バングラデシュから現地報告:ニシタ(女子教育プログラム参加者)

(原文はこちら

NPO法人コミック・リリーフUSのキャンペーン「レッド・ノーズ・デイ」で集められた資金による女子教育プログラムを受講している少女からのお話です。

ニシタは、バングラデシュのコックスバザール市の中心部から約16キロ離れた地域に住んでいます。彼女は2020年からルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムに参加しています。COVID-19による学校閉鎖の間、ニシタは、ソーシャルモビライザーや教師、両親の助けを借りて、自宅で教育を続けるためにあらゆる努力をしてきました。ルーム・トゥ・リードは、パンデミックの期間中、バングラデシュの地方政府および国家政府と協力し、国営テレビ局を通じて教育番組やライフスキルのレッスンを提供しました。この活動は、「レッド・ノーズ・デイ」の支援なしには実現しなかったでしょう。さらに、ニシタはソーシャルモビライザーとリモートで個別もしくはグループでの通話を通じてライフスキルのレッスンを継続するよう努力をしました。 

2021年9月、ニシタは約1年半ぶりに、休校を経て教室に戻れることに感激していました。彼女は、友達を作り、実際に教室で学習することが久々にできたことを興奮気味に話してくれました。しかし、通学途中にセクハラ行為を受け、家から出るのが怖くなってしまったことから、教育を受けることに疑問符がつくようになってしまいました。

ある日、自宅から10分ほど歩いた通学路で、ニシタは若い男性の集団が自分の後をついてくるのに気づきました。人里離れた場所を通って教室に通う少女にとって、これは特に心配なことです。 

このようなことが何日も続いたので、ニシタは家族に相談することにしました。心配したニシタの兄は、男たちへ話をして問題を解決し、妹のために立ち上がろうと決めました。しかし、男たちはニシタの兄を殴って怪我をさせ、ニシタはさらに恐怖を感じるようになりました。彼女は恐怖のあまり、家から出られなくなってしまいました。学校に戻れる喜び、ルーム・トゥ・リードのライフスキルのレッスンを楽しめる喜びは、突然、彼女から完全に失われてしまいました。彼女の両親も心配し、ニシタに学校へ行くのをやめるように言いました。バングラデシュやその周辺国では、多くの少女が登下校時にセクハラや安全性の問題に直面し、このような事態に陥ります。彼女の家族の名誉にも関わる問題であり、「ニシタの教育を続ける価値があるのか?」という決断を迫られたのです。

やがてこの問題は公になり、幸いにも自治体のトップが介入する事態になりました。若者たちは叱責され、厳重に注意されました。しかし、ニシタは家から出ることを許されず、彼女自身も外出を望みませんでした。

ルーム・トゥ・リードのソーシャルモビライザーはすぐに行動しました。ニシタの両親と話をし、教育は譲歩できるものではないと説得しました。説得の結果、両親はニシタが教育を続けることのメリットを理解し、学校に戻ることに同意してくれました。しかし、ニシタが必要としたのは、両親の許可だけではありませんでした。彼女は深く傷つき、このままでは何が起こるかわからないと、心から恐れていたのです。

ソーシャルモビライザーは、彼女を励まし、自信をつけさせるために、彼女の夢や将来のための教育の重要性について話し続けました。約1ヶ月家に閉じこもっている間、励まし続けた結果、ニシタは恐怖心を克服し、学校に戻ることができました。また、ルーム・トゥ・リードのライフスキル・レッスンにも再び参加するようになりました。 

ニシタは、ライフスキルのトピックが自分の生活にとても関連があるものだと感じ、ルーム・トゥ・リードのライフスキルのマニュアルは自分のために書かれたものだと思ったと言っていました。

「ライフスキルのクラブでは、本当にたくさんのことを学びました。問題をいつ、どのように提起すればいいのか、誰に相談すればより簡単に、より早く解決できるのかがわかりました。また、児童婚が、いかに少女の人生や夢を危険にさらすかも知っています……。そんな生活に密着したテーマを意識したことはなかったのに、今、私はそれらの問題を意識しています。そして、姉のように私を励まし、支えてくれるメンターがいます。私は彼女に恩義を感じています。ルーム・トゥ・リードにも感謝しています。サポートがなければ、私の教育は今頃止まっていたかもしれません。でも、そうならなかった。だから、みんなに感謝します!」

