック・リリーフが主催する英国発祥のチャリティイベントで、セレブリティやマスメディアのサポートを得て、笑いの力で子ども達を貧困から救うチャリティ活動。今年は5月26日に開催され、米NBCでスペシャル番組が放送されました。

昨年、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムに参加してから、ソーシャルモビライザーが、様々な課題を乗り越えるためにサポートしてくれました。ソーシャルモビライザーとは、プログラムに参加している女子学生達を指導し、サポートを行う地元の女性メンター達のことです。Keyaや彼女のような少女達が遅れを取らないよう、ソーシャルモビライザーは、女の子が学校に通い続けることの利点と、一貫して出席することの重要性を地域社会に説得しました。ソーシャルモビライザーの支援を受けて、ケイヤのコミュニティは、女の子の安全と教育促進の重要性を理解しました。また、ケイヤは学校で成功し、直面していた課題を克服するための鍵となるスキルを学びました。今では毎日学校に通っています。

今では、ケイヤは、人生を変える力を持つ女子教育プログラムによって新たな道を歩んでいます。「私はここで、独立、自給自足、自立の方法を学びました。ハラスメントを避ける方法と、ハラスメントに声を上げる方法など、すべてのことをライフスキル教育のセッションで学びました。」


「独立、自給自足、自立の方法を学びました。ハラスメントを避ける方法と、ハラスメントに声を上げる方法など、すべてのことをライフスキル教育のセッションで学びました。」

Room to Read Keya