新学期(日本では二学期)が近づく中、米国の「本の砂漠」や子ども向け書籍の多様性の欠如を示す調査の結果を受け、十分な環境がないコミュニティにおける教育に関する不平等への対応が求められる

サンフランシスコ ー2021年8月25日発表のプレスリリースより
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子どもの識字率向上と女子教育に取り組むグローバルな教育団体であるルーム・トゥ・リードは、調査結果と実行可能性調査の結果を発表しました。これによると、米国では、満足のいく環境に置かれていない子ども達が、子ども用の本、特に子ども達の多様なアイデンティティや経験に沿った本を手に入れることができないような場合、教育の不平等が継続することが明らかになりました。独立機関の研究者によって行われたこの調査は、「ミッシングアウト:米国の子ども達の教育格差は、本の砂漠や児童文学における多様な表現の欠如によって深まっている(MISSING OUT: Education Inequality for U.S. Children Deepened by Book Deserts and Lack of Diverse Representation in Children’s Literature)」と題され、2014年からルーム・トゥ・リードのプログラムに投資している世界的なスキンケアブランドのタッチャ社が調査に資金を提供しました。 

この調査研究では、子どもの識字教育開発と書籍出版に関してルーム・トゥ・リードが持つ独自の専門性を通じて、多様かつリソースを十分に持たないコミュニティのために、教育の平等を実現するための投資が最大の効果を発揮する地理的エリアを明確にしています。

調査結果から、米国は世界で最も裕福な国のひとつであるにもかかわらず、学習機会が平等に与えられていないことが明らかになりました。米国では全体的に人種差別が根強く、その結果、人種に基づいて学校が分かれています。学校の資金は主に地域の固定資産税で賄われているため、生徒一人当たりの支出額は、地理的条件や地域の富や所得のレベルに応じて大きく異なり、制度上の不公平を助長しています。データによると、米国の教育システムで十分なサービスを受けられない人々がいることが確認されており、その中には、黒人、ラテン系、ネイティブアメリカン、白人のコミュニティの子ども達が含まれ、高いレベルの貧困や田舎の環境が学習の大きな障害となっています。里親に引き取られた子どもたちや、移民・難民の子ども達も、教育を受ける機会が少なくなっています。

今回の調査では、最貧地域の子ども達が、読み書きの能力を高め、読書の習慣を身につけ、生涯学習のために必要な本を十分に入手できていないことが明らかになりました。家庭内の本の数は、子どもの読解力の高さに大きく関係していますが、全米の少なくとも半数の家庭には100冊の本が置かれておらず、これらの家庭は「本の砂漠」と言うことができます。「本の砂漠」とは、ユナイト・フォー・リテラシー(Unite for Literacy)という団体が提唱した造語で、子ども達が家庭や地域で読み物を手に入れることが困難な地域を指します。「本の砂漠」は、全米の貧困地域や黒人・ラテン系の家庭で高い割合で見られます。実際、低所得者層の61%の家には子ども用の本がまったくありません。ルーム・トゥ・リードは、収益に関係なく、地元の作家、イラストレーター、出版社、印刷会社と協力して、地域のニーズに合った高品質の本を素早く用意・調達するという専門性を持っているため、低所得者層のコミュニティにおいて、多様で高品質な子ども用の本の不足に取り組むのに最適な組織となっています。

ルーム・トゥ・リードCEOであるギータ・ムラリ博士は、「すべての子どもには、学習と人生の前向きな成果への入り口として、本の恩恵を受ける機会が与えられるべきです」と述べています。「ルーム・トゥ・リードは、3,200冊以上の高品質な児童書を43の言語で提供しており、教育者や家族が教室や家庭でこれらの本を活用できるようにサポートするガイダンスも提供しています。これは子どもたちの読書の習慣を育み、未来のリーダーを育てるための私たちのアプローチの礎となるものです。」

また、調査によると、米国では子どもの本における人種の多様性が著しく欠如しています。黒人、先住民、有色人種(BIPOC/ Black, Indigenous, and People of Color)を題材にした本や、黒人、先住民、有色人種によって作成される本は、子ども用の本全体の中で圧倒的に少数派であり、白人のキャラクターや動物、物を題材にした子どもの本は83.4%、BIPOC以外の人々が出版した子ども用の本は88%にのぼることがわかりました。

