TICAD8開催に寄せて~ルーム・トゥ・リード南アフリカ活動紹介~

TICAD8開催に寄せて

 2022827日から28日にかけ、TICADアフリカ開発会議)がチュニジアで開催されました。日本がアフリカの国々と開くこの国際会議、1993年の開始以来、今回で第8回目となりました。アフリカ大陸は日本の80倍の面積を持ち、平均年齢はなんと18.7(2022)2050年には4人に1人がアフリカの人々になると予想されています。世界中から多くの投資が集まり続けており、国連の統計では20年間で投資額は6倍以上に増えています。一方、多くのアフリカ諸国で貧富や教育格差が依然として残ります。ルーム・トゥ・リードでは2006年から南アフリカ共和国を皮切りに、アフリカでの活動を開始し、子ども達やコミュニティへプログラムを提供してまいりました。

 南アフリカの現状

 南アフリカはアフリカで2番目に大きな経済規模ですが、世界銀行の報告によると、全体的な失業率は27%で高止まりし、若者の失業率に至っては55%とさらに高くなっています。また、裕福な上位10パーセントが国内の純資産の71パーセントを保有しており、依然として世界で最も不平等率の高い国の1つでもあります(世界銀行より)。1994年にアパルトヘイトが終了してから20年以上が経過し、社会的にも多くの改善が見られる一方、依然として世代間での階層移動は低く、不平等は世代から世代へと受け継がれている現実があります。

 豊かな言語を通じて教育を受けられるように

 合計11の公用語を持ち、少なくとも35の先住民言語が存在する南アフリカで、ルーム・トゥ・リードは識字指導を行う教師の養成や図書室を設置し、数多くある公用語による読書用教材のニーズに応え、活動をしてきました。そして「すべての子どものための教育結果」(Results in Education for All Children: REACH)技術支援プロジェクトを通じて、南アフリカの変革に貢献してきました。

下記に、南アフリカでの活動の成果を一部ご報告いたします。

ルーム・トゥ・リードが設置した図書館内部。南アフリカの学校の93%は図書館がなく、識字教育が進まない状況にある

・東ケープ、リンポポ、ムプマランガ、ハウテン省でプログラムモデルを実施し、南アフリカの公用語全11言語による読書用教材を出版。

 2017年から2019年にかけて世界銀行と提携し、リンポポ、ムプマランガ、クワズールナタールの各地域で高品質の先住民言語の絵本の提供を拡大。120冊の童話の原文を6か国語(英語、ズールー語、ヴェンダ語、スワジ語、ツォンガ語、北ソト語)で発行し、46,000部以上を公立学校に配布し、16,000部以上を一般に配布。

・地元の出版社にベストプラクティスのトレーニングを行い、質の高い童話を作成するためのガイドラインを公開。今後も現地語の童話が作られるよう支援。

・識字教育プログラムは政府の教育政策や優先課題に沿ったものであり、今までに支援を行った学校は469校、教師数は1,021人、学生数は362,180人以上。

南アフリカでの活動。現地語で書かれた特大絵本をもとに、先生とクラスメートとともに読書に親しむ

南アフリカをはじめとするアフリカ諸国の動向を世界中が注目する今、歴史的に資源が不足している同国の教育環境の中で、何千人もの子ども達が様々な現地語で読み書きをし、将来を切り開く力を培えるよう、活動を続けてまいります。

南アフリカの現況や活動について、詳しくはこちらをご覧ください!

クレディ・スイスとタイム社主催「2022 Women of Impact」でルーム・トゥ・リードのCEOが表彰されました!