バングラデシュの少女たちが典型的に目の当たりにする様々な課題に直面したらどうするかという質問に答えて、彼女はこう言いました。

「もし、私が学校に行くのを邪魔されて、私が学校に通うことを止めたら、彼らの勝ちです。でも、もし私が教育を続ければ、私が勝者となるのです。」

コミック・リリーフUS「レッド・ノーズ・デイ」の支援なしには、ニシタのような少女が教育を続けるために必要な支援を受けることはできないでしょう。バングラデシュのコックスバザールにおける女子教育とエンパワーメントのためにレッド・ノーズ・デイが行っている投資について、私たちは心から感謝致します。コミック・リリーフUSは、少女たちの人生、その家族の人生、そしてコミュニティ全体に大きな変化をもたらしています。

(翻訳:藤山普美江)

 

《今こそ教育関係者はジェンダー平等と気候変動対策に力を注ごう!》

《今こそ教育関係者はジェンダー平等と気候変動対策に力を注ごう!》
       クリスティーナ・クワック、ナタリー・ウィス 2021年10月26日

世界的な気候変動の影響は、少女たちの人生の成果を育もうとするプログラムや政策に大きな影響を与えます。サイクロンなどの気象災害から、干ばつなどの長期にわたる緊急事態まで、気候変動は、女子の学校教育を妨げ、未成年の結婚を増加させてしまう危険性があります。

このような状況下で、少女たちを支援し、コミュニティの回復力を高める教育プログラムが緊急に必要とされています。社会から取り残された少女やそのコミュニティは、気候変動の影響に晒されています。気候変動の影響に適応するためだけでなく、ジェンダーの問題を克服し、変革するためにも重要なのです。

そのため、ルーム・トゥ・リードでは、気候変動対策を含めたジェンダー平等のプログラムを拡大しています。ルーム・トゥ・リードの女子向けライフスキル教育プログラムを活用して、女子の適応能力と集団的な行動力を高めることにより、気候変動対策に取り組むことに焦点を当てています。その際、女子のリーダーシップ開発の相関性や体系面を重視し、個人的・集団的行動のジェンダー変革の可能性を強化しています。私たちは、革新的なジェンダー変革と気候変動対策のカリキュラムを開発しています。これは、世界的な運動を推進する若いフェミニストリーダーを育成することを目的としています。今こそ教育関係者は少女と気候変動に力を注ぐべきであり、私たちはその先頭に立っています。

ルーム・トゥ・リードは、ジェンダー変革や気候変動対策を教育するための、実施主体や既存プログラム、一般に公開されているカリキュラム教材の現状を調査しました。その結果、次のようなことがわかりました。

プログラム活動はほとんど実体がなく、女子教育と気候変動教育の活動における重大な欠点を示している。最近、女子教育団体が気候変動対策のためにジェンダーを変革する教育を求めて支援運動を強化しているが、そのような教育プログラムは以下の点が不十分である。

1. 気候変動の影響を受けやすく、ジェンダー不平等にある少女たちに配慮し、奉仕する
2. 女子のために、ジェンダー、教育、リーダーシップ、気候変動問題に同時に焦点を当てる。
3. 思春期の女子のための、気候変動リーダーシップ・プログラムのニーズに対応する。

このような欠陥は、ジェンダーの不平等と気候変動の脆弱性が特に顕著な状況下で暮らす、社会に取り残された少女たちに悪影響を及ぼします。また、学校や家庭、コミュニティでの気候変動対策を強化するために、少女たちが様々なアプローチを活用することを妨げています。

しかし、実施主体がジェンダーと気候の横断的な問題に戦略的に焦点を当てるためには、重要な入口があります。例えば、気候に関する意思決定においてリーダーシップを育成するための、成人女性向けの取り組みは数多くありますが、これを女子の教育や女子のリーダーシップ開発に焦点を当てた取り組みと結びつけることができます。このようなコラボレーションにより、少女が大人になるまでの間に、気候変動問題へのリーダーシップを育むことができます。

現在の教材は、ジェンダー変革と気候変動を同時に教育したいというニーズを満たしていません。

ジェンダー変革教育と社会正義を重視した気候変動教育を同時に行っているような、公開されているカリキュラム教材はありませんでした。また、気候変動対策とジェンダー変革に焦点を当てたカリキュラムは、それぞれ別のプログラムとして開発されたものでした。しかし、分析してみると、この2つのタイプの教材には、下の図にあるような、共通の目的があることがわかりました。

このように共通する部分があるからこそ、教育プログラムは、ジェンダー問題を変革し、気候問題にも対応できるようなカリキュラム教材を作ることができると考えられます。女子教育と気候変動対策の関係者が共有する目標は、エンゲージメント、エンパワーメント、コミュニティの回復力の育成、システムの変革などであり、テーマ別に連携する重要な機会となります。