ルーム・トゥ・リードの識字教育プログラム(グローバル)シニアディレクターのクリスタベル・ピントは、「子ども達が自分達の生活が本の内容に反映されていることを見ることは、自分達の経験を確証することであり、また、自分とは異なる人々について書かれている本を読むことは、固定観念に立ち向かうことにつながります」と述べています。「ルーム・トゥ・リードの、書籍出版における広範でグローバルな実績により、何百万人もの子ども達が、本の題材として少ししか登場したり描かれたりしてこなかった多様なキャラクターの物語を読むことができるようになりました」。

今回の調査結果に基づき、ルーム・トゥ・リードは、米国内で最も教育的ニーズの高い地域や人々を対象に、児童書出版における表現の多様性や上がっている意見に重点を置いて活動していきます。ルーム・トゥ・リードは、ルーム・トゥ・リードの専門性が、地域の組織を支援し、システムを強化し、大きなインパクトを与えることができる場所に注力していきます。 

 

ルーム・トゥ・リードとは

ルーム・トゥ・リードは、「子どもの教育が世界を変える」との信念に基づき2000年に設立され、非識字やジェンダー不平等のない世界を目指しています。ルーム・トゥ・リードは、低所得コミュニティの子ども達が識字能力と読書習慣を身につけられるよう、また、少女達が人生の重要な決断を下すためのライフスキルを身につけ、中等教育を修了できるように支援することで、この目標を達成してきています。ルーム・トゥ・リードは、政府やパートナー組織と協力して、大きな規模で子ども達にプラスの成果をもたらしています。ルーム・トゥ・リードはこれまで、20カ国、40,700以上のコミュニティで2,300万人以上の子ども達のために活動をしており、2025年までに4,000万人の子ども達に手を差し伸べることを目指しています。詳細は https://japan.roomtoread.org/ をご覧ください。

(翻訳ボランティア:藤山普美江)

 

 

 

ルーム・トゥ・リード、米国における子ども達の本の不足と多様性の欠如を調査

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米国は世界で最も裕福な国のひとつですが、学習の機会は平等に与えられていません。実際に米国では、4人に1人の子どもが読み方を学ぶことなく育っています。

ルーム・トゥ・リードは、独自の識字教育のノウハウを米国のどこで、どのように活用すれば、子ども達が生涯にわたって成功するために必要な基礎的な識字能力を身につけることができるのかを理解するために、企業パートナーであるタッチャ社の支援のもと、研究と実現可能性を探る調査を実施しました。「ミッシングアウト:米国の子ども達の教育格差は、本の砂漠や児童文学における多様な表現の欠如によって深まっている(MISSING OUT: Education Inequality for U.S. Children Deepened by Book Deserts and Lack of Diverse Representation in Children’s Literature)」と題されたこの調査では、十分な教育を受けていないコミュニティの子ども達に、本、特に多様な声や経験が反映された本へのアクセスが制限されている環境では、学習の不公平が深まることが明らかにしました。

発見1:社会経済的不平等と「本の砂漠」が、米国における教育成績の低下につながっている

家庭に本があることは、子どもの早期教育の成功に影響する最も重要な要因の一つですが、最も貧しい地域の子ども達は本を手に入れることができず、熟達した読み書き能力を身につけることができません。これは深刻な問題で、低所得者層の60%以上の家庭では、子ども用の本がまったくないのです。ユナイト・フォー・リテラシー団体は、家庭に本がないことを 「本の砂漠(book deserts)」と呼んでいます。本の砂漠は全米に均等に広がっているわけではありませんが、貧しい郡部や黒人・ラテン系の家庭では多く見られます。全米では、公立学校の生徒のうち、小学校4年生程度の読解力に習熟しているか、それ以上のレベルに達しているのは35%に過ぎず、黒人、ラテン系、ネイティブアメリカンの読解力や高度な識字能力は、他の人種グループに比べて著しく低いレベルにあります。

 