(原文はこちら

ルーム・トゥ・リードのCEOギータ・ムラーリ博士は、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの会合で行われた「2022 Women of Impact Dinner」で表彰されました。クレディ・スイスがタイム誌と協力して今年開催したこのイベントは、世界を変えようとしている女性を称え、そのストーリーを共有する場を提供するものです。

イベントで、ギータはこのようにスピーチをしました。
「教育は、私の母が大切にしていた価値観のひとつです。母にとって、教育は自立と同じ意味でした。インドの貧しい家庭の7人娘の長女だった母は、13歳で結婚することを期待され、圧力をかけられ、幼い花嫁となる運命にありました。しかし、母は学ぶことが大好きな優秀な生徒でしたので、勉強をやめることを拒みました。その代わり、彼女は陸軍に入隊し、看護師としての訓練を受けた後、米国に移住し、博士号を取得し、大好きなキャリアを築き上げました。私の家系では、幼い花嫁からCEOになるまでに一世代かかっています」

クレディ・スイスとタイム誌は、ギータの他に、南アフリカの実業家で慈善家のプレシャス・モロイ-モツェペ博士と、性暴力被害者を擁護する米国の連邦法の作成と成立に重要な役割を果たした社会起業家のアマンダ・グエンを表彰しました。

Women of Impact Dinnerは、クレディ・スイスがTina Brown Live MediaとWomen in the World USAの創設者兼CEOであるティナ・ブラウンと共同で10年前に創設したもので、より良い方向への変化を推進しようと決意した女性にフォーカスしています。これまで、メリンダ・フレンチ・ゲイツ、ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ、アマル・クルーニー、ナディア・ムラド、ルース・デビッドソン、ミシェル・バチェレ、クリスタリナ・ジョージエバなど、素晴らしい女性リーダーたちを表彰しています。

クレディ・スイスの最高技術・業務責任者であるジョアン・ハンナフォードは、「受賞者の方々は、年齢、立場、経歴、アプローチなど様々ですが、共通しているのは、私たちにもっと良いことをしよう、変化を起こそうという気持ちを与えてくれることです」と歓迎の挨拶を述べました。

認定NPO法人の有効期間が更新されました!

このたび、ルーム・トゥ・リード・ジャパンは認定の「更新」を申請し、無事認定されましたので、ご報告をさせていただきます!

ルーム・トゥ・リード・ジャパンは2017年に千葉県より認定NPO法人資格を取得しました。認定の有効期間は5年であるため、昨年の11月に更新の申請をし、12月の千葉県からの実地調査などを経て、この度、2022年6月6 日付にて所轄庁の千葉県より認定の更新がされました。

認定の有効期間は以下になります。

認定の有効期間 2022年2月10日~2027年2月9日

認定NPO法人とは、運営組織・事業活動が適正で公益の増進に寄与する団体として、一定の基準を満たしていると所轄庁の認定をうけたNPO法人のことを指します。全国にNPO法人は50,742団体ありますが、そのうち認定NPO法人として認められているのは約2.4%、わずか1,241団体です(2022年度4月末現在)。無事に更新できることができて、ほっとしております。

認定NPO法人へのご寄付は税制上の優遇措置を受けることができます。

ルーム・トゥ・リード・ジャパンへのご寄付は確定申告をすることにより、寄付金控除の対象となります寄付金控除についての詳細はこちら

今後ともどうぞご指導のほど、よろしくお願いします。

認定NPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパン
事務局長 松丸佳穂

ルーム・トゥ・リード 2021 年活動報告 (Year in Review)―800万人の子ども達を支援することができました!

2021年の活動報告とサポーターの皆様への感謝

2021年は、コロナ禍にも関わらず、革新的な活動に満ちた年であり、2021年だけで新たに800万人以上の子ども達に恩恵を与えることができたことをとても嬉しく思います。これは新記録です。

新型コロナウィルス感染症(以下:COVID-19)は、あらゆる世代の子ども達に教育の障害をもたらし続けているため、ルーム・トゥ・リードの活動はかつてないほど重要になっています。2021年の終わりに、ユネスコ、ユニセフ、世界銀行による共同報告書が発表され、世界の教育の現状が明らかにされ、教育の回復への道筋が示されました。この報告書では、証拠に基づく戦略、革新的な介入、社会情緒的サポートなど、回復プロセスに不可欠な一連の構成要素が強調されています。そして、これらはすべて、ルーム・トゥ・リードのアプローチの柱となっているものです。