気候変動が進行する中、教育プログラムはジェンダー不平等と気候変動の問題を同時に解決する必要があります。さもなければ、少女たちの人生にプラスの結果をもたらすことができなくなる危険性があります。気候変動は女子教育を脅かし、それは世界中の女子と女性の進展を脅かすのです。

原文URL:Why It’s Time for Education to Invest in Both Gender Equality and Climate Justice – Room to Read
翻訳:竹内 裕人

女子教育プログラム報告書2021

ルーム・トゥ・リードでは、少女が自己主張をしたり、困難な状況を切り抜けるための重要なライフスキルを身につけられるようサポートし、ジェンダー平等の世界を目指しています。新型コロナウィルス感染症(以下:COVID-19)の大流行は、すべての人に困難な状況をもたらしましたが、特に少女に特有の脆弱性や障害が露呈しました。ブルッキングスが指摘しているように、対面教育から遠隔教育へと移行したことで、家事負担や経済的懸念、児童婚などの要因により、女子生徒が学校を中退する圧力が高まりました。

私たちは、少女たちに、自分たちは大切な存在 であり、質の高い教育を受ける権利があることを伝えることを優先してきました。そのために、革新的なアプローチを用いて、これまで以上に多くの少女たちにアプローチしてきました。 また、政府やパートナーのプラットフォームでコンテンツを共有し、不登校のリスクがある少女たちをモニタリングしました。これらの遠隔でのプログラム活動は、この未曾有の時代に少女たちが必要とするであろう様々なサポートを提供することを期待して実施されました。この活動が予想以上に成功したことを報告できることを嬉しく思います。

ぜひ「女子教育プログラム報告書2021をご覧ください。2021年を通して、少女たちがどこにいようとも、彼女たちに届くように適応させたプログラムを提供し続け、危機に適応した一連の指標を用いてプログラムの効果を追跡してきました。これらの指標は、ルーム・トゥ・リードが長年培ってきたグローバル指標を 応用したもので、パンデミックの中で私たちが活動している様々な学習環境において、プログラムがどれだけ効果的に 実施されているかを明確に示すことができます。

ルーム・トゥ・リード アニュアルレポート2020「レジリエンスの高まり」リリースされました!

2020年年次報告書「レジリエンスの高まり(レジリエンス・ライジング)」がリリースされました!

2020年の成果を振り返ってみると、ルーム・トゥ・リードの歴史の中でも最もユニークな年であったと認識しています。組織として20周年を迎え、インパクトのあるプログラムを通じて、20カ国で2,380万人以上の子ども達に恩恵を与えてきたことを誇りに思っています。

一方で、昨年は新型コロナウィルス感染症の大流行により、世界中の学校が閉鎖されるという大きな課題にも直面しました。ルーム・トゥ・リードが支援している子どもたちは、突如として、学習損失による学業の遅れや、中退のリスクにさらされる事態になりました。ルーム・トゥ・リードの教育専門家たちは、こうした子どもたちのために尽力し、自宅でも勉強が続けられるよう、プログラムを迅速に調整して参りました。

本報告書では、コロナ禍でのデジタルライブラリー、ラジオ・テレビ番組、女子生徒への遠隔メンタリング、電話による保護者へのサポートなどを通じての支援方法を詳しく紹介しています。また、団体設立20周年の振り返りも行っております。皆様のご支援がもたらしている素晴らしいインパクトをご理解いただければ幸いです。(英語版はこちらをご覧ください。)

ただ、現在も依然としてコロナ禍であり、ルーム・トゥ・リードが支援を行っている子ども達やコミュニティにとっては、このパンデミックからの回復への道のりはまだまだ長いものと思われます。本報告書は2020年の活動に焦点を当てていますが、2021年も同様のアプローチで調整を続けており、人と人とのつながりを強化しながら、子どもや保護者がアクセス可能なチャネルを特定し、プログラムを実施しております。また、学校再開を見据えてのサポートにも入っております。現在必要としているご支援の詳細については、こちらもあわせてご覧ください。

感謝をこめて。

(事務局長:松丸佳穂)

インドから現地報告:小学校3年生のキルマ

(原文はこちら

インドでは、2020年3月以降、学校の教室を見ていない生徒がいます。今でも一部の学校しか再開していません。ユネスコの最新の報告書によると、インドの生徒たちは、73週間にわたって学校の一部または全部が閉鎖された状態を経験したことになります。

しかし、一冊の本を届けるという単純なことが、生徒たちの学習意欲を維持する一つの手段になることがあります。

インドのマディヤ・プラデーシュ州に住む8歳のキルマは、最近、フィナンシャルタイムス紙のフォトエッセイで紹介されました。通常であれば、小学3年生のキルマは学校に通うはずなのですが、COVID-19パンデミックの影響で学校が閉鎖されたため、学校に通うことができませんでした。