発見2:読書率の低い地域の多様な人々のアイデンティティや経験が児童書に反映されていない

調査を通し、米国では児童書における多様性不足が深刻な問題であることが明らかになりました。児童書の83%以上は、白人のキャラクターや動物、物について書かれています。2018年から2019年の間に、子ども向けの本の44%が白人のキャラクターだけについて書かれており、80.4%の本が白人の著者および/またはイラストレーターによるものでした。コーポレティブ チルドレンズ ブックセンター(Cooperative Children’s Book Center)によると、文学における人種的多様性を高める進歩は遅く、2019年から2020年にかけて有色人種の著者が書いた児童書はわずか3%しか増加せず、合計で26.8%に留まりました。

 

発見3:米国の教育制度では十分なサービスを受けられないある一定の地域や人口層がある

この調査では、ルーム・トゥ・リードが、学習に大きな障害となっている貧困や農村部での生活を営む黒人、ラテンアメリカ人、先住民、白人が暮す地域にて、子供の識字能力に焦点を当てる必要があることが明らかになりました。また、児童養護施設にいる子どもたちや、移民・難民の子どもたちも、学習における危機に直面しています。米国の教育システムにおける不公平の要因としては、学校の分離をもたらした体系的な人種差別や、地理的な位置や地域の所得・富のレベルに応じた学校の資金・資源配分の格差などが挙げられます。

行動を起こそう

調査結果に基づき、ルーム・トゥ・リードは、多様な子どもの本を扱う非商業的なグローバル出版社としての専門性を活かし、米国の子ども達に存在する教育上の不公平に取り組んでいきたいと考えています。

ルーム・トゥ・リードは、社会的に受け入れられていないコミュニティの人々の物語や、そのコミュニティのメンバーによって書かれた本を出版してきた世界的な経験を生かし、今回の調査で特定された十分な教育を受けていない人々へのアプローチに重点を置くことを計画しています。以下の方法で、高品質な読み物へのアクセスを大規模に増やします。

  • 疎外されたコミュニティの子ども達の生活に関連するキャラクター、テーマ、ストーリーに関し、彼らのアイデンティティや文化を忠実に反映した専門書を米国で出版・配布 
  • 1,800冊以上のオリジナル絵本と1,400冊以上の翻案本を43言語で収録したグローバルコレクションを活用
  • 恵まれない地域の学校以外の場所で、家族との関わりや読み書き能力の向上を目指す地域団体との連携

米国の子ども達が本を手にし、自分のアイデンティティや経験、人生が物語の中で表現されているのを見て、励まされるよう、その一端を担えることを光栄に思っています。

米国における識字率向上の取り組みについてはこちら(英語)をご覧ください。

(翻訳ボランティア:相澤叶梨)

ルーム・トゥ・リードの少数民族(マイノリティ)言語での本の出版について

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ルーム・トゥ・リードのQuality Reading Materials(以下:QRM、高品質の読書教材を担当する)チームは、翻訳者の協力を得ながら、平和と平等をテーマにしたブックコレクション(英語)を、モンタニャード・ジャライ族の固有言語であり、ベトナムとカンボジアの少数民族の言語であるジャライ語に翻訳する作業を行ってきました。本コレクションのために「ヤーの裏庭のジャングル(原題:Ya’s Backyard Jungle)」(英語)を執筆した作家のハビガイ・ムロは、モンタニャード族の若い読者がこの本を楽しめるように、ベトナム語に加えてジャライ語にも翻訳したいと考えていました。 

ベトナムの中央高地出身のハビガイ・ムロの両親と母方の祖父母は、1980年代にタイとフィリピンの難民キャンプからノースカロライナに移住してきました。現在、ハビガイ・ムロは、東南アジア以外ではモンタニャード族の人口が最も多いノースカロライナ州グリーンズボロに居住しており、現在は、モンタニャード族の人々の物語を伝える作家として活躍しています。

QRMチームは、「ヤーの裏庭のジャングル」を翻訳した後、世界中のモンタニャードのコミュニティがすべての物語を楽しめるように、平和と平等をテーマにしたブックコレクション(英語)の全巻をジャライ語に翻訳することを決定しました。ジャライ語書籍の全コレクションは、9月にオンライン教育プラットフォームLiteracy Cloud(英語および支援地域での言語のみ)で公開される予定です。 