私達は、このような取り組みをリードする十分な資質を備えており、子ども達が自ら学び、自らの未来を切り開くために必要なスキルを身につけられるよう、これまで以上に力を注いでいきたいと考えています。

皆様のような寛大で献身的な支援者のおかげで、私達はすでに、より多くの地域で、より多くの子ども達に、より革新的な方法で利益をもたらすための基礎を築いています。ルーム・トゥ・リードへの皆様の貢献は、希望が視界から消えてなくならないということ、そして、教育が持続することでレジリエンス(回復力)が高まることを証明するものです。

2021年の活動報告書(Year in Review)をお届けできることを嬉しく思います。いつもルーム・トゥ・リードの活動によりそってくださっている皆様のおかげで、世界中の何百万人もの子ども達に貢献できることに心より感謝いたします。 皆様との揺るぎないパートナーシップによって、 2022年も記録的な年にしていきたいと思っております。

2021年の活動報告(Year in Review)を読む

ジェンダー平等の実現は、少年とその育て方にかかっている

Ms.への掲載記事を翻訳しています。Ms.は、女性の権利に焦点を当てた、ジェンダー平等分野における主要なニュースサイトです。(原文はこちら

執筆:ギータ・ムラリ博士(ルーム・トゥ・リードCEO)、ゲイリー・バーカー博士(CEO and co-founder of Promundo-US)

真に公平な世界を築くためには、ジェンダー平等は少年や男性を含むすべての人のためのものであり、すべての人に必要であることを理解せねばならない

▲調査によると、少年が友達と複雑な感情を共有する際に最も恐れているのは、それが自分に対して利用されることだそうです。それでも、多くの少年は、関わり合い、尊重し合い、感情的に表現する方法を見つけたいと思っています。(Allison Shelley / The Verbatim Agency for EDUimages)

国際女性デーは、世界がジェンダー平等の達成をお祝いする特別な機会です。少女や女性にとって大きな進歩が見られる一方で、まだまだ道のりは長いです。

真に公平な世界を築くためには、ジェンダーの平等は少年や男性を含むすべての人のためのものであり、すべての人に必要であることを理解する必要があります。有害なジェンダー規範に対抗することは、他者のためだけではなく、自分自身の利益のためでもあるという理解を持って育てば、少年達は自分らしさを発揮できるように成長することでしょう。そして、少年や男性が平等のために立ち上がるために必要な役割を理解できれば、すべての人が自由に自分の可能性を追求できる世界を作るために貢献できるでしょう。

ジェンダー平等は少年期から

ジェンダー規範とは、ある社会で女性や男性が準拠することを期待される基準のことで、服装から行動まであらゆることが規定されています。調査によると、少年は少女よりもこの規範に厳格に従うことが分かっています。家族、学校、スポーツ、テレビ、社会からの影響を受け、少年は幼稚園に入る前から「男の子らしく」あるようプレッシャーをかけられています。

米国プロムンド社の最新調査によると、少年が複雑な感情を友人と共有する際に最も恐れていることは、それが自分に対して利用されることです。10代の少年の5人に2人は、 社会は彼らが怒ると暴力的になることを期待していると言い、5人に3人は、強くなければならないというプレッシャーを感じていると言っています。世界的に見ても、思春期の少年の殺人率は思春期の少女の4倍、有害なアルコール摂取の可能性は3倍と、少年の健康はこうした要因によって危険にさらされています。

ステレオタイプで有害なジェンダー規範を順守することは、少年少女の両方に害を及ぼします。6歳の少年は、仲間に勧められると教室で少女を困らせることが見られました。年長のグループでは、62%の少年が、他の少年が少なくとも週に一度、少女について性的なコメントやジョークを言うのを聞いたと報告しています。

少年期は、破壊的で自滅的な行動を防ぐための重要な時期です。少年が固定観念から抜け出し、文化的期待を制限することができれば、自分の社会的、感情的、精神的健康に投資し、より強い自己意識を育み、今度は他人を思いやる可能性が高くなるのです。