学校が閉鎖された最初の数日間、キルマは両親の仕事を手伝う日々を送っていました。一日中忙しくしていましたが、学校が恋しくなりました。授業、ゲーム、そして何よりも鮮やかな本。教室に行くのが楽しくなるようなものばかりでしたから。

キルマが家でも勉強できるよう、担任のサプナ先生が彼女の家を訪れるようになりました。サプナ先生は、本や教材を届けたり、ワークブックやワークシートの使い方を教えたりして、キルマの両親と交流しました。

「私たちは教え方はあまり知らないのですが、担任の先生やルーム・トゥ・リードのチームがいつも電話をくれて、私たちをやる気にさせたり、キルマのために教材を用意してくれます」
(キルマの両親)

キルマの叔父であるリケシュは大学1年生ですが、パンデミックの間、幼い姪の学習をサポートしました。

「私は1日1時間授業をし、毎日宿題を出しています。彼女は勉強に興味を持ち、時間通りに宿題を終わらせ、毎日私に作品を見せてくれます。彼女は熱心に物語を語ってくれます」とリケシュは話します。

サプナ先生はリケシュと会う時間をつくり、キルマ用の学習教材を紹介しています。この教材や資料は、ユニセフ、ルーム・トゥ・リード・インド、州の教育局(マディヤ・プラデーシュ州)による「早期の読解能力のためのアカデミック・リーダーシップの強化(Strengthening Academic Leadership for Early Reading)」プログラムのもと、サプナ先生をはじめとする公立学校の先生たちに提供されました。このプログラムには、ワークブック、ノート、図書室の本、教科書、デジタル学習教材などが含まれます。

「キルマとリケシュとは、村を訪問した時や、電話で話しています。常に彼らのやる気を引き出し、リケシュには、これらの貴重なリソースを使っていかに簡単に彼女をサポートできるかを教えています。今、キルマを見ていると、勉強を続けていて、読み書きができるようになったことを嬉しく思います。ユニセフ、ルーム・トゥ・リード・インド、そして教育局からのサポートに感謝しています」と、担任のサプナ先生は話します。

ルーム・トゥ・リードのインドチームは、リケシュがこれらの学習教材をどのように使えばいいのか理解できるよう、必要な部分を補ってくれました。ルーム・トゥ・リードのインドチームからの定期的な電話と指導により、リケシュはキルマのために用意された学習教材を使いこなせるようになりました。

インドでは、ルーム・トゥ・リードは、学校が閉鎖されたにもかかわらず、キルマのような生徒が確実に学習できるよう、幅広く活動してきました。今年の上半期(2021年1月1日~6月30日)、ルーム・トゥ・リードは、識字教育プログラムで以下のことを達成し、届けました。

・識字教育プログラムのプログラム目標を達成するために、教師や生徒、その家族に1,000万通以上のダイレクトメッセージが、子どもたちが学び続けるよう、送られました。
・政府機関のウェブサイトにアップロードされた約40種類の教材は、ルーム・トゥ・リードがより多くの人々に識字教育コンテンツを提供するのに役立ちました。
・教師、学校の指導、著者などを対象に、7,500時間以上のバーチャルトレーニングとサポートを提供しました。
・約14万4,000人の子どもたちが、家庭での学習や識字力向上を支援するために、デジタルではない教材(本やワークシート)を受け取りました。

また、女子教育プログラムでは、ルーム・トゥ・リードが下記のことを実現しました。

・女子教育プログラムのプログラム目標を達成するために、教師、生徒、その家族に637,000件以上のメッセージを送りました。
・約52,000件の遠隔での個別メンタリングセッションを実施しました。
・11,500人以上の少女が個別のメンタリングセッションを受けました。

子どもたちが勉強に励み、生涯学習の道を歩むことができるよう、ルーム・トゥ・リードは、危機の最中にも革新的な方法で子どもたちに支援を届けるためのプログラムを実施しました(前述のとおり)。このようなリモートでの介入により、学校閉鎖やその他の多くの課題に直面しても、生徒たちが読み書きのスキルを身につけることができています。

(翻訳ボランティア:ゆうた)

Action for Education 2021
Dreams Start with Education ~学ぼう、夢に向かって

みんなのアクションで子ども達に教育を!

コロナの影響は支援国では、まだまだ続いています!どのような状況であっても、子ども達が夢をあきらめることなく、学び続けられるよう、今年もアクションを起こします!

コロナ禍にいる子ども達2,000名に
クリスマスの贈りものに、

教育という生涯のギフトを一緒に贈りませんか?

5000円でひとりの子どもが1年間読み書きを学ぶことができます!

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