少数民族の言語で絵本を出版することは、先住民の言語や伝統を次世代に伝えるための重要な役割を担っています。ルーム・トゥ・リードは、地元の作家、イラストレーター、出版社、印刷会社と協力して、コミュニティのニーズに合った品質の高い本を、収益性に関係なく、迅速に展開するための専門性を持っているため、少数民族の言語コミュニティでは、多様性の欠如や高品質な子ども向けの絵本にアクセスできないという問題に取り組むのに最適な組織です。

今回は、少数民族の言語コミュニティで活動してきたルーム・トゥ・リードの識字教育プログラムの職員から、少数民族言語での書籍出版の重要性についてお話させて頂きます。

少数民族の言語で本を出版することは、なぜ重要なのでしょうか?

パトリック・カリー(識字教育プログラム アソシエイト・ディレクター)

多くの少数民族の言語コミュニティでは、子どもが親しみやすい母語での絵本へのアクセスが限られています。そのため、このような地域の子ども達には、理解できて楽しめる本や読み物に触れる機会がほとんどないのが現状です。読書の機会がなければ、子どもたちが基本的な読解力を身につけることはもちろん、読書が好きになったり、読書習慣を育むことは非常に難しいでしょう。さらに問題なのは、子ども達が本を読みたくても、馴染みのない言語で書かれ、自分達の生活を反映していないイラスト、登場人物、設定、出来事などが書かれた本しか手に入らない場合、子ども達にとって初めての読書体験が、読む気をなくすような、退屈なものになってしまうことです。馴染みのない言語で書かれた、馴染みのない登場人物や出来事の本を使って読み方を学ぼうとすることが、どれほど苛立たしいことか想像してみてください。 

ルーム・トゥ・リードは、少数民族の言語で書かれた児童書を出版することで、サプライチェーンの大きなギャップを埋め、少数民族のコミュニティに住む子ども達が、理解できて共感できる楽しい絵本にアクセスする機会を大幅に増やしていきます。最終的には、このようなアクセスの増加は、子ども達が本を読むことを好きになり、その習慣を身につける機会を増やすことにつながります。  

もちろん、ルーム・トゥ・リードは、少数民族の言語で書かれた質の高い読み物の供給を増やすことは、方程式の一面に過ぎないと考えています。ルーム・トゥ・リードは、地域社会が強固な読書文化を構築し、子ども達が親しみやすい絵本への関心を高められるよう、学校や地域社会と密接に連携し、読書祭り、国際識字デーの開催、図書室及び読書指導のトレーニング、保護者・教師の会など、読書の推進や祝福を目的とした様々なイベントや活動を実施しています。

ニヴリタ・ダーグヴァンシ(南アジア 識字教育プログラムマネジャー)

コミュニティが多言語で構成されているインドでは、多くの子ども達が、授業で使われる言語をあまり理解しないまま小学校に入学します。家庭で話されている言語は、教室やカリキュラムの中では使われていないため、子ども達は教師の話を理解するのが難しい状況にあります。このような経験全体が、識字能力を身につけるための障壁となり、しばしば子ども達が学校を中退する理由となってしまうのです。2019年のユネスコの報告書(英語)によると、「地域における主要言語を話さない生徒は、学校を中退したり、全く学習しないまま退学したりするリスクが高い」としています。 

そこでルーム・トゥ・リードは、ラージャスターン州のシロヒ地区の100校で、少数民族の子ども達のためのプログラムを開始しました。これらの学校では、学校言語はヒンディー語で、生徒はアディバシ語、ガラシヤ語、マルワディ語を話します。このプログラムは、教師と生徒が一緒になって、子ども達の母語から学校で使用する言語へとスムーズに移行できるよう、協力的でインタラクティブな空間を作ることを目的としています。