多くの少年達がこうした有害な規範に抵抗し、積極的に関わり、尊重し、感情的に表現する方法を見つけたいと思っています。実際、少年達に「男であることの意味」を尋ねると、ほとんどの場合、思いやりがある、尊敬できる、他人のために立ち上がる、といった肯定的な答えが返ってきます。このことから、健全な男らしさという社会の共通の目標に少年達を参加させるための私達の活動は、少年達が自分達の望む本物の人間、つながりを持った人間になれるよう支援することであるということを示しています。

成功のためのスキル

今こそ、子ども達が成功し、充実した人生を送るために必要なスキルを提供する時です。少年に関しては、男らしさのポジティブな特徴を受け入れ、有害なものを分解する勇気を持つためのツールと自信を持たせることが重要なのです。変化を見るために、変化を起こさなければなりません。それは、すべての子ども達が幼い頃からこの問題に関わることから始まります。

ルーム・トゥ・リードと米国プロムンド社は、このほど共同で、少年のためのライフスキルを中心としたカリキュラムをデザインしました。このプログラムは、公立学校の生徒に提供され、教師の支援を受けながら、少年達が男らしさについての有害な考えについて話し合い、理解し、疑問を持つ機会を促進し、その代わりに前向きな習慣を身につけることを目的としています。

このプログラムでは、「ジェンダーと社会的期待」、「自分の感情の理解」、「暴力の種類」、「権力」などについて毎週セッションを行い、学校現場でも新しいカリキュラムが組まれています。生徒達は、家事の責任を公平に果たすための実行可能な解決策を考え、怒った時のポジティブな反応方法を説明し、困った時に相談できる人を特定し、性差別やジェンダー不平等を助長する規範や行動に挑戦するよう求められています。

カンボジアのルーム・トゥ・リードのファシリテーターは、指導を始めてわずか数週間で、10代の少年がよりオープンで積極的なコミュニケーションをとり、クラスメートにより敬意を払い、少女とより頻繁に共有するようになったことを観察しました。

スリランカでは、思春期、セクシュアリティ、健康についてのグループセッションで、6年生の少年がクラスメートの少女に言葉や性的な嫌がらせをしていることを告白しました。ルーム・トゥ・リードのファシリテーターとの会話やメンタリングを通じて、その少年は、性的な表現を頻繁に目にし、それが他人に対する感情や行動に悪影響を及ぼしていることを認めました。この認識を得てから、この少年は有害なコンテンツの消費を控え、教育に投資し、周囲の人々を尊重することを約束するようになりました。

ジェンダー平等とライフスキルは学ぶことができます。ルーム・トゥ・リードは、過去22年間で320万人以上の思春期の少女を支援する中で、それを身をもって体験してきました。調査によると、ルーム・トゥ・リードのライフスキルとジェンダー平等のカリキュラムによって、インドの10代の少女達は、わずか2年の間に、誰といつ結婚するかを決める能力が40%、目標を明確にする能力が20%、親と効果的にコミュニケーションする能力が35%向上したことが分かっています。すべての若者が同じ機会を得られるようにしたいと考えています。

未来への希望

パンデミックは、ジェンダー平等に向けて進んできた数十年の進歩を覆す恐れがあり、特に女性や少女が早婚、人身売買、男性からの暴力、日常的な差別といった新たなリスクに直面し、その生活に影響を及ぼしています。彼女達は一人でこれらの課題に直面するべきではありません。

今年の国際女性デーでは、両親、保護者、教育者、学校制度に対し、子ども達への教え方や接し方を見直すことで、ジェンダー平等を優先させるよう呼びかけたいと思います。これからの世代が自分達の未来を切り開き、男らしさ、女らしさを含む制限された社会規範を破ることを恐れないようにすることは、私達の共通の責任です。彼らにふさわしいスキルと機会が提供されれば、若者達は世界を変えていくことでしょう。

(翻訳ボランティア:YUTA)