このプログラムの重要な戦略の一つは、子ども達の言語で書かれた内容が明確な物語の本を提供し、言語ギャップを埋めるためのリソースとしてこれらの本を使用できるよう教師を訓練することです。最初の段階では、教師は現地語の本を使って生徒の母語で読み聞かせを行い、生徒が母語で考えやアイデアを表現するように促します。同じ本を使いながら、教師は徐々に生徒が使用する言語と学校で使用する言語の2つの言語を使うようになり、子ども達が学校で使用する言語で物語を理解できるようになります。最終的に、教師は生徒が学校で使用する言語を学ぶのを助けるために、学校言語の使用を徐々に増やしていきます。教室に少数民族の言語で書かれた本があることは、子ども達の学習をサポートするだけでなく、学習空間において長い間無視されてきた、子ども達の言語的・社会的アイデンティティを認めることになります。

「1年生の子ども達のほとんどはヒンディー語を理解しておらず、無反応なことが多いです。アディバシ・ガラシヤ語で物語を読み、子ども達に母語で話してもらうと、すぐに生徒達の表情が変わったのが分かりました」
ーインド・ラジャスタン州シロヒ地区でのフォローアップ研修での教師より


タイタス・カズング(アフリカ 識字教育プログラム アソシエイトディレクター)

少数民族の言語コミュニティは、全般として無数の課題にさらされてきました。歴史的な不公平、人権侵害、資源不足などです。一般的に、教育の機会は少なく、絵本などの教育・学習教材は、少数民族の言語話者にとっては馴染みのない言語で書かれていることが多いのです。

ルーム・トゥ・リードは、少数民族の言語コミュニティのために本を開発することで、人権問題に取り組んでいます。生徒の母語で本を提供することで、多様性と包括性、そして社会正義の問題に取り組んでいます。子ども達は、本の中で自分自身や自分の物語を見ることで、自身のアイデンティティを肯定されたように感じ、前向きな自己イメージや展望を持つことができるからです。本により、少数民族の言語を話す人達の言語、文化、生活が尊重され、大切にされていることを生徒達に伝えることができます。

多くの先住民族の言語が存亡の危機に瀕している今、少数民族の言語で子ども向けの本を書くことは非常に重要です。これらの言語で子ども向けの絵本を作ることで、若者は母語の読み書きや会話を学ぶことができ、その結果、言語や文化、伝統的な先住民族の知識を守ることができるのです。したがって、少数民族の言語で書かれた本は、フィクションの物語だけではなく、関連する事実に基づくノンフィクションのテキストの出版を通じて、文化的知識を慎重に記録することが必要です。

(翻訳ボランティア:藤山普美江)

想像力をロックダウンすることはできない Imagination is Never Locked Down

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今年も国際識字デーを迎え、世界的な大流行の中で、本がいかに心の安らぎや逃避、そして冒険への道となり得るかを改めて認識しています。この1年半は特に大変でしたが、読書が社会的・感情的な幸福を育む役割を果たしていることに感謝したいと思います。

また、ネパールの識字教育プログラムに参加している生徒のプラサムサちゃん。彼女は読書が大好きで、本を読んで笑ったり、世界について学んでいます。パンデミックの間も、毎日家で本を読んでいましたが、この楽しさを共有したいと思い立ち、自分で読み聞かせの録音を始めました。パンデミックが急速に拡大する中、私達はプラサムサちゃんの録音をネパールの何千もの家庭に放送することができました。

もちろん、誰もが平等に読書ができるわけではありません。そのためルーム・トゥ・リードでは、教育における非識字とジェンダーの不平等をなくすという大きた目標を掲げています。私達は20カ国で活動しており、COVID-19が学習環境を困難にし続けている中、何百万人もの子ども達を支援するために、より効果的な新しい支援方法を見つけています。

そのひとつとして、魅力的で、挑戦的で、豊かな本づくりを行っています。ルーム・トゥ・リードでは、先進国の出版業界では必ずしも反映されない場所や人々を描いたタイトルを、現地の言語で制作しています。現在までに3,216冊のオリジナルタイトルを制作しており、その多くは、ルーム・トゥ・リードが無料が提供しているオンライン教育プラットフォームLiteracy Cloud(英語および支援地域での言語のみ)でご覧いただけます。9月8日の国際識字デーに合わせて、私達のお気に入りの作品を集めました。これらの本は、私達が失っていた自由を与えてくれると同時に、世界の様々な地域の子ども達の経験を検証し、肯定してくれます。さあ、冒険の始まりです!

※ご紹介している下記の絵本一覧は、ルーム・トゥ・リードが現地で出版している現地語で書かれた絵本で、すべて英語に翻訳したものです。インドネシアの「津波」や南アフリカの「スーツケース」以外は、小学校低学年向けの絵本なので、使われている英語もシンプルな単語です。イラストも国ごとに異なりますので、ぜひ違いも含めて、お楽しみください。

キム、川を発見(原題:Kim Discovers the River)」(ホンジュラス)

帰り道、赤いブレスレットをなくしたキムは、探しているうちに、多様な生き物、景色、音で満たされた美しい川を見つけます。ホンジュラスのリオ・プラタノ生物圏保護区を舞台にした「キム、川を発見(Kim Discovers the River)」は、ホンジュラスの水路に沿って暮らす様子を探り、読者がどこにいても自分の周りの世界に目を向けるよう促します。

髪の恐怖(原題:Hair Scare)」(インド)

このグラフィックノベルは、パンデミックを直接取り上げています。ロックダウンの間、何年も散髪をしていない少年と犬が登場します。アンマが「もう十分、散髪しなきゃ」と判断すると、冒険が始まります。楽しいこと、ハチャメチャなこと、愉快なことは、すべて家の中で、それぞれの家族と一緒に楽しむことができるのだと教えてくれます。ヒンディ語で出版された「髪の恐怖(Hair Scare)」は、現在、英語でも出版されています。

津波(原題:Tsunami)」(インドネシア)

美しいイラストで描かれたチャプターブック「津波(Tsunami)」は、家族や友人を失った一人のこどもが、ショック、怒り、悲しみといった感情を徐々に乗り越えていく様子を描いています。インドネシアの作家Yovita Siswatiは、癒しの理論を用いて物語を構成し、読者に希望を与えています。2004年に発生したアチェ津波を題材にしたこの作品は、実際に起きた悲劇を取り上げながら、生き残った人々のレジリエンス(回復力)にも言及しており、私達にも通じるものがあります。

3羽のアヒルの子の冒険(原題:The Adventures of the Three Ducklings)」(ヨルダン

3羽のアヒルの子の冒険(The Adventures of the Three Ducklings)」は、動物の鳴き声や、自分とは違う人を受け入れること、さらにはコミュニティを築くことの大切さなど、すべての子ども達にとって魅力的な内容です。アヒル達は、家を失い、寝る場所を近所の人達に頼らなければならない人々を表しています。嵐が過ぎ去ると、彼らは母親と安全な場所に戻る方法を見つけます。

奇妙な一日(原題:A Strange Day)」(ネパール

いたずらと気まぐれがいっぱいの「奇妙な一日(A Strange Day)」は、うさぎが車に乗ったらどうなるかを描いた作品です。ネパールの著者とイラストレーターによって作られたこの楽しい絵本は、子ども達がネパール語で最初に学ぶ言葉である「うさぎ」「車」「川」などを物語の中で紹介しています。あらゆるレベルの読者が、「奇妙な一日(A Strange Day」で想像力を膨らませて楽しむことができます。

スーツケース(原題:The Suitcase)」(南アフリカ)

スーツケース(The Suitcase)」は、悲嘆にくれた少年が、ダンスを通して勝利することを学ぶ、美しい本です。主人公のルワジがアルビノであること(アフリカの多くの地域で生まれつき髪や肌の色素が薄い遺伝子疾患アルビノは差別を受けています)は言及されておらず、読者が自分で教訓や結論を導き出すことができるようになっています。

忘れられない冒険(原題:(An Unforgettable Adventure )」(ベトナム

世界中の親と小さな子どもは同じ葛藤をかかえています。お昼寝の時間になっても、子どもはどうしても遊びたがります。「忘れられない冒険(An Unforgettable Adventure )」は、ベトナムの少年ティが、想像力を働かせて船に乗り、やがて眠ってしまうという物語です。このコミカルで親しみやすい物語は、私達の中にある眠くて冒険好きな子ども心を引き出してくれます。

友達のいないゾウ(原題:The Elephant Who Had No Friends)」(ザンビア)

伝統的な民話から生まれた「友達のいないゾウ(The Elephant Who Had No Friends )」は、一頭の孤独なゾウと、友達を作るまでの冒険を描いています。シンプルな言葉と美しい水彩画で、友情と寛容の大切さを教えてくれます。世界中の子ども達に人気のあるこの作品は、ザンビアの小学校で使用される物語リストに入っています。

 

ルーム・トゥ・リードの世界各地のプログラムの最新情報

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世界各地の識字教育プログラムと女子教育プログラムの最新情報をご紹介いたします。ルーム・トゥ・リードが活動している多くの国で、新型コロナウイルス感染症(以下:COVID-19)の感染者が増え続けている中、世界中の何千人もの子ども達に教t育が行き渡るよう、これまで以上に尽力しています。

 バングラデシュ:パンデミックの中で教育教材を届ける    

学校閉鎖が続く中、ルーム・トゥ・リード・バングラデシュでは、識字教育プログラムに参加している小学校の子ども達に、印刷物や電子教材を提供し続けています。生徒達は、家にいながら、これらの新しい教材を手にすることができ喜んでいます。教材提供を支援するために、政府関係者や教師達はソーシャルメディアを使ったり、必要に応じて現地に赴いたりしています。

カンボジア:女子教育・ジェンダー平等プログラム「男の子のためのライフスキル」

カンボジアでは、ルーム・トゥ・リードはプロムナード(Promundo)とGADC(Gender and Development for Cambodia)という非営利団体と協力して、「少年のためのライフスキル」プロジェクトを通じて、男性や少年が女性や少女と協力して、ジェンダー平等を促進し、暴力を防止する活動を行っています。私達のライフスキル・カリキュラムは、少年達にジェンダー規範や固定観念を考える機会を与えます。ルーム・トゥ・リードは、このカリキュラムをカンボジアで試し、徐々に地方や他の国にも拡大していく予定です。6月3日と4日、女子教育・ジェンダー平等プログラムのスタッフは、GADCと協力して、ルーム・トゥ・リードのカンボジアオフィスで、カリキュラムの文脈に沿ったワークショップを行いました。

インド:月経衛生週間

ルーム・トゥ・リード・インドは、月経の健康と衛生に関する会話を促進するための1週間のキャンペーンを行いました。ルーム・トゥ・リードの地域チームは、インド全土で活動を実施しました。ウッタラカンド州では、女子教育プログラムの参加者が、家族3世代にわたる月経の経験を共有しました。チャッティスガル州では、少女とその家族が恥ずかしがることなく生理用品との写真を撮ることで、生理用品に対する偏見をなくしました。デリーでは、女子教育プログラムの参加者とその家族、そしてソーシャルモビライザーが、パンデミック禍において、月経の健康についてオンラインでディスカッションを行いました。テランガナ州では、著名な婦人科医のニーリマ博士を招き、少女とその家族を対象に、月経の健康について語り、月経にまつわる間違った認識を払拭しました。

ラオス:女子教育プロジェクトの覚書調印式を実施

6月25日、ラオス教育スポーツ省は、ルーム・トゥ・リードと共同で、ルアンパバーン県とチャンパサック県における女子教育プログラムを推進するプロジェクトに関する覚書の調印式を行いました。このプロジェクトは、2021年6月から2025年6月まで実施されます。覚書の署名は、教育スポーツ省一般教育局のシスーク・ヴォンビチット局長と、ルーム・トゥ・リード・ラオスのカントリー・ディレクターのノークハム・スファヌヴォンが行いました。

ネパール:ラジオでライフスキルを学ぶ

ネパールでは、ルーム・トゥ・リードの女子教育プログラムが、ラジオ番組を通じて、内容を刷新しながら、継続されています。心の健康、家庭内暴力、強制退学、新型コロナウイルス感染の予防などの少女達の悩みを聞き、対話型のラジオプログラムを開発しました。ラジオ番組は、思春期の少女やその家族からの質問に答えたり、必要なライフスキルを教えたりすることを目的としています。第1回目のエピソードでは、Transcultural Psychosocial Organization Nepalから専門家を招き、パンデミックへの対処法やメンタルヘルスのケアについて話し合いました。

南アフリカ共和国:世界本の日のお祝い

世界本の日を記念して、ルーム・トゥ・リード・南アフリカは、カプリコーン・サウス地区の11校での識字教育プログラムの開始を祝うイベントを開催しました。2020年には、カプリコーン・サウス地区に30の学校図書質が設立されました。また、ルーム・トゥ・リードはトレーニングセッションを実施し、教師や司書へのサポートを行いました。

イベント実施日は学校の最終日だったため準備は大変でしたが、すべての学校が参加することができました。教師、校長、生徒が、詩の朗読、劇、読み聞かせなどのさまざまなアクティビティを行いました。地区内の11の学校すべてが参加し、生徒達にとって楽しく教育的な祭典になるよう努力したお陰で、大成功のイベントとなりました。

スリランカ: 地域ラジオ局による教育コンテンツ

ルーム・トゥ・リード・スリランカは6月初旬、地域のラジオ局ラジャラタ(Rajarata)およびカンドゥラータ・セヴァヤ(Kandurata Sevaya)とパートナーシップを結び、スリランカの北中央および中央州の生徒たちにライフスキルや読書力向上のための授業を提供しました。このラジオ番組は年末まで継続され、インターネットやテレビにアクセスできない子ども達のにとっては非常に有益であり、自宅で勉強を続けることができます。ライフスキルや金融リテラシーの向上を目的とした授業が週3日放送されているほか、2つのネットワークを使って、読解力の向上や理解力の向上を目的とした授業も一週間を通して行われています。このような地域ラジオの放送を通じて、ルーム・トゥ・リードはこの困難な時期に、できるだけ多くの子ども達に手を差し伸べ、学びが途切れることなく続けられるようにするためのさらなる支援となります。

タンザニア:ルーム・トゥ・リードの「Nguvu ya Msichana」プロジェクトを開始

6月15日、ルーム・トゥ・リード・タンザニアは、チャリンゼ(Chalinze)地区評議会と覚書を交わし、新プロジェクト「Nguvu ya Msichana」(直訳すると「少女の力」の意)を開始しました。このプロジェクトは、2021年7月から2023年7月までの2年間にわたって実施され、地区内の8,000人以上の9年生の女子生徒を対象に、ライフスキルと金融リテラシーのスキルを身につけることを目指しています。

式典で挨拶したルーム・トゥ・リード・タンザニアのカントリー・ディレクター、ジュベナリウス・クルレテラは、「ルーム・トゥ・リードは、ライフスキルを学校の時間割に科目として組み込むというチャリンゼ地区評議会のアイデアに感銘を受けています。この地区がフォーム4試験(小学校4年生が受ける一斉テスト)で優秀な成績をおさめたと聞くことを楽しみにしています。他の地区のお手本になりましょう。」と述べました。

ベトナム:女子教育プログラム参加者の 「恩返し(Pay it forward)」プロジェクト

先日、ベトナムの女子教育プログラム参加者30名が、「恩返し」として、地域のお年寄り2人を助けるための募金を行いました。これは、「学習・社会奉仕プロジェクト」として提案されたもので、学校の男子学生にも参加を呼びかけました。参加した少女達は、受益者を選ぶための旅行を企画し、プロジェクトのためのすべての人的資源とコストを管理しました。また、保護者会にて保護者に支援の呼びかけを行い、2人のお年寄りにプレゼントを贈るための350万VND(約1万7000円)を集めることに成功しました。

「学習・社会奉仕プロジェクト」は、女子教育プログラムの参加者が、ライフスキルの授業を実践し、寄付に対する意識を高め、地域社会に積極的に貢献するためのものです。ルーム・トゥ・リードは、これらのプロジェクトが、より強く、よりしなやかな地域社会を築くために、学生たちが寄付やボランティア活動の精神を継続するきっかけとなることを願っています。

(翻訳ボランティア:相澤叶梨